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最終章
香りの導き
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悪臭騒ぎを起こすくらいには、魔術の研鑽をしたので!
いえ、ものすごく怒られはしたんですけど。魔導師の皆さんはよくあるよくあるだったんですけど。
それは置いといて。
お兄様に我が家にきた手紙を持ってきてもらう。
そこから掬い上げるのは私になじみの無い香り、という縛りを付けて。
「悪臭騒ぎには尾ひれがついていたぞ。何か怪しい薬を開発しただの殺人香だの……」
「うーん。それは強化に進化に強調やほかにも色々なのをかましたメリアさんを責めてください! そもそも私は一番の被害者です」
さわやかーな柑橘の香りも度を過ぎるとっていうお勉強でした。
そんなわけでちょっとずつ、香りを引き出していく。残りがを拾っていくようなイメージで。
しばらくすると香りが一つ拾えた。
何おかおりかなーって思うけど、これって女物の香水ではないと思う。
「お兄様、その紙とって」
「ああ」
「で、この香りを……紙に吸着! 保護!」
と、魔術を紡ぐ。これも手掛かりになればいいんだけど。
第一印象は甘い。何の花の香りだろう。濃くて、そしてちょっとスパイシーな感じもする。
まったく覚えがない。
短冊みたいな形の紙数枚に匂いをつけたので、これを殿下とデジレ様にも確認してもらおう。
お兄様はそれをひとつとって確認してるんだけど、あれって顔してる。
ま、まさか自分が使ってるやつなんて言わないわよね?
「どうしました?」
「いや。何か……覚えがある」
どこでだろうかとお兄様は手の中の紙を見つめている。
そのうちふっと思い出すかもしれないなと言ってだ。
「私はまーったく覚えがない感じです」
「ということは、お前が接触しない、もしくはあまり接触する機会がないやつってことか……」
「そんな人、たくさんいますよね」
「脅しレベルならいいんだが、本当にやられたら困る」
「手紙がきたとこ、皆そうだと思いますけど」
「ま、情報が出そろわないと何とも言えないな。ところで、いつなんだ?」
「え?」
「テオドールが帰ってくる日は」
にやにやしながらお兄様は言って。
ちょっとなんで知ってるの!? と、思うんだけど、テオが知らせてるのかもしれない。
「詳しい日程はわからないですけど……早ければ一週間ってとこじゃないかなって」
「だろうな。でもいろんなところに寄るだろうからちょっと遅いと思うが……ああ、アレクのお妃レースの夜会に間に合うかどうか、ってとこかな」
「ちょっとー! なんで私よりお兄様の方が知ってるんです!?」
「いや、普通に国へ連絡する定期便と合わせたらそれくらいだろ……」
お前は何も知らないんだなとお兄様は呆れている。
うう、そう言われてしまうとってとこだけど!
「そうだ、夜会で思い出したが、一度帰って来いと母上からの伝言だ」
「えっ、何でかな」
「夜会のドレスを作るとか言ってたぞ」
「あっ、やばい。コルセット死ぬやつだわ……」
あああああ、と私は変な声を零す。
仕方ない、お城のお妃様云々を取り仕切ってる人へ一時帰宅届を提出。
それはちょっとまってればするっと通った。本当は一週間くらい前から出さないとダメなんだけど、私はお妃レースにはしょうがなく参加してるのを知ってるし。殿下からも一言、言伝してくれてたみたい。
これ贔屓だなーって思うけど、まぁ。うん。隣にお兄様もいたし、はいはいって感じで通してくれたんだと思う。ありがとう!!
そして私はお兄様と、そのまま家へと帰った。
帰ったら、ですね。
「ドレスを作ると聞いて! 楽しそうなので私も混ざりにきた!」
と、デジレ様がお母様と一緒ににこーっと笑ってまっていました。
あっ、これ私、着せ替え人形になるやつじゃ……と思った。お兄様は、まぁがんばれよと言って私達だけを残しまた出かけた。
「レティは何色が好きかな。ピンクか? 青か?」
「この子、はっきりした色よりパステル系のほうが似合いますのよ」
お母様とデジレ様はとても楽しそうです。
うーん、色はともかく! デザインについては口を出したい!
あんまり締めないやつで、と言うとそのぷにぷにのお腹には必要ですよとお母様は仰った。
え!? そ、そんなにぷにってないけど!? ないですよ!? 普通ですよ!?
そう思ったけどデジレ様はぷにってないので、比較されてしまったのだと思う。
ああああ、筋肉つけたいけどつかないんだものー!
と、色々しているとお母様が、ふと。
「あなた、香水つけてるの? いつもしない香りが……」
「あ、それはこれかと」
と、私はさっきの紙を取り出す。お母様はすんとその香りを確かめられ、あらと。
あんまり良い顔はされなかった。
「レティ、これはどこで?」
「色々……実験の末に」
「……これはジャジャル家御用達のものに似ているわ。使っては駄目よ」
「え、そうなんです?」
「ええ。我が家では絶対に買わない、そして使わないものです」
まさか、お母様から答えが出てくるとは思わなかった。
つまりあのお手紙は、ジャジャル家の誰かからってこと? いや、まだ早計かもしれない。あれがジャジャル家の香りって知ってる人が、わざと使ったのかもしれないし。
「これって誰でも買えるものなんですか? 売ってるのってうちも使ってるとこですよね」
「ええ。好んでつける銘柄というだけだから、誰でも買えるけれど……」
「そうなんですか。ふーん……」
ということは、ここから辿ることもできるのかもしれない。
ジャジャル家の人以外が、これ買ってたら覚えてるだろうし。調べてみる必要はあるかも。
けど、どうやってってとこ考えるのはお兄様と殿下に丸投げかな!
今の所、私がすべきことはお母様とデジレ様の相手。
ひとまずその考えを隅っこにおいて、色々お付き合いした。本当にしんどかった。
いえ、ものすごく怒られはしたんですけど。魔導師の皆さんはよくあるよくあるだったんですけど。
それは置いといて。
お兄様に我が家にきた手紙を持ってきてもらう。
そこから掬い上げるのは私になじみの無い香り、という縛りを付けて。
「悪臭騒ぎには尾ひれがついていたぞ。何か怪しい薬を開発しただの殺人香だの……」
「うーん。それは強化に進化に強調やほかにも色々なのをかましたメリアさんを責めてください! そもそも私は一番の被害者です」
さわやかーな柑橘の香りも度を過ぎるとっていうお勉強でした。
そんなわけでちょっとずつ、香りを引き出していく。残りがを拾っていくようなイメージで。
しばらくすると香りが一つ拾えた。
何おかおりかなーって思うけど、これって女物の香水ではないと思う。
「お兄様、その紙とって」
「ああ」
「で、この香りを……紙に吸着! 保護!」
と、魔術を紡ぐ。これも手掛かりになればいいんだけど。
第一印象は甘い。何の花の香りだろう。濃くて、そしてちょっとスパイシーな感じもする。
まったく覚えがない。
短冊みたいな形の紙数枚に匂いをつけたので、これを殿下とデジレ様にも確認してもらおう。
お兄様はそれをひとつとって確認してるんだけど、あれって顔してる。
ま、まさか自分が使ってるやつなんて言わないわよね?
「どうしました?」
「いや。何か……覚えがある」
どこでだろうかとお兄様は手の中の紙を見つめている。
そのうちふっと思い出すかもしれないなと言ってだ。
「私はまーったく覚えがない感じです」
「ということは、お前が接触しない、もしくはあまり接触する機会がないやつってことか……」
「そんな人、たくさんいますよね」
「脅しレベルならいいんだが、本当にやられたら困る」
「手紙がきたとこ、皆そうだと思いますけど」
「ま、情報が出そろわないと何とも言えないな。ところで、いつなんだ?」
「え?」
「テオドールが帰ってくる日は」
にやにやしながらお兄様は言って。
ちょっとなんで知ってるの!? と、思うんだけど、テオが知らせてるのかもしれない。
「詳しい日程はわからないですけど……早ければ一週間ってとこじゃないかなって」
「だろうな。でもいろんなところに寄るだろうからちょっと遅いと思うが……ああ、アレクのお妃レースの夜会に間に合うかどうか、ってとこかな」
「ちょっとー! なんで私よりお兄様の方が知ってるんです!?」
「いや、普通に国へ連絡する定期便と合わせたらそれくらいだろ……」
お前は何も知らないんだなとお兄様は呆れている。
うう、そう言われてしまうとってとこだけど!
「そうだ、夜会で思い出したが、一度帰って来いと母上からの伝言だ」
「えっ、何でかな」
「夜会のドレスを作るとか言ってたぞ」
「あっ、やばい。コルセット死ぬやつだわ……」
あああああ、と私は変な声を零す。
仕方ない、お城のお妃様云々を取り仕切ってる人へ一時帰宅届を提出。
それはちょっとまってればするっと通った。本当は一週間くらい前から出さないとダメなんだけど、私はお妃レースにはしょうがなく参加してるのを知ってるし。殿下からも一言、言伝してくれてたみたい。
これ贔屓だなーって思うけど、まぁ。うん。隣にお兄様もいたし、はいはいって感じで通してくれたんだと思う。ありがとう!!
そして私はお兄様と、そのまま家へと帰った。
帰ったら、ですね。
「ドレスを作ると聞いて! 楽しそうなので私も混ざりにきた!」
と、デジレ様がお母様と一緒ににこーっと笑ってまっていました。
あっ、これ私、着せ替え人形になるやつじゃ……と思った。お兄様は、まぁがんばれよと言って私達だけを残しまた出かけた。
「レティは何色が好きかな。ピンクか? 青か?」
「この子、はっきりした色よりパステル系のほうが似合いますのよ」
お母様とデジレ様はとても楽しそうです。
うーん、色はともかく! デザインについては口を出したい!
あんまり締めないやつで、と言うとそのぷにぷにのお腹には必要ですよとお母様は仰った。
え!? そ、そんなにぷにってないけど!? ないですよ!? 普通ですよ!?
そう思ったけどデジレ様はぷにってないので、比較されてしまったのだと思う。
ああああ、筋肉つけたいけどつかないんだものー!
と、色々しているとお母様が、ふと。
「あなた、香水つけてるの? いつもしない香りが……」
「あ、それはこれかと」
と、私はさっきの紙を取り出す。お母様はすんとその香りを確かめられ、あらと。
あんまり良い顔はされなかった。
「レティ、これはどこで?」
「色々……実験の末に」
「……これはジャジャル家御用達のものに似ているわ。使っては駄目よ」
「え、そうなんです?」
「ええ。我が家では絶対に買わない、そして使わないものです」
まさか、お母様から答えが出てくるとは思わなかった。
つまりあのお手紙は、ジャジャル家の誰かからってこと? いや、まだ早計かもしれない。あれがジャジャル家の香りって知ってる人が、わざと使ったのかもしれないし。
「これって誰でも買えるものなんですか? 売ってるのってうちも使ってるとこですよね」
「ええ。好んでつける銘柄というだけだから、誰でも買えるけれど……」
「そうなんですか。ふーん……」
ということは、ここから辿ることもできるのかもしれない。
ジャジャル家の人以外が、これ買ってたら覚えてるだろうし。調べてみる必要はあるかも。
けど、どうやってってとこ考えるのはお兄様と殿下に丸投げかな!
今の所、私がすべきことはお母様とデジレ様の相手。
ひとまずその考えを隅っこにおいて、色々お付き合いした。本当にしんどかった。
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