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「そんなのは決まっている」
両手に持っていたナイフとフォークを置きナフキンで口元を拭うと殿下は私の顔を見つめニヤリと笑った。
「お前を俺の婚約者にするためだ」
は?
えーっと今殿下は何を言ったのかしら?
オマエヲオレノコンヤクシャニスルタメダ?
いや、コンニャクだったかしら?
まさか……コンヤクシャじゃないよね?
ナイナイナイナイ。
とてもいい顔で殿下が言い放った言葉を脳が理解するのを拒否するかのように私の頭の中は?でいっぱいになり思い切りポカーンと口をあけて呆然としてしまった。
「えっと……申し訳ありません。私どうもあり得ない言葉と聞き間違えたようなのでもう一度伺ってもよろしいですか?」
「いいぞ、何度でも言ってやる。お前を俺の婚約者にするためだ」
ンンンンン。
嫌だなぁ。
また「オマエヲオレノコンヤクシャニスルタメダ」って聞こえたんだけど。
今度は空耳かしら?と頭を捻っていると。
「おい、悪いが空耳でも言い間違いでもないぞ」
ニタニタと悪い笑顔を向けて私に止めを刺すかのように殿下は言った。
「今はまだコレは王家からの打診に過ぎない。が、お前が絶対に逆らえない方法にする事もできるんだぞ」
その言葉に私はビクッと思わず身体を強張らせた。
要は現段階で婚約すれば婚約後の逃げ道はあるけれど、どうしてもイヤがるようなら王命にして無理矢理、王からの命令として縛り付けてもいいぞ、と……。
王命の婚約になってしまったらそれこそこの国からの命令だ。その命令に逆らう事など公爵令嬢である私に出来るはずがない。
王命での婚約となれば、例え婚約解消したくとも王からの許しがなければちょっとやそっとじゃ覆される事はないし拒否すら出来ない。
王命での婚約など私にとっては一番避けなければならない案件ではないか!
それに、そもそも殿下との婚約自体が私は嫌だ。
なぜみすみす殺されると分かり切っている道を選ばねばならないのだ!
顔面蒼白にする私に近づいて来る殿下が、私の頬を撫でると目を細めあの何を考えているかわからない笑みを浮かべ迫ってくる。
「まぁどの道お前がどんなにこの婚約を嫌がろうとも俺の婚約者はユーリア・オクレールお前だけだと俺が決めたからな」
「な、何を勝手な事を」
「あぁ、勝手なのは承知の上だ。俺は俺の気に入った物を手放すつもりは毛頭ない。だからお前が、ハイかお受けしますのどちらかの返事しか受け取る気はない」
えぇぇぇ。
その選択肢は選択肢ではないですよ!私に拒否権などないと言っているようなもの。
何この理不尽。
うーーー。
声にならない唸り声をあげる私に近づくと足にまとわりつく鎖をわざと持ち上げる殿下。
鎖に繋がった私の足が引っ張られ捲りあがるスカートを思わず抑えると。
「まぁ、この足枷がある限りお前は此処から出る事は叶わない。お前が俺の婚約者になると返事をくれたら……まぁな。とりあえず良い返事を言う事を決めてくれたらいつでも呼び出してくれ」
殿下はそう言うと中途半端に持ち上がった私の足をスルリと撫で楽しそうに笑った。
「あ、そうそう宰相も母上もこの事はご存知だから助けを求めても無駄だぞ。宰相はまだしも母上はこの件に関しては快く協力してくれたからな」
嘘でしょ?
王妃様はまだしも、まさかお父様全て知っていて領地へ帰る事を認めてくださったの?
絶望に近い顔をしていたのだろう。それに気が付いた殿下に。
「勘違いのないように一つだけ訂正するが、宰相は知っているが協力はしてないぞ。宰相は娘であるお前の気持ちを一番大切に考えている。ただ母上に逆らえなかっただけだ」
そうか、よかったお父様までも積極的に協力していたとしたらさすがに暴れそうだったわ。
「とにかく。お前が俺の婚約者になると言うまでこの部屋からも王宮からも出さない……気長に待つつもりだけど返事は早くくれ。でもハイかお受けしますしか駄目だからな!」
そう言うと私を誘拐した犯人である殿下がこの部屋を出て行った。
えーっと……。
結局どういう事なの?
あまりにショックな事実の情報量に私は混乱していた。
両手に持っていたナイフとフォークを置きナフキンで口元を拭うと殿下は私の顔を見つめニヤリと笑った。
「お前を俺の婚約者にするためだ」
は?
えーっと今殿下は何を言ったのかしら?
オマエヲオレノコンヤクシャニスルタメダ?
いや、コンニャクだったかしら?
まさか……コンヤクシャじゃないよね?
ナイナイナイナイ。
とてもいい顔で殿下が言い放った言葉を脳が理解するのを拒否するかのように私の頭の中は?でいっぱいになり思い切りポカーンと口をあけて呆然としてしまった。
「えっと……申し訳ありません。私どうもあり得ない言葉と聞き間違えたようなのでもう一度伺ってもよろしいですか?」
「いいぞ、何度でも言ってやる。お前を俺の婚約者にするためだ」
ンンンンン。
嫌だなぁ。
また「オマエヲオレノコンヤクシャニスルタメダ」って聞こえたんだけど。
今度は空耳かしら?と頭を捻っていると。
「おい、悪いが空耳でも言い間違いでもないぞ」
ニタニタと悪い笑顔を向けて私に止めを刺すかのように殿下は言った。
「今はまだコレは王家からの打診に過ぎない。が、お前が絶対に逆らえない方法にする事もできるんだぞ」
その言葉に私はビクッと思わず身体を強張らせた。
要は現段階で婚約すれば婚約後の逃げ道はあるけれど、どうしてもイヤがるようなら王命にして無理矢理、王からの命令として縛り付けてもいいぞ、と……。
王命の婚約になってしまったらそれこそこの国からの命令だ。その命令に逆らう事など公爵令嬢である私に出来るはずがない。
王命での婚約となれば、例え婚約解消したくとも王からの許しがなければちょっとやそっとじゃ覆される事はないし拒否すら出来ない。
王命での婚約など私にとっては一番避けなければならない案件ではないか!
それに、そもそも殿下との婚約自体が私は嫌だ。
なぜみすみす殺されると分かり切っている道を選ばねばならないのだ!
顔面蒼白にする私に近づいて来る殿下が、私の頬を撫でると目を細めあの何を考えているかわからない笑みを浮かべ迫ってくる。
「まぁどの道お前がどんなにこの婚約を嫌がろうとも俺の婚約者はユーリア・オクレールお前だけだと俺が決めたからな」
「な、何を勝手な事を」
「あぁ、勝手なのは承知の上だ。俺は俺の気に入った物を手放すつもりは毛頭ない。だからお前が、ハイかお受けしますのどちらかの返事しか受け取る気はない」
えぇぇぇ。
その選択肢は選択肢ではないですよ!私に拒否権などないと言っているようなもの。
何この理不尽。
うーーー。
声にならない唸り声をあげる私に近づくと足にまとわりつく鎖をわざと持ち上げる殿下。
鎖に繋がった私の足が引っ張られ捲りあがるスカートを思わず抑えると。
「まぁ、この足枷がある限りお前は此処から出る事は叶わない。お前が俺の婚約者になると返事をくれたら……まぁな。とりあえず良い返事を言う事を決めてくれたらいつでも呼び出してくれ」
殿下はそう言うと中途半端に持ち上がった私の足をスルリと撫で楽しそうに笑った。
「あ、そうそう宰相も母上もこの事はご存知だから助けを求めても無駄だぞ。宰相はまだしも母上はこの件に関しては快く協力してくれたからな」
嘘でしょ?
王妃様はまだしも、まさかお父様全て知っていて領地へ帰る事を認めてくださったの?
絶望に近い顔をしていたのだろう。それに気が付いた殿下に。
「勘違いのないように一つだけ訂正するが、宰相は知っているが協力はしてないぞ。宰相は娘であるお前の気持ちを一番大切に考えている。ただ母上に逆らえなかっただけだ」
そうか、よかったお父様までも積極的に協力していたとしたらさすがに暴れそうだったわ。
「とにかく。お前が俺の婚約者になると言うまでこの部屋からも王宮からも出さない……気長に待つつもりだけど返事は早くくれ。でもハイかお受けしますしか駄目だからな!」
そう言うと私を誘拐した犯人である殿下がこの部屋を出て行った。
えーっと……。
結局どういう事なの?
あまりにショックな事実の情報量に私は混乱していた。
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