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2章 1000回目の巻き戻りのはじまり

フローリア、逃走を図る

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 お父様とお母様と同じ馬車に乗り王都にある邸から王宮へ向かった。

 ナイトレイ家から王宮までは馬車で約20分程。

 邸自体は貴族街の一等地にあるけれど、王宮には比較的近いのだ。

 さすがナイトレイ家の歴史も古いが、財力も凄い。


 そんな事を考えている間に王宮の門へたどり着き、上位貴族の乗降場所で馬車から降ろされた。

 お父様がまずお母様をエスコートし、その後私をエスコートし馬車から降ろして貰った。

 見上げると、そこに現れたのは記憶の中と同じ白亜の宮殿がそびえ立っていた。

 何も記憶のない頃のフローリアなら周りに居る子供と同じく子供らしくはしゃげただろうけれど、これから起きる事を考えるとそんな楽しい気分でなど少しも居られない。


 私の今日の目標は目立たず人に認知されず、王子から逃げ切るこれが目標だ。

 白いレースの手袋をした手をぎゅっと握りしめると私は更に気合を入れた。


 大体どの記憶でも共通するのがこのお茶会。

 お茶会の会場は王宮の少し奥まった所にあり、普段は王族しか立ち入る事が許されない美しい薔薇園がある庭園で開かれる。
 そこに上位貴族の子息令嬢が集められると後からあらわれる王子との交流が持たれる。

 まぁ、将来の自分の側近と婚約者を決める会ですものね。両親から言い聞かされた子供たちがギラギラしてない方がおかしいわ。

 私はそんな事に興味はないし、二度と婚約者になるなんて御免だわ。

 だから私は挨拶が終わり次第逃げるのだ。このやり直し人生は最後の人生なんだ、もう一度は存在しない!999回目の私が願った願いを叶えるのが1000回目の私の最重要事項。

 王子なんかに私の貴重な時間を浪費されてたまるか!!

 お父様達について回る挨拶が終わると、王族が入場してくるまで傍を離れた私は目立たずひっそりと隅の方へ行くと逃亡の時まで息を殺して待った。


 貴族たちが牽制しあう殺伐とした会場内にピリッとした空気が伝わる。急に騒がしくなったと思ったら予定通り王妃様とライアン殿下が現われた。

 いつも通り薄紫色でシンプルだけど、品のあるドレスを纏った王妃様と、いつも通りのクリーム色の上着と派手すぎないクラバットに紺色のトラウザーズの装いのライアン殿下。

 あー記憶通りすぎてつまらない。
 
 どの記憶もいつも同じ服。

 一体だれがこの衣装選んでるのよ。せっかくのライアン殿下の美しい顔が引き立ってない。

 ま、でも私には関係ないか。殿下に記憶があるわけじゃなし用意されたモノを着るのも仕事だから仕方ないのかもね。

 
 次々と貴族が王妃様に挨拶をしようと列をなす。そんな挨拶には加わらず王子は王妃から離れると子供たちがいる所へ向かって行った。

 今のうちにと、両親と共に王妃様との挨拶を済ませた私は両親に一言伝えると首尾よく薔薇園から離れた。

 思い出した記憶の中でいつもライアン殿下に見つかるのがサクラという木の下。

 だからサクラという木の下は鬼門だ。絶対に見つからないようにサクラは避けて私は王子との一方的な鬼ごっこをはじめた。

 絶対に婚約者阻止だ!!
 

  
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