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鳥籠編【塩期間編】(読まなくても問題ありません)
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何もない。
そう思えるようなものだった。
アーデルハイトとあの三人の間には恋情のようなものは無いらしい。
少なくとも、アーデルハイトには。あれらにもそういったものはないのだと思えた。
何を言うのか、という視線は少し面白かったと思う。
まぁ、そういう視線を向けられる事は予想していたし別になんとも思わない。
俺はセルデスディアの王太子で、あれらは貴族だ。たとえ他国の者であっても、その地位をしっているのならば逆らえるものではない。
それにしても、アーデルハイトだ。
俺のしたことについては何も言わない。仕方がなかったのだというように受け止めて流しているのだろう。
俺に対して怒りを見せるかとも思ったのだが、そういった事がない。
あの仕打ちに何も思わなかったということは無いようなのだが、違和感はある。
が、何かというように向けられる視線に何もと笑って返せば困ったようにするのだ。
何もなかったかのように昼食を共にし、帰ると告げれば見送りをする。
連れて帰る三人とのしばらくの別れを今は惜しんでいるのだが、昨日の事などまるでなかったかのように振る舞っているのだ。
行くぞと別れもほどほどに馬車に乗る。
三人には馬を与え、着いてこいと指示をした。俺からの指示など受けたくもないだろうが、受けざるを得ないのはわかっているのだ。
そう、昨日と同じように。
一日かけて城に戻り、話は明日すると三人を城にある部屋へと案内させるとすぐにトゥーリがやってきた。
近衛に回すことはすでに決めており、傍につける者の人選は任せると伝える。
このことはすでに予想はついていたのだろう。わかりましたとトゥーリは答えるだけだ。
それから、急ぎの仕事の対応をして眠りにつく。
ふと、結婚すればあれがいつもこの隣にいるのかと思う。それに果たして、慣れることはできるのだろうか。
だがすぐに問題ないかと思い至る。
俺の領分には踏み込んでこないだろう。頭は良いのだから、どこまではいいのかくらいはわかるだろう。
そもそも、接してこようと思わないかもしれない。それとも、それをわからないふりで何か仕掛けてくるだろうか。
どちらであっても俺にとっては問題ない。
最低限の眠りをとり、最低限の食事をとり、仕事をして。
それらが片付いた折、あの三人と再び見えた。
トゥーリから、先にこれからの話をさせておいたので状況は飲み込んでいるのだろう。
向けてくるのは敵意ではない。観察するような、何かを見定めようとするような視線だ。
こういった値踏みの視線は今までも数多受けている。しかし、それらとはどこか違うものを感じた。
「私のすることは気に入らないかもしれないが、アーデルハイトの傍に置いてやる。が、誰もが納得しなければならない。そうしてほしければ己で地位を作れ。そうでなければ後々が苦しいだろう」
特別扱いなどはしてやらない。あの女の傍にいたければ自分でどうにかしろと思うのだ。
「私から言うのはそれだけだ。お前達からは、何かあるか?」
「いえ、特には。寝床も食事も与えていただけるようなので、あとは己の力で周囲に納得していただきます。が、一つよろしいでしょうか」
「何だ?」
「家には何も言っておりませんので連絡をとりたいのですが」
「ああ。それは構わん。トゥーリに手配させる」
その他は別に話す事も無く。
あとは好きにすればいいと他の者に任せた。
しばらくして、優秀である事は自然と耳にも入ってきた。まぁ、そうでなければついてくるなどとは言わないだろう。
アーデルハイトの元には人を送り、最低限の連絡は取る。
時折、足は運んでやった。しかし顔を合わせて楽しい話をするでもなく、互いに探り合いながら牽制しあっている。
なし崩しに抱きもしたのだが、まだ強情さは取れなくてそれは面白くはあった。
しかし時間の流れは無慈悲なもので、決めた式の日は近づいてくる。
すると、国王陛下達からいつ、彼女は来るのだと問われてしまった。
そんなのは別に、式の直前でいいのではないだろうか。事前に来て色々とかき回されるのは面倒。あの女はそういった事をやるだろう。
花嫁が国に到着してそのまま式を行うというのは良くある話だ。
何にせよ、アーデルハイトについてばかり考える事などできない。
が、結婚が決まったら周囲から娘を薦められることはなくなった。それが一番の良い事だ。
煩わしいことに悩まされることもない。仕事がはかどって何よりだ。
色々とはかどれば時間もできる。そうなれば、セレンの事にももっと気を配れるようになった。
王太子なのだから、優先順位の一番は国だ。陛下の国策は下策というわけではないが、それでも手の届かぬところはある。
それをひとつずつ補っていけば、他にもと事案が浮かんできてしまうのだ。
致命傷であるようなことは今の所ないのは幸いだが、対処するのが早いに越したことは無い。
周囲は浮足立ち、式の為の準備もなされる。周囲の国からの賓客の対応、諸侯らのへの対応。
式をするので仕事が増えるのは覚悟していたが、面倒なことも多い。
臣下にすべて投げても良いが、そうも言ってはいられない。
それらの雑事を行っていると、時がたつのなどすぐの事だった。
そう思えるようなものだった。
アーデルハイトとあの三人の間には恋情のようなものは無いらしい。
少なくとも、アーデルハイトには。あれらにもそういったものはないのだと思えた。
何を言うのか、という視線は少し面白かったと思う。
まぁ、そういう視線を向けられる事は予想していたし別になんとも思わない。
俺はセルデスディアの王太子で、あれらは貴族だ。たとえ他国の者であっても、その地位をしっているのならば逆らえるものではない。
それにしても、アーデルハイトだ。
俺のしたことについては何も言わない。仕方がなかったのだというように受け止めて流しているのだろう。
俺に対して怒りを見せるかとも思ったのだが、そういった事がない。
あの仕打ちに何も思わなかったということは無いようなのだが、違和感はある。
が、何かというように向けられる視線に何もと笑って返せば困ったようにするのだ。
何もなかったかのように昼食を共にし、帰ると告げれば見送りをする。
連れて帰る三人とのしばらくの別れを今は惜しんでいるのだが、昨日の事などまるでなかったかのように振る舞っているのだ。
行くぞと別れもほどほどに馬車に乗る。
三人には馬を与え、着いてこいと指示をした。俺からの指示など受けたくもないだろうが、受けざるを得ないのはわかっているのだ。
そう、昨日と同じように。
一日かけて城に戻り、話は明日すると三人を城にある部屋へと案内させるとすぐにトゥーリがやってきた。
近衛に回すことはすでに決めており、傍につける者の人選は任せると伝える。
このことはすでに予想はついていたのだろう。わかりましたとトゥーリは答えるだけだ。
それから、急ぎの仕事の対応をして眠りにつく。
ふと、結婚すればあれがいつもこの隣にいるのかと思う。それに果たして、慣れることはできるのだろうか。
だがすぐに問題ないかと思い至る。
俺の領分には踏み込んでこないだろう。頭は良いのだから、どこまではいいのかくらいはわかるだろう。
そもそも、接してこようと思わないかもしれない。それとも、それをわからないふりで何か仕掛けてくるだろうか。
どちらであっても俺にとっては問題ない。
最低限の眠りをとり、最低限の食事をとり、仕事をして。
それらが片付いた折、あの三人と再び見えた。
トゥーリから、先にこれからの話をさせておいたので状況は飲み込んでいるのだろう。
向けてくるのは敵意ではない。観察するような、何かを見定めようとするような視線だ。
こういった値踏みの視線は今までも数多受けている。しかし、それらとはどこか違うものを感じた。
「私のすることは気に入らないかもしれないが、アーデルハイトの傍に置いてやる。が、誰もが納得しなければならない。そうしてほしければ己で地位を作れ。そうでなければ後々が苦しいだろう」
特別扱いなどはしてやらない。あの女の傍にいたければ自分でどうにかしろと思うのだ。
「私から言うのはそれだけだ。お前達からは、何かあるか?」
「いえ、特には。寝床も食事も与えていただけるようなので、あとは己の力で周囲に納得していただきます。が、一つよろしいでしょうか」
「何だ?」
「家には何も言っておりませんので連絡をとりたいのですが」
「ああ。それは構わん。トゥーリに手配させる」
その他は別に話す事も無く。
あとは好きにすればいいと他の者に任せた。
しばらくして、優秀である事は自然と耳にも入ってきた。まぁ、そうでなければついてくるなどとは言わないだろう。
アーデルハイトの元には人を送り、最低限の連絡は取る。
時折、足は運んでやった。しかし顔を合わせて楽しい話をするでもなく、互いに探り合いながら牽制しあっている。
なし崩しに抱きもしたのだが、まだ強情さは取れなくてそれは面白くはあった。
しかし時間の流れは無慈悲なもので、決めた式の日は近づいてくる。
すると、国王陛下達からいつ、彼女は来るのだと問われてしまった。
そんなのは別に、式の直前でいいのではないだろうか。事前に来て色々とかき回されるのは面倒。あの女はそういった事をやるだろう。
花嫁が国に到着してそのまま式を行うというのは良くある話だ。
何にせよ、アーデルハイトについてばかり考える事などできない。
が、結婚が決まったら周囲から娘を薦められることはなくなった。それが一番の良い事だ。
煩わしいことに悩まされることもない。仕事がはかどって何よりだ。
色々とはかどれば時間もできる。そうなれば、セレンの事にももっと気を配れるようになった。
王太子なのだから、優先順位の一番は国だ。陛下の国策は下策というわけではないが、それでも手の届かぬところはある。
それをひとつずつ補っていけば、他にもと事案が浮かんできてしまうのだ。
致命傷であるようなことは今の所ないのは幸いだが、対処するのが早いに越したことは無い。
周囲は浮足立ち、式の為の準備もなされる。周囲の国からの賓客の対応、諸侯らのへの対応。
式をするので仕事が増えるのは覚悟していたが、面倒なことも多い。
臣下にすべて投げても良いが、そうも言ってはいられない。
それらの雑事を行っていると、時がたつのなどすぐの事だった。
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