転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
181 / 243
第五章

お説教

しおりを挟む
 はい。現場はとっても剣呑な空気です。
 私の前には、お父様とお母様。
 横にはお兄様。
 向けられている笑顔が怖くて、何も言えません!!
「トリスタン、レティーツィア」
 名前を呼ばれた瞬間、緊張する!
 それはお兄様も同じだったんだと思う。
「まずは……無事に、よく帰ってきたな」
 お父様は心配したんだぞと、深いため息をついた。
 眉間のしわ、深いなーとちょっと違う事考えてたらお見通しなのか、ぎろっと睨まれた。ひぇっ!
「トリスタンもレティーツィアも黙って勝手に……あの置手紙を見つけた時は心臓が止まるかと思いましたのよ」
「そうだ。相談せずに行ったのは止められると思ったからだろう。確かに、知れば私たちは止めていた」
 と、いうところから始まり。
 長々と私たちはお説教を頂いた。これ、正座じゃなくて、良かったなと本当に思う。
 正座のない文化、ありがとう!
「で、まずこの置手紙だ。レティーツィアは、まだわかる。勝手に行って申し訳ない。それから事情、自分の気持ち、ちゃんと帰ってくる意志はある。しかしトリスタン」
「はい」
「何故お前はここに、転移云々についての魔術の構築についての考察を書く」
 えっ、お兄様何書いてんの。
 ばしっとお父様が私達の目の前、テーブルの上に叩きつけるように出したのは、20枚くらいはある。
 えっ、お兄様なんでこんなに、書いてるの。しかも字がちょっと雑。
「どんな構築で行ったのか気になるかと思って。それにこれはもう少し手を加えれば遠距離の物資輸送にも役立つかと」
 そう、思いましたよねとお兄様は笑う。
 あっ、これ反省のはの字もないやつだわ。さすがお兄様。さすがすぎてお父様がわなわなしている。
 やめてー! お兄様これ以上煽るのやめてー!!
「確かに、興味深い物だった。これにより色々な事ができるだろうとは、思った。思ったがな」
 お前はそもそも黙って行くことを悪いと思っていなかっただろう!!
 そう言ってお父様はお兄様に拳骨落とした。
 ゴッて鈍い音したいたい。あれはいたい!!
「って……しかし、これを見せた上でも絶対に行かせてくれなかったでしょう」
「当たり前だ、馬鹿者が」
「でも行かなければ色々と、手遅れだったんですよ、父上」
「それは、結果論だ。お前とはもう少し、話す必要があるな。この後、来なさい」
 お兄様は、はいと頷くけどえー、まじかよー、行きたくないなーって雰囲気を隠さない。
 お父様もそれはわかってらっしゃる様子。
 そして、次に私を見た。
「お前は、勝手に行くことを申し訳ないとは思っていたようだな。行ったのは、トリスタンにそそのかされてという所もあっただろう。だが、危険な場所に行った娘を思う母の気持ちを思えば許すことはできない」
「はい……」
「それについては、私からは言うことはない。私が言いたいのはな……」
 お父様は深いため息をついて、そして私の目の前に手紙をだした。
 ん。
 んん??
「……こちらの手紙についてだ」
 えっ、ちょっ、えっ?
「私はジゼル嬢ではないのだが、ジゼル嬢あての浮かれた手紙が届いてな……ジゼル嬢のところには、私宛の手紙が届いていてな……」
「えっ、あっ、その、えっ……?」
「読んでしまったのは悪いとは思うが、しかし……こちらの私宛の内容とは、友人ゆえの気安さがあってもどうかと思うのだが?」
「んんっ、も、もしかして、わわわ、私……!」
 手紙入れ間違えたー!?
 えっ、うそっ! えっ、そんなはずはないと思うんだけど、えっ!?
 え゛っ!?
「滞在楽しみ、遊べる、土産買ってくる……といったところか」
「ごふっ」
「私の方には勉強してくると、あるが……」
 さて、どちらが本心か、なんて聞くまでもなくわかるがなとお父様は微笑んだ。
 あー!! ごめんなさい!! あー!!
「で、レティーツィアは何を勉強してきたのか、私に教えてくれるかな」
「うっ、あ、あのっ。そのっ、ファンテールには美味しい物がたくさんありました!」
 咄嗟に出た言葉。やばい、やってしまったと思う。
 お兄様横で噴出したし。
 一拍置いてにっこり笑ったお父様は――私の名前を力の限りの大声で呼んだ。
 ひゃーん! ごめんなさい!!
「いなくなって無事かと心配していたところにこの手紙だ! お前……いや、お前たちは本当に!!」
「あなた、落ち着いてください。そんなに頭ごなしではこの子達、右から左ですよ」
「っ、ああ、そうだな……」
 と、かーっとなったお父様をたしなめたお母様。
 や、やだー、お母様の方が、怖いー!!
「レティーツィアには私からきつく言っておきましょう」
「ああ……ではトリスタン、ついてこい」
 えっ、ここから別? 別なの?
 お兄様は私をちらっとみた。まぁ、頑張れみたいな。
 お、お兄様は怒られ慣れてるだろうけど、私は慣れてないんですよ!
 部屋を出ていくお父様とお兄様。残ったお母様と私。
 ぱたんと、扉の閉じる音が良く響いた。
「さて、レティーツィア」
「あっ、はい」
「旅は、楽しかったかしら?」
 はい、とっても。とっても楽しかったです。
 そう答えると、よかったわねとお母様は微笑んだ。
 あ、あれ? あれ? これ怒られない流れ? や、やったー! お兄様ざまぁ!!
「では、私たちに心配をかけた分……罰を受けていただきましょう」
「えっ?」
「だって貴女、怒っても堪えないでしょう? 罰としてしばらく魔術に関わることを禁止します」
「!?」
「学園もしばらくお休みしてこの家にいてもらいます。ああ、ジゼル嬢は一度お呼びして、お話することを許してあげましょう。彼女も心配されていましたし」
「!!??」
「しばらくは、私と、マナーの、お勉強です」
 えっ、マナーとか、今更!!
 今更じゃない!!??
 今更すぎて、逆に怖い!!
「貴女が他国で、しっかりと我が国の令嬢として恥じぬような動きができていたのか……それを確認させていただきますわ」
 私が納得できるほどならば良いのですけど、とお母様は微笑む。
 えっ、あの、最低限は大丈夫、だと思う、けども。
 でもお母様が求めてるのはそれより高いレベルなのだと察した。
「楽しみね」
 柔らかにほほ笑むお母様。
 私は楽しみではありません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

【完結】乙女ゲームに転生した転性者(♂→♀)は純潔を守るためバッドエンドを目指す

狸田 真 (たぬきだ まこと)
ファンタジー
 男♂だったのに、転生したら転性して性別が女♀になってしまった! しかも、乙女ゲームのヒロインだと!? 男の記憶があるのに、男と恋愛なんて出来るか!! という事で、愛(夜の営み)のない仮面夫婦バッドエンドを目指します!  主人公じゃなくて、勘違いが成長する!? 新感覚勘違いコメディファンタジー! ※現在アルファポリス限定公開作品 ※2020/9/15 完結 ※シリーズ続編有り!

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...