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第五章
お説教
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はい。現場はとっても剣呑な空気です。
私の前には、お父様とお母様。
横にはお兄様。
向けられている笑顔が怖くて、何も言えません!!
「トリスタン、レティーツィア」
名前を呼ばれた瞬間、緊張する!
それはお兄様も同じだったんだと思う。
「まずは……無事に、よく帰ってきたな」
お父様は心配したんだぞと、深いため息をついた。
眉間のしわ、深いなーとちょっと違う事考えてたらお見通しなのか、ぎろっと睨まれた。ひぇっ!
「トリスタンもレティーツィアも黙って勝手に……あの置手紙を見つけた時は心臓が止まるかと思いましたのよ」
「そうだ。相談せずに行ったのは止められると思ったからだろう。確かに、知れば私たちは止めていた」
と、いうところから始まり。
長々と私たちはお説教を頂いた。これ、正座じゃなくて、良かったなと本当に思う。
正座のない文化、ありがとう!
「で、まずこの置手紙だ。レティーツィアは、まだわかる。勝手に行って申し訳ない。それから事情、自分の気持ち、ちゃんと帰ってくる意志はある。しかしトリスタン」
「はい」
「何故お前はここに、転移云々についての魔術の構築についての考察を書く」
えっ、お兄様何書いてんの。
ばしっとお父様が私達の目の前、テーブルの上に叩きつけるように出したのは、20枚くらいはある。
えっ、お兄様なんでこんなに、書いてるの。しかも字がちょっと雑。
「どんな構築で行ったのか気になるかと思って。それにこれはもう少し手を加えれば遠距離の物資輸送にも役立つかと」
そう、思いましたよねとお兄様は笑う。
あっ、これ反省のはの字もないやつだわ。さすがお兄様。さすがすぎてお父様がわなわなしている。
やめてー! お兄様これ以上煽るのやめてー!!
「確かに、興味深い物だった。これにより色々な事ができるだろうとは、思った。思ったがな」
お前はそもそも黙って行くことを悪いと思っていなかっただろう!!
そう言ってお父様はお兄様に拳骨落とした。
ゴッて鈍い音したいたい。あれはいたい!!
「って……しかし、これを見せた上でも絶対に行かせてくれなかったでしょう」
「当たり前だ、馬鹿者が」
「でも行かなければ色々と、手遅れだったんですよ、父上」
「それは、結果論だ。お前とはもう少し、話す必要があるな。この後、来なさい」
お兄様は、はいと頷くけどえー、まじかよー、行きたくないなーって雰囲気を隠さない。
お父様もそれはわかってらっしゃる様子。
そして、次に私を見た。
「お前は、勝手に行くことを申し訳ないとは思っていたようだな。行ったのは、トリスタンにそそのかされてという所もあっただろう。だが、危険な場所に行った娘を思う母の気持ちを思えば許すことはできない」
「はい……」
「それについては、私からは言うことはない。私が言いたいのはな……」
お父様は深いため息をついて、そして私の目の前に手紙をだした。
ん。
んん??
「……こちらの手紙についてだ」
えっ、ちょっ、えっ?
「私はジゼル嬢ではないのだが、ジゼル嬢あての浮かれた手紙が届いてな……ジゼル嬢のところには、私宛の手紙が届いていてな……」
「えっ、あっ、その、えっ……?」
「読んでしまったのは悪いとは思うが、しかし……こちらの私宛の内容とは、友人ゆえの気安さがあってもどうかと思うのだが?」
「んんっ、も、もしかして、わわわ、私……!」
手紙入れ間違えたー!?
えっ、うそっ! えっ、そんなはずはないと思うんだけど、えっ!?
え゛っ!?
「滞在楽しみ、遊べる、土産買ってくる……といったところか」
「ごふっ」
「私の方には勉強してくると、あるが……」
さて、どちらが本心か、なんて聞くまでもなくわかるがなとお父様は微笑んだ。
あー!! ごめんなさい!! あー!!
「で、レティーツィアは何を勉強してきたのか、私に教えてくれるかな」
「うっ、あ、あのっ。そのっ、ファンテールには美味しい物がたくさんありました!」
咄嗟に出た言葉。やばい、やってしまったと思う。
お兄様横で噴出したし。
一拍置いてにっこり笑ったお父様は――私の名前を力の限りの大声で呼んだ。
ひゃーん! ごめんなさい!!
「いなくなって無事かと心配していたところにこの手紙だ! お前……いや、お前たちは本当に!!」
「あなた、落ち着いてください。そんなに頭ごなしではこの子達、右から左ですよ」
「っ、ああ、そうだな……」
と、かーっとなったお父様をたしなめたお母様。
や、やだー、お母様の方が、怖いー!!
「レティーツィアには私からきつく言っておきましょう」
「ああ……ではトリスタン、ついてこい」
えっ、ここから別? 別なの?
お兄様は私をちらっとみた。まぁ、頑張れみたいな。
お、お兄様は怒られ慣れてるだろうけど、私は慣れてないんですよ!
部屋を出ていくお父様とお兄様。残ったお母様と私。
ぱたんと、扉の閉じる音が良く響いた。
「さて、レティーツィア」
「あっ、はい」
「旅は、楽しかったかしら?」
はい、とっても。とっても楽しかったです。
そう答えると、よかったわねとお母様は微笑んだ。
あ、あれ? あれ? これ怒られない流れ? や、やったー! お兄様ざまぁ!!
「では、私たちに心配をかけた分……罰を受けていただきましょう」
「えっ?」
「だって貴女、怒っても堪えないでしょう? 罰としてしばらく魔術に関わることを禁止します」
「!?」
「学園もしばらくお休みしてこの家にいてもらいます。ああ、ジゼル嬢は一度お呼びして、お話することを許してあげましょう。彼女も心配されていましたし」
「!!??」
「しばらくは、私と、マナーの、お勉強です」
えっ、マナーとか、今更!!
今更じゃない!!??
今更すぎて、逆に怖い!!
「貴女が他国で、しっかりと我が国の令嬢として恥じぬような動きができていたのか……それを確認させていただきますわ」
私が納得できるほどならば良いのですけど、とお母様は微笑む。
えっ、あの、最低限は大丈夫、だと思う、けども。
でもお母様が求めてるのはそれより高いレベルなのだと察した。
「楽しみね」
柔らかにほほ笑むお母様。
私は楽しみではありません。
私の前には、お父様とお母様。
横にはお兄様。
向けられている笑顔が怖くて、何も言えません!!
「トリスタン、レティーツィア」
名前を呼ばれた瞬間、緊張する!
それはお兄様も同じだったんだと思う。
「まずは……無事に、よく帰ってきたな」
お父様は心配したんだぞと、深いため息をついた。
眉間のしわ、深いなーとちょっと違う事考えてたらお見通しなのか、ぎろっと睨まれた。ひぇっ!
「トリスタンもレティーツィアも黙って勝手に……あの置手紙を見つけた時は心臓が止まるかと思いましたのよ」
「そうだ。相談せずに行ったのは止められると思ったからだろう。確かに、知れば私たちは止めていた」
と、いうところから始まり。
長々と私たちはお説教を頂いた。これ、正座じゃなくて、良かったなと本当に思う。
正座のない文化、ありがとう!
「で、まずこの置手紙だ。レティーツィアは、まだわかる。勝手に行って申し訳ない。それから事情、自分の気持ち、ちゃんと帰ってくる意志はある。しかしトリスタン」
「はい」
「何故お前はここに、転移云々についての魔術の構築についての考察を書く」
えっ、お兄様何書いてんの。
ばしっとお父様が私達の目の前、テーブルの上に叩きつけるように出したのは、20枚くらいはある。
えっ、お兄様なんでこんなに、書いてるの。しかも字がちょっと雑。
「どんな構築で行ったのか気になるかと思って。それにこれはもう少し手を加えれば遠距離の物資輸送にも役立つかと」
そう、思いましたよねとお兄様は笑う。
あっ、これ反省のはの字もないやつだわ。さすがお兄様。さすがすぎてお父様がわなわなしている。
やめてー! お兄様これ以上煽るのやめてー!!
「確かに、興味深い物だった。これにより色々な事ができるだろうとは、思った。思ったがな」
お前はそもそも黙って行くことを悪いと思っていなかっただろう!!
そう言ってお父様はお兄様に拳骨落とした。
ゴッて鈍い音したいたい。あれはいたい!!
「って……しかし、これを見せた上でも絶対に行かせてくれなかったでしょう」
「当たり前だ、馬鹿者が」
「でも行かなければ色々と、手遅れだったんですよ、父上」
「それは、結果論だ。お前とはもう少し、話す必要があるな。この後、来なさい」
お兄様は、はいと頷くけどえー、まじかよー、行きたくないなーって雰囲気を隠さない。
お父様もそれはわかってらっしゃる様子。
そして、次に私を見た。
「お前は、勝手に行くことを申し訳ないとは思っていたようだな。行ったのは、トリスタンにそそのかされてという所もあっただろう。だが、危険な場所に行った娘を思う母の気持ちを思えば許すことはできない」
「はい……」
「それについては、私からは言うことはない。私が言いたいのはな……」
お父様は深いため息をついて、そして私の目の前に手紙をだした。
ん。
んん??
「……こちらの手紙についてだ」
えっ、ちょっ、えっ?
「私はジゼル嬢ではないのだが、ジゼル嬢あての浮かれた手紙が届いてな……ジゼル嬢のところには、私宛の手紙が届いていてな……」
「えっ、あっ、その、えっ……?」
「読んでしまったのは悪いとは思うが、しかし……こちらの私宛の内容とは、友人ゆえの気安さがあってもどうかと思うのだが?」
「んんっ、も、もしかして、わわわ、私……!」
手紙入れ間違えたー!?
えっ、うそっ! えっ、そんなはずはないと思うんだけど、えっ!?
え゛っ!?
「滞在楽しみ、遊べる、土産買ってくる……といったところか」
「ごふっ」
「私の方には勉強してくると、あるが……」
さて、どちらが本心か、なんて聞くまでもなくわかるがなとお父様は微笑んだ。
あー!! ごめんなさい!! あー!!
「で、レティーツィアは何を勉強してきたのか、私に教えてくれるかな」
「うっ、あ、あのっ。そのっ、ファンテールには美味しい物がたくさんありました!」
咄嗟に出た言葉。やばい、やってしまったと思う。
お兄様横で噴出したし。
一拍置いてにっこり笑ったお父様は――私の名前を力の限りの大声で呼んだ。
ひゃーん! ごめんなさい!!
「いなくなって無事かと心配していたところにこの手紙だ! お前……いや、お前たちは本当に!!」
「あなた、落ち着いてください。そんなに頭ごなしではこの子達、右から左ですよ」
「っ、ああ、そうだな……」
と、かーっとなったお父様をたしなめたお母様。
や、やだー、お母様の方が、怖いー!!
「レティーツィアには私からきつく言っておきましょう」
「ああ……ではトリスタン、ついてこい」
えっ、ここから別? 別なの?
お兄様は私をちらっとみた。まぁ、頑張れみたいな。
お、お兄様は怒られ慣れてるだろうけど、私は慣れてないんですよ!
部屋を出ていくお父様とお兄様。残ったお母様と私。
ぱたんと、扉の閉じる音が良く響いた。
「さて、レティーツィア」
「あっ、はい」
「旅は、楽しかったかしら?」
はい、とっても。とっても楽しかったです。
そう答えると、よかったわねとお母様は微笑んだ。
あ、あれ? あれ? これ怒られない流れ? や、やったー! お兄様ざまぁ!!
「では、私たちに心配をかけた分……罰を受けていただきましょう」
「えっ?」
「だって貴女、怒っても堪えないでしょう? 罰としてしばらく魔術に関わることを禁止します」
「!?」
「学園もしばらくお休みしてこの家にいてもらいます。ああ、ジゼル嬢は一度お呼びして、お話することを許してあげましょう。彼女も心配されていましたし」
「!!??」
「しばらくは、私と、マナーの、お勉強です」
えっ、マナーとか、今更!!
今更じゃない!!??
今更すぎて、逆に怖い!!
「貴女が他国で、しっかりと我が国の令嬢として恥じぬような動きができていたのか……それを確認させていただきますわ」
私が納得できるほどならば良いのですけど、とお母様は微笑む。
えっ、あの、最低限は大丈夫、だと思う、けども。
でもお母様が求めてるのはそれより高いレベルなのだと察した。
「楽しみね」
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私は楽しみではありません。
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