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彼の
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しおりを挟む「…二年…前…」
揺れる香奈子の瞳は、涙で濡れっぱなしだ。
両手で口を押さえて震える香奈子。
見つめる俺はもうかなりの末期症状だ。どんな香奈子でもかわいい。愛おしい。このまま押し倒してしまいたい。
「あの日。二年前のあの時。無理やり本社に戻る口実を作って、5日間だけ日本に戻ってきたんだ。で、仕事を片付けて金曜の夜に香奈子を掻っ攫おうと思ってた。」
「え?」
「愛美ちゃんからさ、香奈子が頑張り過ぎていて心配だ、って連絡が来たんだ。だから、状況みてあんまり辛そうなら仕事辞めさせて、アメリカに連れて行こうって思ってた。まぁ、結局はかっさらうどころか、俺と会ったことすら香奈子の記憶に残らないことになったんだけど。」
目がまん丸のびっくり顔。
「そんな顔もすごくかわいいよ。」
そう言って
にっこり微笑みかけて頬にキスをひとつすれば、ボンっと音がなりそうなくらい赤くなった。
ソファに座り、香奈子を膝に乗せてもう一度昔話だ。涙を拭ってやり、新しいシャンパンも入れ直した。6年待ったんだ。あと一時間くらい、どうってことない。
あと…一時間…くらい…?…たぶん…。
だがしかし。お預けを喰らいっぱなしの俺の下半身はずっと臨戦態勢のままだ…もう半分ヤケだ。かわいい香奈子の太ももを弄るくらい許してほしい。かわいく睨まれても、痛くも痒くも無い。
いや、刺激されてさらに下半身はさらに痛いかもしれない…。実は、暴発しないか、心配…だったりする。
「あの時、実はおまえの背中 キスマークだらけだったぞ。」
ニヤリと流し目を送る。
「はい?!」
「後ろだったらバレないだろうと思ってさ。見えなさそうなとこ全部。やっぱり気づかなかったんだね。いやー、酔ってる香奈子、エロくてヤバかった。寝てる香奈子を触ってたら止まらなくなって。俺はなんでゴム持ってないんだ!って本当、後悔したもんね。あの夜は自分の忍耐力との戦いだった!」
今でも思う。俺、よく耐えたよな…。
バカ!なんて顔を赤くして怒られるかと思ったのに。
香奈子は…。
「まって…あれ…は…湊だったの?… 」
俺の見つめる先で震える体。
「…あれは…夢じゃ…なかった…?…あの時、あれは、ほんとに…みなと…?」
「そうだよ。あの時お前を抱いたのは俺。まあ俺のは入れてないけど?」
ニヤリとうなずくと。
香奈子の瞳から大量の涙がこぼれ落ちて、俺は焦った。
「か、かな」
「…あの時夢だと思ってたの。」
ごめんなさい…小さく呟く香奈子を抱きしめる。
「あははっやっぱりね。そうなるだろうなと思ってたよ。いいんだよ。香奈子が謝ることじゃない。」
「…ちがうの…ちゃんと…覚えてる。あの夢…うんん、夢じゃなかったのね。あの夜、湊が励ましてくれたから、あの後すごく頑張れたの。
思うようにやってみろ、好きなだけ頑張れ、もうダメだって思った時には迎えに行くからって…。湊言ってくれて…。だから頑張れたの。」
涙を流しながら見上げて来た香奈子はとても綺麗だった。
あの時。
明け方。香奈子が目覚める前に俺は香奈子の部屋を出た。
きっと、夢だと思うだろうから…と。いや、記憶しているかどうかもあやしいところだったが。
「ネックレス、つけてくれた…でしょ?」
ああ、そうだ。あの時、以前誕生日にあげたネックレスが、大事にドレッサーの上に飾られていて、香奈子にまだ思われてるって確信して…。香奈子の部屋を出る前に、香奈子の首に付けたんだ。
「朝、鏡で見てびっくりしたのよ。自分でつけたのかと思って、自分で呆れちゃったんだけど…。…でも、あの夢のあとだったから…。だから、誰に迷惑をかけるわけじゃ無いし!って開き直って…。今でもあのネックレスをつけるの。大事な日には必ず。」
俺の胸に顔を埋めている香奈子の項が見える。噛みつきたい。
「今でも大切なお守りなの。あのネックレスも。あの時の湊の言葉も…。
…ありがとう…湊。」
噛み付く代わりに
愛おしい体をぎゅっと抱きしめた。
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