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2章 騎士団の見習い
14.仲の良い婚約者
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「わたくし達があんまりお姉さま方のお時間を頂戴したら申し訳ないですわ。時間は有限ですもの。ねぇ、エディ、そうは思いませんこと?」
いきなりアンナリーナに話しかけられ、エヴァははっと視線を戻した。話の流れが分からず、とりあえず、へらりと笑ってみる。アンナリーナからは仕方ない子という呆れた視線をもらってしまった。
アンナリーナは気を取り直して、ヴィオラとサンドラに向き直る。
「では、失礼致しますわ」
エヴァも慌てて一礼して、その場を立ち去ろうとするアンナリーナの手を取った。
サンドラとヴィオラの主催するお茶会は、その開催目的から、基本的に立食形式で、たくさんの相手と会話しやすく考えられているのだが、相手を探す必要の無いアンナリーナには特別に席が設けられていた。エヴァとアンナリーナが用意された席に着くと、ベルタが二人分のお茶とお菓子を用意してくれた。
「はい、エディ。あーんしてくださいな」
アンナリーナは、自分の皿に乗ったケーキをフォークで丁寧に切ると、エヴァに差し出した。
エヴァは目を丸くしたが、きっとこれが仲睦まじさを見せつける手なのだろうと、おとなしく口を開けた。
甘酸っぱい味が口の中に広がる。人に食べさせてもらうなんて幼子みたいだなぁ、とエヴァがモグモグしていると、向こうの方でラーシュがあんぐりした顔でこちらを見ているのが見えた。なにやっているんだ、お前は、という声がこちらまで聞こえてきそうで、エヴァは苦笑した。
「エディは私に食べさせてくれませんの?」
と、アンナリーナが可愛い顔でこちらにねだるので、エヴァも自分の皿のケーキを小さく切ってアンナリーナに差し出す。
その瞬間、バシッと手に何かがぶつかり、エヴァはフォークを取り落とす。
「……ラタ?」
エヴァは小さくつぶやくと、何食わぬ顔でケーキを机の上から払いのける。
そしてにっこり笑って、ベルタを見上げた。
「すみません。ケーキを落としてしまったので、新しいものを頂けますか?」
「畏まりました。すぐご用意いたします」
アンナリーナが扇を広げ内緒話をするように、エヴァに顔を近づけてくる。
楽しそうな顔とは裏腹に、緊迫したような声だ。
「……一体、どうしましたの?」
「……よく分からないけど、ラタが来た。食べるなってことだと思うんだ。……毒かな?」
「愚かな……!こんな公の場で……」
「オリヤンかな?」
「……この場の仕切りは王族よ。招待客にそのようなことができるはずないわ」
「んー。そんなに王女様方に嫌われたか―」
エヴァは苦笑する。ラタの獣の嗅覚には感謝しかないが、まさか毒で狙われる事態になるとは……。軽い気持ちで参加したことを反省する。
アンナリーナは、扇を閉じて姿勢を戻した。
「お菓子はもう十分ですわね、わたくし、あなたに城の中を案内したいわ。まだじっくりご覧になったことないわよね?」
「えぇ」
エヴァは、アンナリーナの問いに頷く。
そして席を立つと仲睦まじく腕を組んで歩きだした。
人気のなくなったところで、アンナリーナがため息を吐く。
「全く、おバカさんだとは思ってましたけど、こんなに人目のあるところであんな暴挙に出るなんて……!」
「まぁ、未遂だったからよかったよ。僕を亡き者にするために招待してくれたのかな?」
「そこまでおバカだと思いたくないわね。恐らくは体調を崩す程度のもののはず……醜態を晒させて公の場で貶めようとしたのだと思うわ」
「そっか」とつぶやきながら、エヴァは怖い人たちだなと思う。
オリヤン達といい王女達といい、どうして彼らはこうも人を傷つけることに躊躇いがないのだろうか。
分からないなー、とエヴァは頭を掻く。
いきなりアンナリーナに話しかけられ、エヴァははっと視線を戻した。話の流れが分からず、とりあえず、へらりと笑ってみる。アンナリーナからは仕方ない子という呆れた視線をもらってしまった。
アンナリーナは気を取り直して、ヴィオラとサンドラに向き直る。
「では、失礼致しますわ」
エヴァも慌てて一礼して、その場を立ち去ろうとするアンナリーナの手を取った。
サンドラとヴィオラの主催するお茶会は、その開催目的から、基本的に立食形式で、たくさんの相手と会話しやすく考えられているのだが、相手を探す必要の無いアンナリーナには特別に席が設けられていた。エヴァとアンナリーナが用意された席に着くと、ベルタが二人分のお茶とお菓子を用意してくれた。
「はい、エディ。あーんしてくださいな」
アンナリーナは、自分の皿に乗ったケーキをフォークで丁寧に切ると、エヴァに差し出した。
エヴァは目を丸くしたが、きっとこれが仲睦まじさを見せつける手なのだろうと、おとなしく口を開けた。
甘酸っぱい味が口の中に広がる。人に食べさせてもらうなんて幼子みたいだなぁ、とエヴァがモグモグしていると、向こうの方でラーシュがあんぐりした顔でこちらを見ているのが見えた。なにやっているんだ、お前は、という声がこちらまで聞こえてきそうで、エヴァは苦笑した。
「エディは私に食べさせてくれませんの?」
と、アンナリーナが可愛い顔でこちらにねだるので、エヴァも自分の皿のケーキを小さく切ってアンナリーナに差し出す。
その瞬間、バシッと手に何かがぶつかり、エヴァはフォークを取り落とす。
「……ラタ?」
エヴァは小さくつぶやくと、何食わぬ顔でケーキを机の上から払いのける。
そしてにっこり笑って、ベルタを見上げた。
「すみません。ケーキを落としてしまったので、新しいものを頂けますか?」
「畏まりました。すぐご用意いたします」
アンナリーナが扇を広げ内緒話をするように、エヴァに顔を近づけてくる。
楽しそうな顔とは裏腹に、緊迫したような声だ。
「……一体、どうしましたの?」
「……よく分からないけど、ラタが来た。食べるなってことだと思うんだ。……毒かな?」
「愚かな……!こんな公の場で……」
「オリヤンかな?」
「……この場の仕切りは王族よ。招待客にそのようなことができるはずないわ」
「んー。そんなに王女様方に嫌われたか―」
エヴァは苦笑する。ラタの獣の嗅覚には感謝しかないが、まさか毒で狙われる事態になるとは……。軽い気持ちで参加したことを反省する。
アンナリーナは、扇を閉じて姿勢を戻した。
「お菓子はもう十分ですわね、わたくし、あなたに城の中を案内したいわ。まだじっくりご覧になったことないわよね?」
「えぇ」
エヴァは、アンナリーナの問いに頷く。
そして席を立つと仲睦まじく腕を組んで歩きだした。
人気のなくなったところで、アンナリーナがため息を吐く。
「全く、おバカさんだとは思ってましたけど、こんなに人目のあるところであんな暴挙に出るなんて……!」
「まぁ、未遂だったからよかったよ。僕を亡き者にするために招待してくれたのかな?」
「そこまでおバカだと思いたくないわね。恐らくは体調を崩す程度のもののはず……醜態を晒させて公の場で貶めようとしたのだと思うわ」
「そっか」とつぶやきながら、エヴァは怖い人たちだなと思う。
オリヤン達といい王女達といい、どうして彼らはこうも人を傷つけることに躊躇いがないのだろうか。
分からないなー、とエヴァは頭を掻く。
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