2 / 11
2
しおりを挟む
予想通り振り向いた先に居たのは、逆行前に私が望んで婚約者になり、ただ愛されたかった愛しい人。
あのお茶会で出会った時と同じ姿の殿下だった。
美しく肩まで伸びる金髪と青い瞳。
王妃様譲りの美しい容貌に若干8歳ながらも既に完成された美がある。
これだけ美しければ6歳になったばかりのおこちゃまな私が惚れるのはしょうがいないはずだ。
そんな事を心の中で思っていると、強い視線を感じた。
視線の先を辿ると、やっぱりその視線は殿下からで今にも私を射殺そうとせんばかりの視線の強さに思わず身を固くさせた。
そうか……。
私は既に初対面で殿下に嫌われていたんだね。
どうして気が付かなかったんだろう。
舞い上がっていたんだろうな。こんなに綺麗な人を見るの初めてだったもんね。
所で殿下はこんな所に何の用なんだろう?
確か私と殿下がはじめて出会ったのはお茶会会場だったはず。
この池のほとりなんかじゃなかった。
なんて思っていたら。
「おい、お前なんでここに居るんだ?ここは母上の為に作られた場所だお前みたいなやつが居ていい場所じゃないぞ」
見目麗しい殿下の口から飛び出した言葉に私は目を見開き一瞬空耳かと疑った。
私の知る殿下ってこんなに口調が汚かったかしら?と頭を捻っていると。
「なんだ無視するな!」
言葉を返す事を忘れていた私に真っ赤な顔をし何やら憤慨した様子の殿下が近づいて来ると私の腕を取り引き寄せた。
突然の事に私は驚くけれど、逆行する前ですらこんなにも近づいたこともなかった私の頭は逆に冷静になる。
全く触れ合う事がなかったかと言われたら嘘になるけれど、そりゃ婚約者だから長く一緒にいれば義務的にダンスをする事ぐらいあったけれど、それでも殿下は私に必要以上近寄るなんて事はなかったのだ。
だから殿下からの接触に私の身体は驚いて震えてしまう。
「あ、あの……申し訳ありません。すぐ立ち去りますのでお許しください」
震える身体をなんとか抑え込み、ペコリと頭を下げ殿下に断りを入れ逃亡を図ろうと少しずつジリジリと後退する。
怖い。
何故か処刑前夜に現れた私を見て嬉しそうにする殿下の顔がフラッシュバックする。
憎悪に満ちた表情からこの世の春のような清々しく嬉しそうに私に処刑を告げたあの人。
その時の事を思い出すと更に震えが大きくなる。
そんな私をジッと至近距離で見つめてくる殿下の口から飛び出したのは……。
「お前、タイラーの……いやオクレール公爵の娘のユーリア・オクレールか?」
え?なぜ殿下が私の名前を知っているの?おもわずコテンと頭を捻る。
殿下は初対面の時私の名前など興味もなく知らなかったはずだ。
逆行前との小さな差異に私の心がざわざわする。
それでも失礼のないようにこの場を立ち去らねばと私はいまだにぼんやりする頭をフル回転させて逃げる算段を考え、殿下に捕まれた手からスルリと抜け出すと殿下に向かいこの歳にしてはしかっかりとしたカテーシーをする。
「はい、オクレール公爵が娘ユーリア・オクレールと申しますお見知りおきを」
背筋を伸ばし多少引き攣りながらの笑顔を見せそう挨拶をした。
「そうか、お前が……。私はアーサー、アーサー・バシュラールこの国の第一王子だ」
少しはにかむような笑顔を見せ私に挨拶をしてくる殿下に私は更に恐怖を募らせる。
一度死を経験した私にとって目の前にいる殿下は恋心を持つなんてとんでも無く、正直恐怖の対象でしかない。
前の生で殺したいほど憎まれ、本当に殺された私だ二度とこの人を好きになる事は愚か関わるのすら遠慮したいほどだ。
早くこの場から離れなくては……そう思い策を講じていると、目の前の殿下がとんでも無い事を口にした。
「俺に比べたら見目も劣るような女だが、家柄だけならこの国1番だから仕方なくだ!仕方なくお前を俺の婚約者にしてやる」
フンっと大きく鼻を鳴らしながらさも嬉しいだろうとばかりの態度を取る殿下に私は思わずこう言ってしまった。
「いえ、そういうのは結構です。私は殿下より見目も劣るような女でございます。見目美しいだけの殿下の隣になど立てるはずはありません。謹んでお断りさせていただきます」
そう言うと、ニッコリとお得意のアルカイックスマイルを貼り付け殿下を見ると、予想外の反応だったのか、目の前の殿下が口を開けてポカーンと言う音がしそうなほど呆気にとられていた。
「なっ!!この俺がお前を婚約者にしてやるというのに断る?だと?俺の婚約者に選ばれたのだぞ!喜ぶ事はあっても断るなどありえない!!俺の婚約者になれば未来の王太子妃そして王妃、国母に選ばれたも同然なんだぞ。誉れであって断るような話じゃないだろう」
断るなんてありえないと私に詰め寄るが、正直私の命と国の誉れを比べても私は自分の命が惜しい。
あのお茶会で出会った時と同じ姿の殿下だった。
美しく肩まで伸びる金髪と青い瞳。
王妃様譲りの美しい容貌に若干8歳ながらも既に完成された美がある。
これだけ美しければ6歳になったばかりのおこちゃまな私が惚れるのはしょうがいないはずだ。
そんな事を心の中で思っていると、強い視線を感じた。
視線の先を辿ると、やっぱりその視線は殿下からで今にも私を射殺そうとせんばかりの視線の強さに思わず身を固くさせた。
そうか……。
私は既に初対面で殿下に嫌われていたんだね。
どうして気が付かなかったんだろう。
舞い上がっていたんだろうな。こんなに綺麗な人を見るの初めてだったもんね。
所で殿下はこんな所に何の用なんだろう?
確か私と殿下がはじめて出会ったのはお茶会会場だったはず。
この池のほとりなんかじゃなかった。
なんて思っていたら。
「おい、お前なんでここに居るんだ?ここは母上の為に作られた場所だお前みたいなやつが居ていい場所じゃないぞ」
見目麗しい殿下の口から飛び出した言葉に私は目を見開き一瞬空耳かと疑った。
私の知る殿下ってこんなに口調が汚かったかしら?と頭を捻っていると。
「なんだ無視するな!」
言葉を返す事を忘れていた私に真っ赤な顔をし何やら憤慨した様子の殿下が近づいて来ると私の腕を取り引き寄せた。
突然の事に私は驚くけれど、逆行する前ですらこんなにも近づいたこともなかった私の頭は逆に冷静になる。
全く触れ合う事がなかったかと言われたら嘘になるけれど、そりゃ婚約者だから長く一緒にいれば義務的にダンスをする事ぐらいあったけれど、それでも殿下は私に必要以上近寄るなんて事はなかったのだ。
だから殿下からの接触に私の身体は驚いて震えてしまう。
「あ、あの……申し訳ありません。すぐ立ち去りますのでお許しください」
震える身体をなんとか抑え込み、ペコリと頭を下げ殿下に断りを入れ逃亡を図ろうと少しずつジリジリと後退する。
怖い。
何故か処刑前夜に現れた私を見て嬉しそうにする殿下の顔がフラッシュバックする。
憎悪に満ちた表情からこの世の春のような清々しく嬉しそうに私に処刑を告げたあの人。
その時の事を思い出すと更に震えが大きくなる。
そんな私をジッと至近距離で見つめてくる殿下の口から飛び出したのは……。
「お前、タイラーの……いやオクレール公爵の娘のユーリア・オクレールか?」
え?なぜ殿下が私の名前を知っているの?おもわずコテンと頭を捻る。
殿下は初対面の時私の名前など興味もなく知らなかったはずだ。
逆行前との小さな差異に私の心がざわざわする。
それでも失礼のないようにこの場を立ち去らねばと私はいまだにぼんやりする頭をフル回転させて逃げる算段を考え、殿下に捕まれた手からスルリと抜け出すと殿下に向かいこの歳にしてはしかっかりとしたカテーシーをする。
「はい、オクレール公爵が娘ユーリア・オクレールと申しますお見知りおきを」
背筋を伸ばし多少引き攣りながらの笑顔を見せそう挨拶をした。
「そうか、お前が……。私はアーサー、アーサー・バシュラールこの国の第一王子だ」
少しはにかむような笑顔を見せ私に挨拶をしてくる殿下に私は更に恐怖を募らせる。
一度死を経験した私にとって目の前にいる殿下は恋心を持つなんてとんでも無く、正直恐怖の対象でしかない。
前の生で殺したいほど憎まれ、本当に殺された私だ二度とこの人を好きになる事は愚か関わるのすら遠慮したいほどだ。
早くこの場から離れなくては……そう思い策を講じていると、目の前の殿下がとんでも無い事を口にした。
「俺に比べたら見目も劣るような女だが、家柄だけならこの国1番だから仕方なくだ!仕方なくお前を俺の婚約者にしてやる」
フンっと大きく鼻を鳴らしながらさも嬉しいだろうとばかりの態度を取る殿下に私は思わずこう言ってしまった。
「いえ、そういうのは結構です。私は殿下より見目も劣るような女でございます。見目美しいだけの殿下の隣になど立てるはずはありません。謹んでお断りさせていただきます」
そう言うと、ニッコリとお得意のアルカイックスマイルを貼り付け殿下を見ると、予想外の反応だったのか、目の前の殿下が口を開けてポカーンと言う音がしそうなほど呆気にとられていた。
「なっ!!この俺がお前を婚約者にしてやるというのに断る?だと?俺の婚約者に選ばれたのだぞ!喜ぶ事はあっても断るなどありえない!!俺の婚約者になれば未来の王太子妃そして王妃、国母に選ばれたも同然なんだぞ。誉れであって断るような話じゃないだろう」
断るなんてありえないと私に詰め寄るが、正直私の命と国の誉れを比べても私は自分の命が惜しい。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

王子の恋の共犯者
はるきりょう
恋愛
人並みに恋愛小説を読むのが好きだった。叶わない恋は応援したくなる。好きなのに、身分が違うと言うだけで、結ばれないなんて、そんな悲しいことはない。だから、エルサは共犯者になることに決めた。
小説家になろうサイト様にも掲載しています。

あなたの為に出来る事ー逆行した私は愛する人を幸せにするために二度目の人生をあなたに捧ぐー
支倉りおと
恋愛
初恋は実らない。
それは昔から言われてきたジンクスのようなもの。
それは私、宇佐美爽香にとって心の痛い問題だった。
生まれる前から決められた婚約者との結婚式当日。
結婚相手である婚約者が私ではない彼の最愛の彼女との逃避行の果ての事故死。
その事実を知りショックから気を失い目覚めたらなんと彼と出会う少し前の私、5歳の誕生日まで逆行していた。
驚く私だけど、この逆行現象に私は一縷の望みを見つけた。
彼は私の物にはなってくれないけれど、大好きな彼を死という形で失うくらいなら生きていて欲しい。
だから私は決めたんだ。
彼を守るためにこの二度目の人生を愛する彼に捧げると。

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる