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だんだん寒さも和らぎ陽射しも柔らかで暖かく春めいてきた4月。
窓から覗く空は雲一つなく晴れ渡り幸せになる二人の門出に相応しい。
白に統一された部屋の中では、早朝から慌ただしく人が動き回っている。
今日、この日の主役である花嫁の準備の為だ。
この日の主役の為に用意されたドレスは若く美しい花嫁に相応しい、純白で誰にもマネができないようなハイグレードで質の良い生地で仕立てられ存分にレースや刺繍が施され動くと煌くスワロフスキーがキラキラと輝き贅の限りを尽くされた彼女を美しく際立てるに相応しい花嫁衣装。
衣装を纏い準備の整った彼女を見ると、誰もが「ほぅ……」とため息をつくような仕上がりだ。
今か今かと式の始まる時間をソワソワと待つ彼女は誰よりも幸せの絶頂だろう。
彼女の周りに仕えるメイドや執事、今日の日を介添えする式場スタッフすら念願のこの日を迎えた彼女の幸せを願っていた。
そう、この時までは。
挙式の最終確認をして控室を出る時間が迫った頃、部屋の外がにわかに慌ただしくなる。
なぜか胸騒ぎがする中、尋常ではない外の動きに何かあったのかと部屋の中のメイドが確認しようとした所、花嫁の控え室を乱暴に開け放ち顔色を真っ青にした人が飛び込んできた。
控え室に居た人たちが驚き何事かとざわつきはじめると、飛び込んできた人物によってそれは伝えられた。
「敬斗が、敬斗が死んだ」
それは今日幸せになるはずだった花嫁が嫁ぐ相手の名前。
そして語られた死因。
最後まで貴方は残酷ね。
いきなり襲う最悪な現実に彼女は思わず意識を失ってしまった。
あぁ神様。
これは私に対する罰ですか?
愛する人の幸せを望んであげられなかった私に対する罰ですか?
自分の我が儘を突き通した天罰なのでしょうか?
暗闇の中を当てもなく彷徨いズッシリと重く苦しかった意識が徐々に浮上する。
まるで目隠しをされているかのように重たかった目蓋が少しずつ開く気がする。
久しぶりだと感じる瞳の中に入り込む優しい光に私は完全に意識を取り戻した。
瞳を開けた私の目に飛び込んできたのは見慣れた自室にあるお気に入りのベッドの天蓋の模様。
幼い頃から使っているベッドフレームだけど、カーテンは変えてもフレームはそのままだった。
あれ?でもこの柄は?多少の違和感を感じながらも私はごろんと寝返りを打つとさらに違和感が広がった。
なんだかいつもより全てのものが大きいような?そして視界がものすごくクリアなのはなぜ?
パシパシと瞬きを繰り返すも視界がぶれないのは昨日コンタクトを入れたまま寝てしまったのだろう。
あまりよくない事だから早く外さなければとベッドから起きようと体を動かした瞬間、私は体のバランスを崩してベッドから転がり落ちてしまった。
「イタタ……」
住み慣れた自分の部屋のベッドから転がり落ちるなんて生まれてこの方なかった事に少しショックを受けていると、視界に入った自分の手がなんだかおかしい。
「あれ?なんで私の手こんなに小さいのかしら?」
18歳の私の手にしては流石に小さくてムチムチしている気がする。
「こんなにぷにぷにしてなかったよねぇ?」
おかしいなぁ?と思いながらふと顔を上げた先にあった鏡を見て私は驚愕した。
その鏡の中に映る1人の少女、いや幼女と言った方が正しいだろう。
背中まで伸びる明るく茶色の髪と、幼いながらも意志の強そうな大きくやたらぱっちりとした瞳、小ぶりだけど鼻筋の通った鼻に赤くぽってりとした唇。母親譲りの陶器のような白い肌の頬は子供特有の自然の赤みがさしていた。
「え?う、嘘でしょ?」
慌てて鏡に近寄るも鏡の中に映り込むのは18歳で花嫁になる私じゃなくて、推定5歳位の幼女の頃の私だった。
「え?なっ、これはどう言う事なの?????」
思わず私は絶叫してしまった。
窓から覗く空は雲一つなく晴れ渡り幸せになる二人の門出に相応しい。
白に統一された部屋の中では、早朝から慌ただしく人が動き回っている。
今日、この日の主役である花嫁の準備の為だ。
この日の主役の為に用意されたドレスは若く美しい花嫁に相応しい、純白で誰にもマネができないようなハイグレードで質の良い生地で仕立てられ存分にレースや刺繍が施され動くと煌くスワロフスキーがキラキラと輝き贅の限りを尽くされた彼女を美しく際立てるに相応しい花嫁衣装。
衣装を纏い準備の整った彼女を見ると、誰もが「ほぅ……」とため息をつくような仕上がりだ。
今か今かと式の始まる時間をソワソワと待つ彼女は誰よりも幸せの絶頂だろう。
彼女の周りに仕えるメイドや執事、今日の日を介添えする式場スタッフすら念願のこの日を迎えた彼女の幸せを願っていた。
そう、この時までは。
挙式の最終確認をして控室を出る時間が迫った頃、部屋の外がにわかに慌ただしくなる。
なぜか胸騒ぎがする中、尋常ではない外の動きに何かあったのかと部屋の中のメイドが確認しようとした所、花嫁の控え室を乱暴に開け放ち顔色を真っ青にした人が飛び込んできた。
控え室に居た人たちが驚き何事かとざわつきはじめると、飛び込んできた人物によってそれは伝えられた。
「敬斗が、敬斗が死んだ」
それは今日幸せになるはずだった花嫁が嫁ぐ相手の名前。
そして語られた死因。
最後まで貴方は残酷ね。
いきなり襲う最悪な現実に彼女は思わず意識を失ってしまった。
あぁ神様。
これは私に対する罰ですか?
愛する人の幸せを望んであげられなかった私に対する罰ですか?
自分の我が儘を突き通した天罰なのでしょうか?
暗闇の中を当てもなく彷徨いズッシリと重く苦しかった意識が徐々に浮上する。
まるで目隠しをされているかのように重たかった目蓋が少しずつ開く気がする。
久しぶりだと感じる瞳の中に入り込む優しい光に私は完全に意識を取り戻した。
瞳を開けた私の目に飛び込んできたのは見慣れた自室にあるお気に入りのベッドの天蓋の模様。
幼い頃から使っているベッドフレームだけど、カーテンは変えてもフレームはそのままだった。
あれ?でもこの柄は?多少の違和感を感じながらも私はごろんと寝返りを打つとさらに違和感が広がった。
なんだかいつもより全てのものが大きいような?そして視界がものすごくクリアなのはなぜ?
パシパシと瞬きを繰り返すも視界がぶれないのは昨日コンタクトを入れたまま寝てしまったのだろう。
あまりよくない事だから早く外さなければとベッドから起きようと体を動かした瞬間、私は体のバランスを崩してベッドから転がり落ちてしまった。
「イタタ……」
住み慣れた自分の部屋のベッドから転がり落ちるなんて生まれてこの方なかった事に少しショックを受けていると、視界に入った自分の手がなんだかおかしい。
「あれ?なんで私の手こんなに小さいのかしら?」
18歳の私の手にしては流石に小さくてムチムチしている気がする。
「こんなにぷにぷにしてなかったよねぇ?」
おかしいなぁ?と思いながらふと顔を上げた先にあった鏡を見て私は驚愕した。
その鏡の中に映る1人の少女、いや幼女と言った方が正しいだろう。
背中まで伸びる明るく茶色の髪と、幼いながらも意志の強そうな大きくやたらぱっちりとした瞳、小ぶりだけど鼻筋の通った鼻に赤くぽってりとした唇。母親譲りの陶器のような白い肌の頬は子供特有の自然の赤みがさしていた。
「え?う、嘘でしょ?」
慌てて鏡に近寄るも鏡の中に映り込むのは18歳で花嫁になる私じゃなくて、推定5歳位の幼女の頃の私だった。
「え?なっ、これはどう言う事なの?????」
思わず私は絶叫してしまった。
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