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最終章
目が覚めて
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「んっ!?」
朝、目が覚めて。
まぁ、その。変な声でるわよね、と。
私はいろんなものを飲み込んで、口押さえて、叫ぶのを堪えた。
な、なんでテオいるの!?
しかもすやすや寝てる。気持ちよさそうに、寝てる。
え、ここ、ここは私の部屋よね? うん、私の部屋。
部屋間違えた? ううん、テオはそういう事ない。
ということはつまり、自分の意志でここにいるんだと思う。
「もー……」
ちょんちょんと頬つつくけど起きない。あ、こういうの初めてじゃない?
いつも私の寝顔をテオがみていたと思う。
小さいころは、テオが起こしにきて私がやっと起きる、とかだったし。
そう思うとなんだか楽しくなってきて、私はベッドの上で足をばたばたしていた。
頬杖ついて覗きこむ。穏やかな寝顔だなぁってなんだか幸せな気分。
でも、でもねー!
「起きて、横にいたらびっくりするわ。これはマナー違反じゃないの、テオー」
「……マナー違反かな?」
「!? お、起きてたの?」
「うん、おはよ」
ふと笑い零して、閉じられていた瞳が開いて。そして笑みの形になる。
あああ、不意打ちみたいな、この、ほんと。言葉にできない気持ち。
私の心は今、満たされている。
「どこから入ったの?」
「え、窓からだけど? 開いたままで不用心だよね」
「そもそも窓から入ろうと思わないで欲しいんだけど」
「はは、ごめん。遊びに来たらすやすや寝てるから。起こすのもかわいそうかなぁって眺めてたんだよね。そしたら俺も寝ちゃってた」
「もー……」
「で、マナー違反だっけ? 今回は許してよ、うっかりだから」
「うん、まぁ……うん」
「それで、黙っているのがマナー違反? 一緒に寝ていいって聞けば良い?」
「そういう開き直りをするようになったことについて色々と問い詰めたいわ!」
わー! もう、何を言ってるのか!
あ、あのね! 私ももう17だし! そ、そういう、そういう!
い、意識しないわけないじゃない!
ちょっと腹が立ったので手近にあった枕を掴んでぼふっと顔を殴ってやる。
何するのと楽しそうな声色がして、もー! ほんとに!
「だって、さぁ……俺、帰ってきたばっかりなんだよ? 今まで我慢してた分、一緒にいたいって思うに決まってるだろ。昼間、ずっと一緒にいるのは難しそうだし」
「なんで?」
「なんでって……俺は色々、学ばないといけないことがあるからだよ」
「あっ、そっか。そうよね」
一日中、一緒にはいられない。それはわかる。わかってた。
わかってたつもりで。
テオが戻ってきたら、一緒にずっといて、楽しい事してってことしか私の中にはなくて。
うん、現実的にそうなるわけなかった。
「……そんなにしょんぼりしないでよ。ずっと一緒にいられないってわけじゃないし」
「うん。あ、じゃあ! じゃあ、夜はできる限りお茶しましょ。それで、その日のことを互いに話すの」
テオが何してたか、私は知りたいと思う。
難しい話されても困るかな、とは思うけどそういうの抜きで。ただ楽しかった事とか、何か感じた事とか。
ちょっとしたことでいいから話がしたい。一緒にいない時間の埋め合わせ、みたいな?
そう言うと良いよとテオは頷いてくれた。
「さて、俺も部屋に戻らないと。ばれたら怒られ……は、しないだろうけど。いい顔はされないかな」
じゃあまたあとでねとテオは私の頬に口付けて。
さっさと窓から出て行った。
うん。
あの、うん。
後からかーっと頬が熱くなるような。
私はベッドをぼふんと叩いた。ほっぺちゅーとか自然にしてくる。
そういうの、遠慮がなくなった、っていうか。
い、いやじゃないけどびっくりするしどう反応したらいいのかわかんないし!
そんな気持ち抱えてベッドの上でごろごろ転がって。
気持ち落ち着くまでちょっと時間がかかった。
うう、これ、身だしなみ整えて部屋から出て、朝ごはん食べるので顔合わせたらなんでもなかったようにおはようって言うんだろうなぁ……テオのそういうとこ、ずるいと思う。
そしてそれが、別に嫌じゃない私。
くそぅ、好きになったほうが負けってこういう事、言うんだろうなぁ。
のろのろと準備をして。
のろのろと部屋を出て。
そして朝ごはんを、家にいる家族、皆でそろって食べる。それは、昔から変わらない事。
私より先にきているお母様と、テオ。
「おはようございます、お母様」
「おはよう、レティ」
「……テオも、おはよう」
「おはよう」
にっこり。朝、部屋にいたなんて、そんなことなかったみたいに笑う。
あー! 本当に、ずるい!
一年会わない間にとってもずるくなってる気がする。誰にそれを教わったのか!
ガブさん!? って思ったけどガブさんこういう回りくどい性格じゃない。
どっちかというと、お兄様と似たものを感じる。
え、なにそれちょっと微妙じゃない!?
そんな、私気持ちを察しているのか、知らないふりなのかー!
どうしたのというような視線。なんでもないわよーだ。
でもこうして、テオがいる朝っていうのは。
私にとっては幸せな事なんだと、思う。
うう、なんというか、言葉に上手にできないけど。
朝、目が覚めて。
まぁ、その。変な声でるわよね、と。
私はいろんなものを飲み込んで、口押さえて、叫ぶのを堪えた。
な、なんでテオいるの!?
しかもすやすや寝てる。気持ちよさそうに、寝てる。
え、ここ、ここは私の部屋よね? うん、私の部屋。
部屋間違えた? ううん、テオはそういう事ない。
ということはつまり、自分の意志でここにいるんだと思う。
「もー……」
ちょんちょんと頬つつくけど起きない。あ、こういうの初めてじゃない?
いつも私の寝顔をテオがみていたと思う。
小さいころは、テオが起こしにきて私がやっと起きる、とかだったし。
そう思うとなんだか楽しくなってきて、私はベッドの上で足をばたばたしていた。
頬杖ついて覗きこむ。穏やかな寝顔だなぁってなんだか幸せな気分。
でも、でもねー!
「起きて、横にいたらびっくりするわ。これはマナー違反じゃないの、テオー」
「……マナー違反かな?」
「!? お、起きてたの?」
「うん、おはよ」
ふと笑い零して、閉じられていた瞳が開いて。そして笑みの形になる。
あああ、不意打ちみたいな、この、ほんと。言葉にできない気持ち。
私の心は今、満たされている。
「どこから入ったの?」
「え、窓からだけど? 開いたままで不用心だよね」
「そもそも窓から入ろうと思わないで欲しいんだけど」
「はは、ごめん。遊びに来たらすやすや寝てるから。起こすのもかわいそうかなぁって眺めてたんだよね。そしたら俺も寝ちゃってた」
「もー……」
「で、マナー違反だっけ? 今回は許してよ、うっかりだから」
「うん、まぁ……うん」
「それで、黙っているのがマナー違反? 一緒に寝ていいって聞けば良い?」
「そういう開き直りをするようになったことについて色々と問い詰めたいわ!」
わー! もう、何を言ってるのか!
あ、あのね! 私ももう17だし! そ、そういう、そういう!
い、意識しないわけないじゃない!
ちょっと腹が立ったので手近にあった枕を掴んでぼふっと顔を殴ってやる。
何するのと楽しそうな声色がして、もー! ほんとに!
「だって、さぁ……俺、帰ってきたばっかりなんだよ? 今まで我慢してた分、一緒にいたいって思うに決まってるだろ。昼間、ずっと一緒にいるのは難しそうだし」
「なんで?」
「なんでって……俺は色々、学ばないといけないことがあるからだよ」
「あっ、そっか。そうよね」
一日中、一緒にはいられない。それはわかる。わかってた。
わかってたつもりで。
テオが戻ってきたら、一緒にずっといて、楽しい事してってことしか私の中にはなくて。
うん、現実的にそうなるわけなかった。
「……そんなにしょんぼりしないでよ。ずっと一緒にいられないってわけじゃないし」
「うん。あ、じゃあ! じゃあ、夜はできる限りお茶しましょ。それで、その日のことを互いに話すの」
テオが何してたか、私は知りたいと思う。
難しい話されても困るかな、とは思うけどそういうの抜きで。ただ楽しかった事とか、何か感じた事とか。
ちょっとしたことでいいから話がしたい。一緒にいない時間の埋め合わせ、みたいな?
そう言うと良いよとテオは頷いてくれた。
「さて、俺も部屋に戻らないと。ばれたら怒られ……は、しないだろうけど。いい顔はされないかな」
じゃあまたあとでねとテオは私の頬に口付けて。
さっさと窓から出て行った。
うん。
あの、うん。
後からかーっと頬が熱くなるような。
私はベッドをぼふんと叩いた。ほっぺちゅーとか自然にしてくる。
そういうの、遠慮がなくなった、っていうか。
い、いやじゃないけどびっくりするしどう反応したらいいのかわかんないし!
そんな気持ち抱えてベッドの上でごろごろ転がって。
気持ち落ち着くまでちょっと時間がかかった。
うう、これ、身だしなみ整えて部屋から出て、朝ごはん食べるので顔合わせたらなんでもなかったようにおはようって言うんだろうなぁ……テオのそういうとこ、ずるいと思う。
そしてそれが、別に嫌じゃない私。
くそぅ、好きになったほうが負けってこういう事、言うんだろうなぁ。
のろのろと準備をして。
のろのろと部屋を出て。
そして朝ごはんを、家にいる家族、皆でそろって食べる。それは、昔から変わらない事。
私より先にきているお母様と、テオ。
「おはようございます、お母様」
「おはよう、レティ」
「……テオも、おはよう」
「おはよう」
にっこり。朝、部屋にいたなんて、そんなことなかったみたいに笑う。
あー! 本当に、ずるい!
一年会わない間にとってもずるくなってる気がする。誰にそれを教わったのか!
ガブさん!? って思ったけどガブさんこういう回りくどい性格じゃない。
どっちかというと、お兄様と似たものを感じる。
え、なにそれちょっと微妙じゃない!?
そんな、私気持ちを察しているのか、知らないふりなのかー!
どうしたのというような視線。なんでもないわよーだ。
でもこうして、テオがいる朝っていうのは。
私にとっては幸せな事なんだと、思う。
うう、なんというか、言葉に上手にできないけど。
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