8 / 11
8
しおりを挟む
椅子に座ると目の前にあるテーブルの上に並べられた朝食。
フカフカで柔らかそうなオムレツに添えられたカリカリに焼かれたベーコンと瑞々しいレタスとトマトとブロッコリーのサラダ。
三日月を模したクロワッサンとバターがたっぷり使われたロールパン、甘い匂いが漂うフレンチトーストにパンケーキまで色々と揃っている。
飲み物は搾りたてのオレンジジュースに紅茶とミルクが用意されていた。
さすが王族に出される食事だ。朝から豪華だなぁ。
起きて早々部屋に来てくれた侍女に抱えられ湯あみと強制的にマッサージを受け、全身艶々のピカピカに磨き上げられると無駄に豪華なドレスに着替えさせられた。
なにこのサイズピッタリって……怖いんですけど。
朝からクタクタになりながらも席に着くと目の前に広がるのはこの食事だった。
そう言えば昨日の朝にご飯を食べた切りだったなぁと思いつつも、目の前に座り綺麗な食事マナーで優雅に朝食を当然のように食べている殿下を思わずジト目で見てしまう。
なんでこの人当然のようにこの部屋で一緒に食事を取ろうとしているのかしら?
いや、それよりも一体この状況はどういう事なの?
「なんだ、食べないのか?昨日から食事してないから腹へっただろう?遠慮せずに食え」
そう声を掛けながらもモグモグと食事を続ける殿下に苛立ちが更に募る。
「食べます、食べますけど……状況の説明をお願いできませんか?」
正直どうして私がココにいるのか状況がよくわからない。
私が記憶している事は、昨日領地へ帰る為に私付のメイドと執事と共に家を出た所までだ。
誰かに襲われたなんていう記憶もない。
寧ろ私がどうやってここに連れてこられたか全くわからないのだ。
私は殿下からどういう説明を受けるのかとビクビクしていると……私の予想の範疇を超えた返事が返ってきた。
「あぁ、俺が連れて来た」
「は?」
「だから俺が、王宮に連れてくるよう部下に指示した。オクレール公爵令嬢を領地へ帰すなと」
や、ちょっと……意味がわからないんですけど。
なぜ殿下が私が領地へ帰る事をやめさせ、拉致まがいな誘拐をしてまで王宮へ連れてこなくてはならないのかしら?
そんな事をする必要がどこにあるのかわからずに思わず頭を捻ってしまう。
一度目の時なら私が領地へ帰ろうなんて事をしたらもろ手を挙げて送り出したくらいに私の事が嫌いだったはずなのに……それどころか私が帰る事を阻止するような事をするんだろう?
訳がわからない。
「な、なぜそのような事を」
そう言うと今までご機嫌だった表情を歪めた殿下が分かりやすく拗ねた様子を見せた。
「なぜって……お前が勝手に王都から居なくなろうとするからだろう」
子供らしくプクーっと頬を膨らませながら恨めしそうな顔で私を睨んでくる。
こんな表情どころか、いつもの冷たい目と能面のような表情のない顔以外の顔を見た事がない私は酷く動揺してしまった。
私は知らなかったのだ……ずっと彼の周りをちょろちょろしてつき纏っていた割にはこの人の事を何も見えていなかったし、見ても居なかった。
その事実にちょっと驚いた。
彼は私の知らない、気が付く事のなかったまだ8歳の殿下。
いつも国のトップに相応しい物を求められこんな幼い頃から将来の王としての教育を受け子供らしい子供時代がきっとなかったのだろう。
誰かに甘えたくても甘えられる環境になかった。
その上、自分の周りに侍るのは自分の気に入らない婚約者だとのたまう馬鹿な令嬢のみ。
そう考えると殿下は可哀相な子供だったんだな。
そりゃ殿下を癒してくれた存在の少女に恋をしても誰も文句は言えないよ。
どうして私も気が付いてあげられなかったんだろう。
今更ながら前の自分の馬鹿さ加減に悲しくなった。
「そうですか……でも私は殿下の婚約者でもなんでもない普通の公爵令嬢です殿下が私を引き留める必要はないと思うのですが」
そう、そこが疑問だ。
殿下が私にこだわる必要なんか一つもないし、寧ろ私が王都から居なくなった方がいいと思うのだけどどうして私が王都を去るのを引き留めるんだろう。
それも足枷をして逃げられないような状況にする意味がわからない。
フカフカで柔らかそうなオムレツに添えられたカリカリに焼かれたベーコンと瑞々しいレタスとトマトとブロッコリーのサラダ。
三日月を模したクロワッサンとバターがたっぷり使われたロールパン、甘い匂いが漂うフレンチトーストにパンケーキまで色々と揃っている。
飲み物は搾りたてのオレンジジュースに紅茶とミルクが用意されていた。
さすが王族に出される食事だ。朝から豪華だなぁ。
起きて早々部屋に来てくれた侍女に抱えられ湯あみと強制的にマッサージを受け、全身艶々のピカピカに磨き上げられると無駄に豪華なドレスに着替えさせられた。
なにこのサイズピッタリって……怖いんですけど。
朝からクタクタになりながらも席に着くと目の前に広がるのはこの食事だった。
そう言えば昨日の朝にご飯を食べた切りだったなぁと思いつつも、目の前に座り綺麗な食事マナーで優雅に朝食を当然のように食べている殿下を思わずジト目で見てしまう。
なんでこの人当然のようにこの部屋で一緒に食事を取ろうとしているのかしら?
いや、それよりも一体この状況はどういう事なの?
「なんだ、食べないのか?昨日から食事してないから腹へっただろう?遠慮せずに食え」
そう声を掛けながらもモグモグと食事を続ける殿下に苛立ちが更に募る。
「食べます、食べますけど……状況の説明をお願いできませんか?」
正直どうして私がココにいるのか状況がよくわからない。
私が記憶している事は、昨日領地へ帰る為に私付のメイドと執事と共に家を出た所までだ。
誰かに襲われたなんていう記憶もない。
寧ろ私がどうやってここに連れてこられたか全くわからないのだ。
私は殿下からどういう説明を受けるのかとビクビクしていると……私の予想の範疇を超えた返事が返ってきた。
「あぁ、俺が連れて来た」
「は?」
「だから俺が、王宮に連れてくるよう部下に指示した。オクレール公爵令嬢を領地へ帰すなと」
や、ちょっと……意味がわからないんですけど。
なぜ殿下が私が領地へ帰る事をやめさせ、拉致まがいな誘拐をしてまで王宮へ連れてこなくてはならないのかしら?
そんな事をする必要がどこにあるのかわからずに思わず頭を捻ってしまう。
一度目の時なら私が領地へ帰ろうなんて事をしたらもろ手を挙げて送り出したくらいに私の事が嫌いだったはずなのに……それどころか私が帰る事を阻止するような事をするんだろう?
訳がわからない。
「な、なぜそのような事を」
そう言うと今までご機嫌だった表情を歪めた殿下が分かりやすく拗ねた様子を見せた。
「なぜって……お前が勝手に王都から居なくなろうとするからだろう」
子供らしくプクーっと頬を膨らませながら恨めしそうな顔で私を睨んでくる。
こんな表情どころか、いつもの冷たい目と能面のような表情のない顔以外の顔を見た事がない私は酷く動揺してしまった。
私は知らなかったのだ……ずっと彼の周りをちょろちょろしてつき纏っていた割にはこの人の事を何も見えていなかったし、見ても居なかった。
その事実にちょっと驚いた。
彼は私の知らない、気が付く事のなかったまだ8歳の殿下。
いつも国のトップに相応しい物を求められこんな幼い頃から将来の王としての教育を受け子供らしい子供時代がきっとなかったのだろう。
誰かに甘えたくても甘えられる環境になかった。
その上、自分の周りに侍るのは自分の気に入らない婚約者だとのたまう馬鹿な令嬢のみ。
そう考えると殿下は可哀相な子供だったんだな。
そりゃ殿下を癒してくれた存在の少女に恋をしても誰も文句は言えないよ。
どうして私も気が付いてあげられなかったんだろう。
今更ながら前の自分の馬鹿さ加減に悲しくなった。
「そうですか……でも私は殿下の婚約者でもなんでもない普通の公爵令嬢です殿下が私を引き留める必要はないと思うのですが」
そう、そこが疑問だ。
殿下が私にこだわる必要なんか一つもないし、寧ろ私が王都から居なくなった方がいいと思うのだけどどうして私が王都を去るのを引き留めるんだろう。
それも足枷をして逃げられないような状況にする意味がわからない。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

王子の恋の共犯者
はるきりょう
恋愛
人並みに恋愛小説を読むのが好きだった。叶わない恋は応援したくなる。好きなのに、身分が違うと言うだけで、結ばれないなんて、そんな悲しいことはない。だから、エルサは共犯者になることに決めた。
小説家になろうサイト様にも掲載しています。

あなたの為に出来る事ー逆行した私は愛する人を幸せにするために二度目の人生をあなたに捧ぐー
支倉りおと
恋愛
初恋は実らない。
それは昔から言われてきたジンクスのようなもの。
それは私、宇佐美爽香にとって心の痛い問題だった。
生まれる前から決められた婚約者との結婚式当日。
結婚相手である婚約者が私ではない彼の最愛の彼女との逃避行の果ての事故死。
その事実を知りショックから気を失い目覚めたらなんと彼と出会う少し前の私、5歳の誕生日まで逆行していた。
驚く私だけど、この逆行現象に私は一縷の望みを見つけた。
彼は私の物にはなってくれないけれど、大好きな彼を死という形で失うくらいなら生きていて欲しい。
だから私は決めたんだ。
彼を守るためにこの二度目の人生を愛する彼に捧げると。

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる