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2章 1000回目の巻き戻りのはじまり
フローリア、絶縁を申し渡す
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「ふ、フロル?……それは一体誰の事?まさか僕以外の男じゃないよね?」
私に覆いかぶさりながら、不愉快さを瞳に滲ませ怒りのこもった声色で彼は私に尋ねてくる。
何度も何度も私の記憶の中に現れる幼少期のライアン殿下。
金色のふわふわとした髪も吸い込まれるような美しい緑色の瞳も何も変わらない。
だけどこの人は私が大切だった殿下ではない。
私をフロルと呼んでいいのは一度目の人生の殿下のみ。
他の殿下は私にとっては全部偽物だ。
だからこの人は私の知る殿下ではない。
「ええ、あなたの事ではありませんわ。申し訳ありませんが、私はあなたの事を知りません。そろそろ私の上からどいて貰ってもよろしいかしら?」
真顔でそう伝えると、少し申し訳なさそうに視線を伏せる。
私がはっきりと貴方を知らないと言った事に何故か傷ついた顔を見せるライアン殿下に多少の違和感を感じる。
「僕はこの国の第一王子のライアン・スタインベルグだ。お前はナイトレイ家の令嬢だろ?」
「まぁ、貴方様が王子様でしたのね。申し遅れました私はナイトレイ侯爵が娘フローリア・ナイトレイでございます。このような体勢で失礼致します、以後お見知りおきを」
意識を失って気が付いたままの体勢だったのでこのような挨拶になってしまった。
お互いに間抜けな挨拶を交わしてしまったが、ここでようやくライアン殿下が私の上からどいてくれた。
起き上がった私が乱れたドレスを直していると、顔を赤くしたライアン殿下の視線がやたらと気になったが知らないフリをする事にした。
「お前、今日どうしてこのお茶会に呼ばれたのか聞いているか?」
「いえ?特には伺っていませんわ?殿下はご存知ですの?」
そんなの知ってるに決まってるじゃない。何度繰り返しても必ず私の5歳の誕生日になるとこのお茶会は開かれる。
そして必ず婚約者候補にされてしまう。それはもう永遠に解けない呪いのように。
「今日は僕の婚約者候補を決める為のお茶会だ。でも最初から婚約者は決まっているんだ」
「まぁ、そうですの?どちらのご令嬢なんですの?」
わざとらしく知らないフリをする自分の姿にちょっと笑える。笑いをこらえる私の手を急に取るライアン殿下に身体がビクッと反応してしまう。
あぁ、この手は私が知る手だ。
一番最初の人生で何度も繋いだ手だ。
懐かしさと、申し訳なさで苦しくなった。
「フローリア・ナイトレイ侯爵令嬢。お前の事だよ」
「まあ、そうですの。でも……お断りさせて頂きますわ」
「は?」
私が即時に拒絶したので、ライアン殿下は普通にしていても大きな瞳を更に大きくする。
「な、どうしてだ?僕との婚約はこの国の令嬢なら名誉な事なんだぞ!将来は王妃そして国母になれるのになぜだ!」
「何故と申されましても……」
そんなの決まっているじゃない。
「私、王妃とか国母なんて興味ありませんわ。それに私では殿下のお相手はとてもじゃないですけど荷が重いですし、私は将来は領地のある田舎でゆったりと暮らしたいのです」
ニッコリ笑いそう殿下に伝えると。
「そ、そんな事許される訳がないだろう?政略結婚は貴族なら当たり前の事だ!諦めて僕の所に嫁いで来い!」
は?
何言ってるのこの人。
確かに政略結婚は貴族なら仕方がない事だけど。
「あら、殿下は政略結婚がお望みなんですのね」
「そ、そういう訳ではないが……できればはんりょとなる人とは愛し合えるようになれるのが理想だが」
よし、言質取った。
「まぁまぁ、でしたら。お相手は私ではない方の方が宜しいですわよ」
「何故だ?ぼ、僕はお前がいいと思ってる」
「申し訳ありません殿下。私ではその願いを叶える事は出来ません」
「なぜだ?」
「だって……私、殿下の事大っ嫌いですもの」
特大のキラキラとした微笑みを浮かべるとそう殿下に言った。
私の言葉に固まるライアン殿下に止めを刺すように。
「そういう事ですので、申し訳ありませんが婚約は私ではない方とお結びください。もし無理強いするようでしたら……絶縁させていただきますね。ではお先に失礼させていただきます」
そう言うと私は転移の魔法を使い連れ込まれたツリーハウスから脱出した。
これで私が婚約者というループは断ち切れただろう。
ライアン殿下の婚約者は私じゃない方が彼は幸せになるはずだ。
どう転んでも一番はじめの私じゃない私は彼の伴侶に相応しくない。
だから今度こそあなたとの縁を切りたいのだ。
私に覆いかぶさりながら、不愉快さを瞳に滲ませ怒りのこもった声色で彼は私に尋ねてくる。
何度も何度も私の記憶の中に現れる幼少期のライアン殿下。
金色のふわふわとした髪も吸い込まれるような美しい緑色の瞳も何も変わらない。
だけどこの人は私が大切だった殿下ではない。
私をフロルと呼んでいいのは一度目の人生の殿下のみ。
他の殿下は私にとっては全部偽物だ。
だからこの人は私の知る殿下ではない。
「ええ、あなたの事ではありませんわ。申し訳ありませんが、私はあなたの事を知りません。そろそろ私の上からどいて貰ってもよろしいかしら?」
真顔でそう伝えると、少し申し訳なさそうに視線を伏せる。
私がはっきりと貴方を知らないと言った事に何故か傷ついた顔を見せるライアン殿下に多少の違和感を感じる。
「僕はこの国の第一王子のライアン・スタインベルグだ。お前はナイトレイ家の令嬢だろ?」
「まぁ、貴方様が王子様でしたのね。申し遅れました私はナイトレイ侯爵が娘フローリア・ナイトレイでございます。このような体勢で失礼致します、以後お見知りおきを」
意識を失って気が付いたままの体勢だったのでこのような挨拶になってしまった。
お互いに間抜けな挨拶を交わしてしまったが、ここでようやくライアン殿下が私の上からどいてくれた。
起き上がった私が乱れたドレスを直していると、顔を赤くしたライアン殿下の視線がやたらと気になったが知らないフリをする事にした。
「お前、今日どうしてこのお茶会に呼ばれたのか聞いているか?」
「いえ?特には伺っていませんわ?殿下はご存知ですの?」
そんなの知ってるに決まってるじゃない。何度繰り返しても必ず私の5歳の誕生日になるとこのお茶会は開かれる。
そして必ず婚約者候補にされてしまう。それはもう永遠に解けない呪いのように。
「今日は僕の婚約者候補を決める為のお茶会だ。でも最初から婚約者は決まっているんだ」
「まぁ、そうですの?どちらのご令嬢なんですの?」
わざとらしく知らないフリをする自分の姿にちょっと笑える。笑いをこらえる私の手を急に取るライアン殿下に身体がビクッと反応してしまう。
あぁ、この手は私が知る手だ。
一番最初の人生で何度も繋いだ手だ。
懐かしさと、申し訳なさで苦しくなった。
「フローリア・ナイトレイ侯爵令嬢。お前の事だよ」
「まあ、そうですの。でも……お断りさせて頂きますわ」
「は?」
私が即時に拒絶したので、ライアン殿下は普通にしていても大きな瞳を更に大きくする。
「な、どうしてだ?僕との婚約はこの国の令嬢なら名誉な事なんだぞ!将来は王妃そして国母になれるのになぜだ!」
「何故と申されましても……」
そんなの決まっているじゃない。
「私、王妃とか国母なんて興味ありませんわ。それに私では殿下のお相手はとてもじゃないですけど荷が重いですし、私は将来は領地のある田舎でゆったりと暮らしたいのです」
ニッコリ笑いそう殿下に伝えると。
「そ、そんな事許される訳がないだろう?政略結婚は貴族なら当たり前の事だ!諦めて僕の所に嫁いで来い!」
は?
何言ってるのこの人。
確かに政略結婚は貴族なら仕方がない事だけど。
「あら、殿下は政略結婚がお望みなんですのね」
「そ、そういう訳ではないが……できればはんりょとなる人とは愛し合えるようになれるのが理想だが」
よし、言質取った。
「まぁまぁ、でしたら。お相手は私ではない方の方が宜しいですわよ」
「何故だ?ぼ、僕はお前がいいと思ってる」
「申し訳ありません殿下。私ではその願いを叶える事は出来ません」
「なぜだ?」
「だって……私、殿下の事大っ嫌いですもの」
特大のキラキラとした微笑みを浮かべるとそう殿下に言った。
私の言葉に固まるライアン殿下に止めを刺すように。
「そういう事ですので、申し訳ありませんが婚約は私ではない方とお結びください。もし無理強いするようでしたら……絶縁させていただきますね。ではお先に失礼させていただきます」
そう言うと私は転移の魔法を使い連れ込まれたツリーハウスから脱出した。
これで私が婚約者というループは断ち切れただろう。
ライアン殿下の婚約者は私じゃない方が彼は幸せになるはずだ。
どう転んでも一番はじめの私じゃない私は彼の伴侶に相応しくない。
だから今度こそあなたとの縁を切りたいのだ。
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