悪辣同士お似合いでしょう?

ナギ

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本編

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 ウェストリール家の、ナイトロット様。
 辺境伯の次男であるその方は、同じ学園にいらっしゃったという程度の知識しかありません。
 わたくしがその程度の事しか思えないのは、ひとえにジークとハインツ、そしてフィエルの努力だったようです。
 犬達曰く、あれは勘違いをしていて恐ろしいのだと。
「そもそもの始まりは、あちらがアーデの家とつながりを持ちたくて婚約を持ちかけた所ですが、公爵様はそれを良しとしなかったのです。西の辺境伯は……あまり良い噂をお持ちではなかったので」
 西の辺境伯の噂というのは、裏世界の者と繋がっているだとか。他国の者と通じているだとか。
 本当かどうかはありませんが、明らかにわかるところでは領地運営は上手にできていない。
 先代の辺境伯は清廉潔白、人々に頼りにされる方であったらしいのですが、今代はそうではないようです。
 それゆえに、どこかの家と繋がれば金やらなにやら、補てんできると考えたのでしょう。安易なものですが。
 そして選んだのがわたくしだったということなのでしょう。
「お断りしても、何度も赴いて。それはずっと続いていました。小さな頃は大人同士、はねのける体でよかったんですが……あちらも学園に入ってきた」
 接触はさせるなと、お父様から命じられたそうです。わたくし全然知らなかったわ。
 学園で接触されて互いが好きだからなんて言い始めたらとお父様は思ったのでしょうね。
「学園での接触は防いでいました。それから、手紙や贈り物なども見せずに処分していたのでアーデは彼の事を知らない。興味を持たれても困っただろうし……けれど、ミヒャエル殿下と偽装をして、あちらも信じたのか。王家相手ではと引き下がった……ように、見えただけで」
「え?」
「アーデは知らないけどさー、俺達、西の辺境伯の……というか、次男の手配だと思うけど。変な奴らが屋敷に押し入って直接、拉致しようとしたりとか」
「待ち伏せもあったし学園に忍び込んできたこともあった」
 どうやら、わたくしの知らない所で色々な事があって、それは全部犬達がどうにかしてくれていたようです。
 犬達がいなければ、犬達が守れていなければわたくしどうなっていたのかしら。
「殿下に連れていかれた時も、最初は次男を疑ったが……まぁ、それは置いておき、とにかく何をするかわかりません」
 下手に城で何かということも無いとは思いますがとジークは言うけれど、どこかその可能性を捨て切れていないような。
 そんな様子でした。
「近づかせないのが一番だけど、夜会ではそうも言ってられないから……そう、夜会でもさ。ミヒャエル殿下がいない時はエスコートの誘いがしつこくてさ。俺達がいるからって言っても変われって騒いだりもあったし……」
 なるべく近づかせないようにはすると犬達は言います。そしてリヒトに向かって、アーデの傍を離れないでほしいとも言っていました。
 それをわたくしの前で言うのは、なんだか聞いている身としてはむず痒いのよ。
 リヒトもリヒトで、わかったと頷きますし。
 そう、改めて感じますの。わたくしがいかに守られているかを。
「それで、その次男というのはどんな見た目をしている」
「髪色は亜麻色。学園にいた頃は長く、ひとくくりにしていましたが今はどうでしょうね。他に特徴といえば」
「うっすらと、左頬から……首に向かっての傷跡。注意しないとわからない程度の」
「あ、お前が小さなころにつけた……」
 そう、とハインツが頷く。小さなころにつけた? そんな話も聞いたことはもちろんなくて、どういうことなのと視線で問えば、家に押しかけてきたときにとハインツは話し始めました。
「アーデが作法の勉強をしているとき、俺は剣技とかで。その時間の、ちょっとした合間に遭遇してお前はなんだと掴みかかられ……勝手に入ってきたのはあっちで、腹が立って木剣を投げたら折れて、それがかすって……」
 そんな感じだったと思うとハインツはうろ覚えだからと言います。
「うぅん、話を聞いている限りだと関わり合いにならないのが本当に、一番良さそうね」
 何にせよ、注意すべき方がいるのは事実。
 お三方については、セレンファーレさん達にもあとでお話をしておきましょう。
 わたくしがいるうちは、きっとわたくしに対して色々としてくるでしょうがセルデスディアに帰った後はセレンファーレさんが対しなければいけない方達ですもの。
 西の辺境伯の次男については、犬達も。そしてリヒトもいますから牽制はしてくださるでしょう。
 けれど、どうしてわたくしにそこまで執着しているのかがわかりません。
 だって、小さい頃の婚約の話なんて親が勝手に勧めるものでしょう?
 もしかしてそれを本当だと信じてしまったとか? いえ、そんな……少し調べればわかる事ですし。
 なんだか薄ら寒い嫌なものをその方からは感じます。
 リヒテールでは穏やかに、セレンファーレさんの婚儀をただ見守るだけでいたかったのですけれど。
 そううまくはいかないような気もしてまいりました。
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