転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
188 / 243
最終章

香りの導き

しおりを挟む
 悪臭騒ぎを起こすくらいには、魔術の研鑽をしたので!
 いえ、ものすごく怒られはしたんですけど。魔導師の皆さんはよくあるよくあるだったんですけど。
 それは置いといて。
 お兄様に我が家にきた手紙を持ってきてもらう。
 そこから掬い上げるのは私になじみの無い香り、という縛りを付けて。
「悪臭騒ぎには尾ひれがついていたぞ。何か怪しい薬を開発しただの殺人香だの……」
「うーん。それは強化に進化に強調やほかにも色々なのをかましたメリアさんを責めてください! そもそも私は一番の被害者です」
 さわやかーな柑橘の香りも度を過ぎるとっていうお勉強でした。
 そんなわけでちょっとずつ、香りを引き出していく。残りがを拾っていくようなイメージで。
 しばらくすると香りが一つ拾えた。
 何おかおりかなーって思うけど、これって女物の香水ではないと思う。
「お兄様、その紙とって」
「ああ」
「で、この香りを……紙に吸着! 保護!」
 と、魔術を紡ぐ。これも手掛かりになればいいんだけど。
 第一印象は甘い。何の花の香りだろう。濃くて、そしてちょっとスパイシーな感じもする。
 まったく覚えがない。
 短冊みたいな形の紙数枚に匂いをつけたので、これを殿下とデジレ様にも確認してもらおう。
 お兄様はそれをひとつとって確認してるんだけど、あれって顔してる。
 ま、まさか自分が使ってるやつなんて言わないわよね?
「どうしました?」
「いや。何か……覚えがある」
 どこでだろうかとお兄様は手の中の紙を見つめている。
 そのうちふっと思い出すかもしれないなと言ってだ。
「私はまーったく覚えがない感じです」
「ということは、お前が接触しない、もしくはあまり接触する機会がないやつってことか……」
「そんな人、たくさんいますよね」
「脅しレベルならいいんだが、本当にやられたら困る」
「手紙がきたとこ、皆そうだと思いますけど」
「ま、情報が出そろわないと何とも言えないな。ところで、いつなんだ?」
「え?」
「テオドールが帰ってくる日は」
 にやにやしながらお兄様は言って。
 ちょっとなんで知ってるの!? と、思うんだけど、テオが知らせてるのかもしれない。
「詳しい日程はわからないですけど……早ければ一週間ってとこじゃないかなって」
「だろうな。でもいろんなところに寄るだろうからちょっと遅いと思うが……ああ、アレクのお妃レースの夜会に間に合うかどうか、ってとこかな」
「ちょっとー! なんで私よりお兄様の方が知ってるんです!?」
「いや、普通に国へ連絡する定期便と合わせたらそれくらいだろ……」
 お前は何も知らないんだなとお兄様は呆れている。
 うう、そう言われてしまうとってとこだけど!
「そうだ、夜会で思い出したが、一度帰って来いと母上からの伝言だ」
「えっ、何でかな」
「夜会のドレスを作るとか言ってたぞ」
「あっ、やばい。コルセット死ぬやつだわ……」
 あああああ、と私は変な声を零す。
 仕方ない、お城のお妃様云々を取り仕切ってる人へ一時帰宅届を提出。
 それはちょっとまってればするっと通った。本当は一週間くらい前から出さないとダメなんだけど、私はお妃レースにはしょうがなく参加してるのを知ってるし。殿下からも一言、言伝してくれてたみたい。
 これ贔屓だなーって思うけど、まぁ。うん。隣にお兄様もいたし、はいはいって感じで通してくれたんだと思う。ありがとう!!
 そして私はお兄様と、そのまま家へと帰った。
 帰ったら、ですね。
「ドレスを作ると聞いて! 楽しそうなので私も混ざりにきた!」
 と、デジレ様がお母様と一緒ににこーっと笑ってまっていました。
 あっ、これ私、着せ替え人形になるやつじゃ……と思った。お兄様は、まぁがんばれよと言って私達だけを残しまた出かけた。
「レティは何色が好きかな。ピンクか? 青か?」
「この子、はっきりした色よりパステル系のほうが似合いますのよ」
 お母様とデジレ様はとても楽しそうです。
 うーん、色はともかく! デザインについては口を出したい!
 あんまり締めないやつで、と言うとそのぷにぷにのお腹には必要ですよとお母様は仰った。
 え!? そ、そんなにぷにってないけど!? ないですよ!? 普通ですよ!?
 そう思ったけどデジレ様はぷにってないので、比較されてしまったのだと思う。
 ああああ、筋肉つけたいけどつかないんだものー!
 と、色々しているとお母様が、ふと。
「あなた、香水つけてるの? いつもしない香りが……」
「あ、それはこれかと」
 と、私はさっきの紙を取り出す。お母様はすんとその香りを確かめられ、あらと。
 あんまり良い顔はされなかった。
「レティ、これはどこで?」
「色々……実験の末に」
「……これはジャジャル家御用達のものに似ているわ。使っては駄目よ」
「え、そうなんです?」
「ええ。我が家では絶対に買わない、そして使わないものです」
 まさか、お母様から答えが出てくるとは思わなかった。
 つまりあのお手紙は、ジャジャル家の誰かからってこと? いや、まだ早計かもしれない。あれがジャジャル家の香りって知ってる人が、わざと使ったのかもしれないし。
「これって誰でも買えるものなんですか? 売ってるのってうちも使ってるとこですよね」
「ええ。好んでつける銘柄というだけだから、誰でも買えるけれど……」
「そうなんですか。ふーん……」
 ということは、ここから辿ることもできるのかもしれない。
 ジャジャル家の人以外が、これ買ってたら覚えてるだろうし。調べてみる必要はあるかも。
 けど、どうやってってとこ考えるのはお兄様と殿下に丸投げかな!
 今の所、私がすべきことはお母様とデジレ様の相手。
 ひとまずその考えを隅っこにおいて、色々お付き合いした。本当にしんどかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

【完結】乙女ゲームに転生した転性者(♂→♀)は純潔を守るためバッドエンドを目指す

狸田 真 (たぬきだ まこと)
ファンタジー
 男♂だったのに、転生したら転性して性別が女♀になってしまった! しかも、乙女ゲームのヒロインだと!? 男の記憶があるのに、男と恋愛なんて出来るか!! という事で、愛(夜の営み)のない仮面夫婦バッドエンドを目指します!  主人公じゃなくて、勘違いが成長する!? 新感覚勘違いコメディファンタジー! ※現在アルファポリス限定公開作品 ※2020/9/15 完結 ※シリーズ続編有り!

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

処理中です...