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彼の
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しおりを挟む「……み、みなと……。」
スツールに腰掛ける香奈子を背後から抱きしめて片手は首すじを撫でながら、顔をよせ甘い香りを愉しむ。香奈子の髪は背中を中ほどまで隠すくらい長くなっている。あの頃は肩にもつかないくらい短くしていた。手入れが楽だと笑っていたのを思い出した。艶やかな黒髪を一房とってくちづけた。
髪を寄せて、華奢な首筋にキスをして。舌を出してツゥーと下から舐め上げた。
「…っふ…ぅ……。」
香奈子のその抑えた息づかいに煽られながら、その首すじに噛み付いてやりたい衝動を隠すため耳をペロリとなめてみるが、しかし我慢できず耳朶に軽く歯を立てた。ビクンッと強張る香奈子の腕を宥めるように摩りながら、なおも首すじを食んでいく。
「香奈子の、香りだ。いい匂い。」
「…あ、……はぁ、ここの、んっ…。ボディソープ、…湊だって、同じ…っふぅんっ。はっ、あ、んっ。」
「違うよ。全然、違う。ボディソープ、じゃ、ない。香奈子の匂いが、いいんだ…。」
香奈子は首すじが弱かった。あと耳。
昔と変わらない反応に満足しながら、ゆっくりそこを愛撫する。
項を甘噛みしてやれば、軽く麻痺したようにピクピクと反応した。
「かわいい、香奈子。」
意識して声のトーンを落とし耳元で囁けば、腕の中に閉じ込めた香奈子の身体がピクッと震えた。
バーカウンターの向こうの大きな窓の外には、綺麗な夜景が広がっている。
先程は、香奈子にこの綺麗にライトアップされた街並みを見せて、警戒し続ける彼女の気を引いた。
「きれい・・・。」
そう言ってシャンパングラスを片手に、惚けたように夜景に見入る香奈子は綺麗だった。
離れてから六年。二十九歳の香奈子は確かに大人で、顔つきも仕草も洗練された女性で、社会人としての自信がにじみ出ていて。
大人になった香奈子の横顔を見ているはずなのに、あの頃の、あの寂しげで儚げな香奈子の姿が重なってしまう。
いや。きっと、俺が無意識に重ねようとしているのだろう。
大人の女の香奈子は、昔のことなど無かったかのようにゆったりと笑っているから。一緒に過ごした時間は遠い昔の事だと、俺のことなんて忘れてしまったのだと、言われているようで…。
だから、思い出させたくなるんだ。
俺の感触を。
俺の存在を。
俺が香奈子を愛していた事を。
香奈子が俺を愛していたことを。
俺を思い出して。
香奈子
今でも
愛してると
言って欲しいんだ。
香奈子
もう一度
その心も身体も
俺に預けてくれないか。
ずっと
今でも
愛してるんだ
香奈子
耳元にチュッチュッとくちづけながら、バスローブの合わせから手を忍ばせる。女らしい鎖骨のラインを何度も往復し撫ぜる。そうやって少しずつローブの合わせを緩めていけば、こんもりとした丸みが現れた。
「…ぁあんっ。」
香奈子は気づいていない。窓ガラスに映る自分の姿に。
少し開いた唇から覗く舌に、赤く色づいた頬。はだけたローブから見える肩先は細く華奢なのにその下からこんもりと主張する丸みは扇情的で。
身体を支えるためにスツールから伸びた片足は絨毯の上に爪先立ちで、必死に身体を支えている。はだけた裾から太ももが見えていて。
思わず手を伸ばしたくなる。
男なんてこんなものだ。
どれだけ綺麗事を並べて、愛を囁いたって、惚れた女の身体に触ればソレしか考えられなくなる。
荒い呼吸をくり返す香奈子。顎に手をやり上向かせる。潤んだ目で見上げてくる香奈子の唇に顔をよせペロリとそこを舐めれば、僅かに間が開かれ、そこから強引に己の舌を押しこんだ。香奈子のそれに絡めてこすりあわせれば、素直に舌を差し出し絡めかえしてくる。キスに夢中になりながら、首元を撫でていた手をゆっくり下に降ろし胸の膨らみに這わせてゆく。
やわらかい。
張りのある乳房の上の方を優しく撫で上げる。乳房の重みを楽しみながらゆっくり指が埋まるくらいもみこんだ。蕾はぷっくりと立ち上がっていて、つぼみだけが当たるように手のひらを当ててゆっくりと円を描くように動かす。ビクンビクンと反応する香奈子は身体を捩り、くちびるは酸素を求めるように離れていこうとするから、咎めるように強く舌を吸い上げる。
「ふっ…むんんっ……。」
唇をむさぼりながら、胸を弄り続ければ、くったりと力が抜け体を寄せてくる香奈子。そんな香奈子に満足してようやく唇を離してやる。
赤く色づきぬれた唇。潤んだ目で睨んでくる香奈子の表情は最高にそそる。
そう。これが見たかった。一気に下半身に熱が溜まる。
「もう。…話をするんじゃなかったの?」
香奈子は少し掠れた声で、拗ねたようにそう言った。
くちびるは離したが、右手はまだ胸を揉み続けている。この感触がたまらない。程よい重さと弾力がまたなんとも…。
「うん…。そうなんだけど…、この感触、気持ちよすぎて、…やめられない。」
そういいながら、少し強めに握りこむ。「ぅん…」この香奈子の声も悪い。もっと聴きたくなるんだ。
シャンパンを開けて話をするはずが。
逆にアルコールのせいで自制がきかなくなってきたかもしれない。もういっそのことこのまま抱いてもいいだろうか。
「だめ。ちゃんと話して。」
俺の心の声がきこえたかのように、身を捩り離れていこうとする香奈子を片手で抱きとめ
「わかったよ。」
と軽く息を吐き、俺はやっと柔らかな乳房から手を離し両手で香奈子を抱きしめた。
見下ろす香奈子のバスローブははだけたままで、片方の胸のつぼみは見えそうで見えない。肌はほんのり赤くなっていて、はっきり言って目の毒だ。俺の欲望の象徴はますます硬くなっていくばかり。もう一度だけ耳元にくちづけてから。
「さて、何から話そうか。」
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