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1章 やり直し人生のはじまりのはじまり
1度目の人生 1
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フローリア・ナイトレイはナイトレイ侯爵家の一人娘として生まれ育った。
普通なら蝶よ花よと甘やかされるはずの侯爵家の姫だがフローリアは違った。
侯爵家の令嬢として恥のない厳しい教育を受け、家族や邸の人間の期待を一身に受けのちに、令嬢の中の令嬢と呼ばれる存在になる。
15歳でのデビュタント後の社交界では美しい銀の髪と深く碧い瞳から碧玉姫と、もてはやされるような令嬢。
フローリアは令嬢としては完璧だったけれど人としての彼女は欠陥だらけ。
その欠陥というのは彼女の長年の淑女教育にある。
感情を表情に出さず笑顔で受け流す事を良しとする淑女教育により成長するに従い、彼女の感情と表情筋が死滅した。
もともと幼い頃は明るく活発な少女だったが、幼少期に始まった淑女教育の弊害で感情を失い作った笑顔しか浮かべる事の出来ない模範的な人形になってしまっていた。
長年の努力で作られ張り付けたアルカイックスマイル。
ほとんどの人は彼女が心から笑っていない事に気が付く人は居なかったけれど、ただ一人彼女の本当の笑顔を知る彼だけは見抜いていた。
それがフローリアの婚約者でこの国の王子ライアン・スタインベルグだった。
フローリアとライアンの出会いはフローリアが5歳の誕生日を迎えてすぐの事。
この国の高位貴族の子息令嬢が集められ第一王子であるライアンの将来の側近候補と婚約者候補を定めるお茶会での事だった。
素直にお転婆に育ったフローリアは王子様に興味はなく、そのお茶会ですら挨拶も早々にお茶菓子をお皿に盛ると、お茶会が開かれている王宮の中にある中庭から少し離れた所、薔薇で作られた迷路の近くにあるサクラという木の根元にドレスが汚れる事も気にせず座り込むと、持ち出してきたお茶菓子を勢いよくぱくつく。
いつもはこんな事をすれば侍女たちに怒られてしまうけれど、この頃はまだ無知なフローリアは気にすることなく大胆な事をしていた。
そんな変わった行動をするフローリアを観察していたのがこの会の主役だった後の王太子になるライアンだった。
くるくるとせわしなく動く表情と取り繕う事なくライアンをただのライアンとして見てくれるこの小さな女の子が好ましかった。
普通の貴族の娘と全く違う破天荒なフローリアの事を気に入ったライアンはその日以降フローリアを王宮に呼び出しては一緒に遊ぶ時間を作り、一緒に王宮内を走り回りイタズラの限りを尽くしていた。ライアン自身もフローリアに会いたくてナイトレイ家に足繁く通い親交を深めた。
そして時は過ぎ、10歳から18歳までのこの国の貴族は全員何かしらの学園へ通う事が義務付けられている。
2歳年上のライアンが王都にあるこの国の最高学府であるモルガン学園への進学が決まった時、ライアンの希望でフローリアとの婚約が結ばれた。
この時ライアンは10歳フローリアは8歳の婚約だった。
フローリアは二年遅れてのモルガン学園への入学を予定していたが、幼い頃から勉強をしていたので学力が入学相当に達していた事と、ライアンの希望もあり特例でライアンと同じ年からモルガン学園へ通う事になった。
ライアンとの婚約が決まった事から学園に通いながらの王妃教育が始まったフローリア。
元々、勉強は嫌いではなく順調に学業に王妃教育もおさめているフローリアに異変が起きたのは王妃教育が進み無意識に感情を押し殺す事になれて来た頃。
15歳になりフローリアのデビュタントの日それは起こった。
ライアンもフローリアのデビュタントのパートナーとなり夜会に参加するのを楽しみにしていて、この日の為にフローリアにデビュタントの少女のみ許されている純白のドレスとライアンの瞳の色である緑の色を持つアクセサリーを贈った。
恙無くデビュタントの夜会は始まりライアンとフローリアがファーストダンスを踊ると、その日の夜会も多いに盛り上がりを見せた。
そんな幸せいっぱいの2人に影を落とす存在が現れたのはその時だった。
休憩しようとダンスホールから降りた瞬間2人の目の前に現れた紫紺の髪が神秘的な色を纏い、紅い瞳が視線を惹きつける。暖かな雰囲気で今まで見たことのない美少女が目の前に現れた。
フローリアすら目の前の少女に釘付けになる程の美貌に隣にいたライアンが何も思うはずもなく……。
この時、目の前の少女にライアンが恋に落ちた瞬間を隣で見てしまったフローリアはいつも感じていた焦燥感の正体を知り納得してしまった。
薄く微笑みながら。
彼女はその時全てを諦めてしまったのだ。
彼を取り戻したいと思うほど彼を愛してはなく、放って置くには側に居すぎた。
複雑な感情はもちろんあったけれど、フローリアとライアンの間にあったのは恋と言う感情ではないと気づいたから彼女は立っていられた。
フローリアにとってライアンは幼馴染みで戦友で……兄だ。
彼の事は大事だけど、そこにあるのは友愛だった。
その日フローリアは全ての感情と表情を殺しライアンの幸せの為に出来る事をしようと思ったのだ。
彼の隣に立つのではなく彼が王になった時に臣下となり支えられる存在に。
だからフローリアの浮かべる笑みはアルカイックスマイル。
その微笑みは全てを悟り達観してしまった少女ではなく女性へと変貌した証だった。
デビュタントの日ライアンが恋に落ちた相手は、フローリアと同じ歳で最近男爵家に引き取られた元庶民の少女。
マリーベル・ジニアス男爵令嬢。
来学期からモルガン学園へ編入してくる少女だった。
普通なら蝶よ花よと甘やかされるはずの侯爵家の姫だがフローリアは違った。
侯爵家の令嬢として恥のない厳しい教育を受け、家族や邸の人間の期待を一身に受けのちに、令嬢の中の令嬢と呼ばれる存在になる。
15歳でのデビュタント後の社交界では美しい銀の髪と深く碧い瞳から碧玉姫と、もてはやされるような令嬢。
フローリアは令嬢としては完璧だったけれど人としての彼女は欠陥だらけ。
その欠陥というのは彼女の長年の淑女教育にある。
感情を表情に出さず笑顔で受け流す事を良しとする淑女教育により成長するに従い、彼女の感情と表情筋が死滅した。
もともと幼い頃は明るく活発な少女だったが、幼少期に始まった淑女教育の弊害で感情を失い作った笑顔しか浮かべる事の出来ない模範的な人形になってしまっていた。
長年の努力で作られ張り付けたアルカイックスマイル。
ほとんどの人は彼女が心から笑っていない事に気が付く人は居なかったけれど、ただ一人彼女の本当の笑顔を知る彼だけは見抜いていた。
それがフローリアの婚約者でこの国の王子ライアン・スタインベルグだった。
フローリアとライアンの出会いはフローリアが5歳の誕生日を迎えてすぐの事。
この国の高位貴族の子息令嬢が集められ第一王子であるライアンの将来の側近候補と婚約者候補を定めるお茶会での事だった。
素直にお転婆に育ったフローリアは王子様に興味はなく、そのお茶会ですら挨拶も早々にお茶菓子をお皿に盛ると、お茶会が開かれている王宮の中にある中庭から少し離れた所、薔薇で作られた迷路の近くにあるサクラという木の根元にドレスが汚れる事も気にせず座り込むと、持ち出してきたお茶菓子を勢いよくぱくつく。
いつもはこんな事をすれば侍女たちに怒られてしまうけれど、この頃はまだ無知なフローリアは気にすることなく大胆な事をしていた。
そんな変わった行動をするフローリアを観察していたのがこの会の主役だった後の王太子になるライアンだった。
くるくるとせわしなく動く表情と取り繕う事なくライアンをただのライアンとして見てくれるこの小さな女の子が好ましかった。
普通の貴族の娘と全く違う破天荒なフローリアの事を気に入ったライアンはその日以降フローリアを王宮に呼び出しては一緒に遊ぶ時間を作り、一緒に王宮内を走り回りイタズラの限りを尽くしていた。ライアン自身もフローリアに会いたくてナイトレイ家に足繁く通い親交を深めた。
そして時は過ぎ、10歳から18歳までのこの国の貴族は全員何かしらの学園へ通う事が義務付けられている。
2歳年上のライアンが王都にあるこの国の最高学府であるモルガン学園への進学が決まった時、ライアンの希望でフローリアとの婚約が結ばれた。
この時ライアンは10歳フローリアは8歳の婚約だった。
フローリアは二年遅れてのモルガン学園への入学を予定していたが、幼い頃から勉強をしていたので学力が入学相当に達していた事と、ライアンの希望もあり特例でライアンと同じ年からモルガン学園へ通う事になった。
ライアンとの婚約が決まった事から学園に通いながらの王妃教育が始まったフローリア。
元々、勉強は嫌いではなく順調に学業に王妃教育もおさめているフローリアに異変が起きたのは王妃教育が進み無意識に感情を押し殺す事になれて来た頃。
15歳になりフローリアのデビュタントの日それは起こった。
ライアンもフローリアのデビュタントのパートナーとなり夜会に参加するのを楽しみにしていて、この日の為にフローリアにデビュタントの少女のみ許されている純白のドレスとライアンの瞳の色である緑の色を持つアクセサリーを贈った。
恙無くデビュタントの夜会は始まりライアンとフローリアがファーストダンスを踊ると、その日の夜会も多いに盛り上がりを見せた。
そんな幸せいっぱいの2人に影を落とす存在が現れたのはその時だった。
休憩しようとダンスホールから降りた瞬間2人の目の前に現れた紫紺の髪が神秘的な色を纏い、紅い瞳が視線を惹きつける。暖かな雰囲気で今まで見たことのない美少女が目の前に現れた。
フローリアすら目の前の少女に釘付けになる程の美貌に隣にいたライアンが何も思うはずもなく……。
この時、目の前の少女にライアンが恋に落ちた瞬間を隣で見てしまったフローリアはいつも感じていた焦燥感の正体を知り納得してしまった。
薄く微笑みながら。
彼女はその時全てを諦めてしまったのだ。
彼を取り戻したいと思うほど彼を愛してはなく、放って置くには側に居すぎた。
複雑な感情はもちろんあったけれど、フローリアとライアンの間にあったのは恋と言う感情ではないと気づいたから彼女は立っていられた。
フローリアにとってライアンは幼馴染みで戦友で……兄だ。
彼の事は大事だけど、そこにあるのは友愛だった。
その日フローリアは全ての感情と表情を殺しライアンの幸せの為に出来る事をしようと思ったのだ。
彼の隣に立つのではなく彼が王になった時に臣下となり支えられる存在に。
だからフローリアの浮かべる笑みはアルカイックスマイル。
その微笑みは全てを悟り達観してしまった少女ではなく女性へと変貌した証だった。
デビュタントの日ライアンが恋に落ちた相手は、フローリアと同じ歳で最近男爵家に引き取られた元庶民の少女。
マリーベル・ジニアス男爵令嬢。
来学期からモルガン学園へ編入してくる少女だった。
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