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掌編
たとえば
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途中から何書いてるかわからなくなったやつ。
例えば、だ。
出会っていなかったなら、どうなっていただろうか。
セレンを傷つけた女として、助けられたはずなのにそうしなかった女だとアーデルハイトを定めず、あのもう一人の方を掴まえて処していたなら。
きっと俺はこの女を知らぬままだっただろう。出会わぬままだっただろう。
俺と出会わなければ、サレンドルあたりがでしゃばっていたかもしれない。
これが犬と呼ぶ三人は、恋仲などにはならないだろう。そういうものになりえるような感情ではなくなっていたのはもう知っている。
サレンドルと、アーデルハイト。
並べば絵になるのだろう。いや、俺との方が絵になる。似合いだ。
俺はアーデルハイトを繋ぎとめておきたくてたまらないのだが、サレンドルはどうするだろうか。
遊ばせておくような気がする。そしてそれは、アーデルハイトも気に入る所なのだろうな。
しかし、サレンドルとアーデルハイトが夫婦として成立するかは、よくわからない。
いや、俺とアーデルハイトの最初のような、あのような関係をずっと続けていくのではないだろうか。
「……俺の方が幸せにできるな」
「あなた、さっきから何をぶつぶつと言ってますの?」
「ん?」
「わたくしの事とか……何かこう、嫌な感じしかないのですが」
「ああ……例えば、というのを考えていたのだが」
例えば、とアーデルハイトは興味を持ってくる。
しかし、これを話すのはなんだかな、と思わなくもない。さてどうしようかと思いつつ、アーデルハイトがどう考えるのか。知りたいとも、思う。
「例えば……俺ではなく、サレンドルとお前が結婚していたら、と思って」
「いやだわ、寝とられ願望?」
「そのようなものは無い」
そうでしょうねと笑って、アーデルハイトはころりと転がる。俺の腕の中から逃れる元気がまだあるのか。
のろのろと起き上がって何をするのかと思えば、水を飲んでいる。
口移しで飲ませてやろうかとからかえば、そうされたいのはリヒトでしょうと返す。
そうだな、そうかもしれない。
「飲ませてくれ」
「いやよ」
意地悪だなと、水を飲み終わったアーデルハイトを腕の中に引き戻し抱きすくめ口付を降らせる。
おとなしくそれを受け取ってくれるのは愛されているということなのだろう。
「お前が誰か別の男を好きになっていたら、俺は奪いにいくだろうな」
「そうなの? その前に、どうすればわたくしに好意を持つのかわからないのだけれど」
「そう思うか?」
「だって、あなたがわたくしを好きなのは……何故だったかしらね」
出会ってしばらく過ごせば、俺はお前の事を好きになるだろう。
そう、きっと。たとえ人の物であっても。
「お前のすべてを愛しているよ」
「……そう」
「照れるな」
「照れてませんわ」
のそのそと顔を見せないようにと、胸元に顔を寄せてくる。
触れ合う肌のあたたかさを心地よいと思ってくれているのだろうか。
それなら嬉しいのだが。
「……わたくし、例えばですけれど。サレンドル様とリヒトとよりもっとましな、普通な出会いをして、見初められたとしても。自分の意志では、選ばないと思うわ」
「自分の意志では?」
「ええ。きっとお父様に命じられてしぶしぶよ。わたくしはあなただったから、自分で選んだのだと思うわ」
だから安心しなさいなとアーデルハイトは言う。
手を伸ばし、俺の頬を撫でながらとろりと酩酊するような声色で。
「あなたがわたくしを掴まえていたい限りは、好きでいてあげるわ」
「そこは愛してると言ってほしいのだが……」
「ふふ、言ってあげても良いけれど」
「いや、いい。言わせるだけだ」
熱を持った触り方をすればその意図を解したのだろう。
ひきつった笑みで嘘でしょうと言うが、笑ってかわすだけ。
俺の腕から逃げる元気があったのだから、もう一度くらいはできるだろう。
「ちょっと、やだ、明日起き上がれないのはまずいからやめたんでしょう!?」
「お前が思いのほか元気だからな」
じゃれるように愛撫を施せばやがて蕩けておとなしくなる。
宥めすかしているようで、許されているのは俺のほうなのだろう。
愛しているよと何度も囁けば知ってるわよと少し怒ったような、けれど甘さを含んだ声。
その響きも心地よい。何度も名前を呼ばれたくていじめてしまうのだが、やりすぎると怒られてしまうのだが。
けれどそれも愛されていると思えてしまう。
いつもの!!(まとめ
何かかきたい感じの事があったけど書かずに放置しているあいだにそれを忘れてしまったようです。
なんだったんだろうなー。
例えば、だ。
出会っていなかったなら、どうなっていただろうか。
セレンを傷つけた女として、助けられたはずなのにそうしなかった女だとアーデルハイトを定めず、あのもう一人の方を掴まえて処していたなら。
きっと俺はこの女を知らぬままだっただろう。出会わぬままだっただろう。
俺と出会わなければ、サレンドルあたりがでしゃばっていたかもしれない。
これが犬と呼ぶ三人は、恋仲などにはならないだろう。そういうものになりえるような感情ではなくなっていたのはもう知っている。
サレンドルと、アーデルハイト。
並べば絵になるのだろう。いや、俺との方が絵になる。似合いだ。
俺はアーデルハイトを繋ぎとめておきたくてたまらないのだが、サレンドルはどうするだろうか。
遊ばせておくような気がする。そしてそれは、アーデルハイトも気に入る所なのだろうな。
しかし、サレンドルとアーデルハイトが夫婦として成立するかは、よくわからない。
いや、俺とアーデルハイトの最初のような、あのような関係をずっと続けていくのではないだろうか。
「……俺の方が幸せにできるな」
「あなた、さっきから何をぶつぶつと言ってますの?」
「ん?」
「わたくしの事とか……何かこう、嫌な感じしかないのですが」
「ああ……例えば、というのを考えていたのだが」
例えば、とアーデルハイトは興味を持ってくる。
しかし、これを話すのはなんだかな、と思わなくもない。さてどうしようかと思いつつ、アーデルハイトがどう考えるのか。知りたいとも、思う。
「例えば……俺ではなく、サレンドルとお前が結婚していたら、と思って」
「いやだわ、寝とられ願望?」
「そのようなものは無い」
そうでしょうねと笑って、アーデルハイトはころりと転がる。俺の腕の中から逃れる元気がまだあるのか。
のろのろと起き上がって何をするのかと思えば、水を飲んでいる。
口移しで飲ませてやろうかとからかえば、そうされたいのはリヒトでしょうと返す。
そうだな、そうかもしれない。
「飲ませてくれ」
「いやよ」
意地悪だなと、水を飲み終わったアーデルハイトを腕の中に引き戻し抱きすくめ口付を降らせる。
おとなしくそれを受け取ってくれるのは愛されているということなのだろう。
「お前が誰か別の男を好きになっていたら、俺は奪いにいくだろうな」
「そうなの? その前に、どうすればわたくしに好意を持つのかわからないのだけれど」
「そう思うか?」
「だって、あなたがわたくしを好きなのは……何故だったかしらね」
出会ってしばらく過ごせば、俺はお前の事を好きになるだろう。
そう、きっと。たとえ人の物であっても。
「お前のすべてを愛しているよ」
「……そう」
「照れるな」
「照れてませんわ」
のそのそと顔を見せないようにと、胸元に顔を寄せてくる。
触れ合う肌のあたたかさを心地よいと思ってくれているのだろうか。
それなら嬉しいのだが。
「……わたくし、例えばですけれど。サレンドル様とリヒトとよりもっとましな、普通な出会いをして、見初められたとしても。自分の意志では、選ばないと思うわ」
「自分の意志では?」
「ええ。きっとお父様に命じられてしぶしぶよ。わたくしはあなただったから、自分で選んだのだと思うわ」
だから安心しなさいなとアーデルハイトは言う。
手を伸ばし、俺の頬を撫でながらとろりと酩酊するような声色で。
「あなたがわたくしを掴まえていたい限りは、好きでいてあげるわ」
「そこは愛してると言ってほしいのだが……」
「ふふ、言ってあげても良いけれど」
「いや、いい。言わせるだけだ」
熱を持った触り方をすればその意図を解したのだろう。
ひきつった笑みで嘘でしょうと言うが、笑ってかわすだけ。
俺の腕から逃げる元気があったのだから、もう一度くらいはできるだろう。
「ちょっと、やだ、明日起き上がれないのはまずいからやめたんでしょう!?」
「お前が思いのほか元気だからな」
じゃれるように愛撫を施せばやがて蕩けておとなしくなる。
宥めすかしているようで、許されているのは俺のほうなのだろう。
愛しているよと何度も囁けば知ってるわよと少し怒ったような、けれど甘さを含んだ声。
その響きも心地よい。何度も名前を呼ばれたくていじめてしまうのだが、やりすぎると怒られてしまうのだが。
けれどそれも愛されていると思えてしまう。
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何かかきたい感じの事があったけど書かずに放置しているあいだにそれを忘れてしまったようです。
なんだったんだろうなー。
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