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第五章
新しい場所
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「それじゃ、先に帰るから」
「殿下ー! お父様へとジゼルちゃんへのお手紙よろしくお願いします!」
「うん、任された」
ちなみに私達からのお手紙と一緒に、お父様にはガブさんとミカエラ様からの一筆もついている。
他国の王族から預かるねって内容の手紙きたら黙るしかないよね!!
……怒られる未来は回避できないと思うけど。
「それからデジレ様は、お酒はほどほどに!!」
「えー? 私はそんなに飲んでいたか?」
「飲んでました」
「はい」
「姉上、酒癖の悪さをそろそろ自覚してください」
えー、と言いながらデジレ様はお兄様に向き直って笑いかける。
「先に帰って、待ってる」
「ああ」
「……それだけか?」
しばらく会えないんだぞ、いいのか? いいのか? と。
デジレ様はお兄様を煽っている。
あー、それ、あー。反応ないなぁと思って調子に乗ってると最後に一発、でかい仕返しをもらうやつですよ。
私がよくされるやつ。そう思って生暖かく見守っていたんだけど、そろそろだなぁと思った。
お兄様、めっちゃ、いい笑顔。
「俺がいなくてそわそわするのは、デジレのほうだろ?」
意地悪笑顔を向けて、あーここから先はきっと私達、見ない方がいいんだろうなぁとそっと視線を逸らせる。
私もテオも殿下も、ガブさんも。
二人の方は向かないようにしようと背中向けた。
うん。
何かわきゃわきゃ言ってるけど! こっちにばれないように小声だけど!
いちゃついてるのは! わかるから!!
ということでしばらく待つと、お兄様がもういいぞと楽しそうな声を向けてきて。
あっ、これはちゅーくらいはしたな、と私は思う。
デジレ様顔真っ赤だし! お兄様超ご機嫌だし!
そんなわけでお別れも終わったので、馬車にのる殿下とデジレ様をお見送りー!
馬車が小さくなって、見えなくなるまで見送って。
「じゃ、こっち乗って」
ガブさんが自分の持ち馬車を示した。なお護衛つき。
「今から出発すると、夕方着くらいかなぁ……夕飯は屋台とか行こうか」
「屋台!!」
「トリスタン様は、お酒飲まないでくださいね」
「は? 俺が酔うわけないだろう?」
「いやいやいや、お兄様、酔ってましたよ。絶対酔ってましたよ!?」
「えっ、トリスタンに飲ませた? うわぁ……」
ガブさんがそれやっちゃだめだろ、みたいな表情で。
そういう顔するってことは、知ってたってこと。
「ある一定以上飲むと、こいつ酔ってないって言うし記憶に残らないから気を付けて」
「酒を飲んでいた時のことは全部覚えてるが?」
「…………」
「…………」
私とテオは黙る。
ここで昨日の惨事をあげてしまってもいいけど後が怖い。
私達は黙っているのが利口、って言うのを知ってる!
「でもその一定以上ってボトル3本くらい一人で開けたくらいなんだよな……どれだけ飲んだんだよ……」
「さぁ……デジレに飲まされたのは覚えてるが、そこまで飲んでない」
「飲んでましたよ……」
「飲んでたじゃない……」
とりあえず、お酒与えないようにしようと私たちは思ったのだ。
で、馬車の中で四人でわちゃわちゃ騒いで遊びつつ、夕暮れ頃に滞在する街が見えてきました。
「わー! 海ー!! すごーい!!」
くんくんと空気の匂い嗅げば潮の匂い!!
「ちなみに滞在するのはあそこ」
と、ガブさんが指さしてくれたのは街から少し離れた場所にある屋敷。
木々に囲まれてるけど、屋敷があるのはわかる。そして目の前は海でプライベートビーチもあるという。
なにそれー!!!
まだちょっと泳げる時期じゃないけど、なにそれー!!!
「ガブさん、本当に皇族だったんだなって今すごく、感じてる……」
そんな私の呟きを笑って、屋敷に行く前に先に街に行こうかという提案をしてくれた。
いくいく!!
街の中に入ると首都と同じくらいの賑わい。すごい。活気にあふれてる。
「ここにも屋台街があるの?」
「というか、どこでもあるかな」
「えっ、な、なにそれ。なにそれうらやましい……」
「あー……あっちは、そういうのなかったな」
時々街に出て遊んでたけど、屋台街なくてちょっと残念だったとガブさんは言う。
その代り、ちょっとおしゃれなカフェとか多いよな、と。
そう、カフェとかケーキ、そういうお店はすごく多い。
出店みたいなのがないわけじゃないけど、サンドイッチとか、そういう感じで。
こっちみたいな露店! 屋台! いいにおい! ふぎゃあ!!
みたいな感じなのは、ない。
くっ、ちょっと殿下とデジレ様頑張って作って……じゃんくなもの美味しい。
「レティのその食に対する執念はなんなの……」
「だって! 美味しい物食べたいじゃない!?」
「じゃあそう思うの、自分で作ればいいのに……」
「そうなんだけど。家でそんなことしたら、調理場の皆が倒れちゃうじゃない?」
確かに、とテオは頷く。
貴族の子女がご飯作る、なんてないもの。ガブさんとこでちょいちょいできたのはちょっと楽しかった。
うーん、でも作りたい。お父様にお願い……帰ってすぐは無理かな。
いや、でもファンテールでこういうのを見て美味しかったからお父様にも作ってあげたいとかそういう方向でせめて、怒りも緩和できるようにすれば……案外いい作戦かもしれない。
しかし、今はそれより目の前の!!
そんなこんなで街についたら馬車降りて!
屋台街楽しみすぎる!!
早く行こうと言う前に、テオに手を握られた。
言わんとすることは、レティ、はしゃぎすぎて迷子にならないでね、あたりだろう。
あっ、はい。わかってますとこくこくと私は頷いた。
「殿下ー! お父様へとジゼルちゃんへのお手紙よろしくお願いします!」
「うん、任された」
ちなみに私達からのお手紙と一緒に、お父様にはガブさんとミカエラ様からの一筆もついている。
他国の王族から預かるねって内容の手紙きたら黙るしかないよね!!
……怒られる未来は回避できないと思うけど。
「それからデジレ様は、お酒はほどほどに!!」
「えー? 私はそんなに飲んでいたか?」
「飲んでました」
「はい」
「姉上、酒癖の悪さをそろそろ自覚してください」
えー、と言いながらデジレ様はお兄様に向き直って笑いかける。
「先に帰って、待ってる」
「ああ」
「……それだけか?」
しばらく会えないんだぞ、いいのか? いいのか? と。
デジレ様はお兄様を煽っている。
あー、それ、あー。反応ないなぁと思って調子に乗ってると最後に一発、でかい仕返しをもらうやつですよ。
私がよくされるやつ。そう思って生暖かく見守っていたんだけど、そろそろだなぁと思った。
お兄様、めっちゃ、いい笑顔。
「俺がいなくてそわそわするのは、デジレのほうだろ?」
意地悪笑顔を向けて、あーここから先はきっと私達、見ない方がいいんだろうなぁとそっと視線を逸らせる。
私もテオも殿下も、ガブさんも。
二人の方は向かないようにしようと背中向けた。
うん。
何かわきゃわきゃ言ってるけど! こっちにばれないように小声だけど!
いちゃついてるのは! わかるから!!
ということでしばらく待つと、お兄様がもういいぞと楽しそうな声を向けてきて。
あっ、これはちゅーくらいはしたな、と私は思う。
デジレ様顔真っ赤だし! お兄様超ご機嫌だし!
そんなわけでお別れも終わったので、馬車にのる殿下とデジレ様をお見送りー!
馬車が小さくなって、見えなくなるまで見送って。
「じゃ、こっち乗って」
ガブさんが自分の持ち馬車を示した。なお護衛つき。
「今から出発すると、夕方着くらいかなぁ……夕飯は屋台とか行こうか」
「屋台!!」
「トリスタン様は、お酒飲まないでくださいね」
「は? 俺が酔うわけないだろう?」
「いやいやいや、お兄様、酔ってましたよ。絶対酔ってましたよ!?」
「えっ、トリスタンに飲ませた? うわぁ……」
ガブさんがそれやっちゃだめだろ、みたいな表情で。
そういう顔するってことは、知ってたってこと。
「ある一定以上飲むと、こいつ酔ってないって言うし記憶に残らないから気を付けて」
「酒を飲んでいた時のことは全部覚えてるが?」
「…………」
「…………」
私とテオは黙る。
ここで昨日の惨事をあげてしまってもいいけど後が怖い。
私達は黙っているのが利口、って言うのを知ってる!
「でもその一定以上ってボトル3本くらい一人で開けたくらいなんだよな……どれだけ飲んだんだよ……」
「さぁ……デジレに飲まされたのは覚えてるが、そこまで飲んでない」
「飲んでましたよ……」
「飲んでたじゃない……」
とりあえず、お酒与えないようにしようと私たちは思ったのだ。
で、馬車の中で四人でわちゃわちゃ騒いで遊びつつ、夕暮れ頃に滞在する街が見えてきました。
「わー! 海ー!! すごーい!!」
くんくんと空気の匂い嗅げば潮の匂い!!
「ちなみに滞在するのはあそこ」
と、ガブさんが指さしてくれたのは街から少し離れた場所にある屋敷。
木々に囲まれてるけど、屋敷があるのはわかる。そして目の前は海でプライベートビーチもあるという。
なにそれー!!!
まだちょっと泳げる時期じゃないけど、なにそれー!!!
「ガブさん、本当に皇族だったんだなって今すごく、感じてる……」
そんな私の呟きを笑って、屋敷に行く前に先に街に行こうかという提案をしてくれた。
いくいく!!
街の中に入ると首都と同じくらいの賑わい。すごい。活気にあふれてる。
「ここにも屋台街があるの?」
「というか、どこでもあるかな」
「えっ、な、なにそれ。なにそれうらやましい……」
「あー……あっちは、そういうのなかったな」
時々街に出て遊んでたけど、屋台街なくてちょっと残念だったとガブさんは言う。
その代り、ちょっとおしゃれなカフェとか多いよな、と。
そう、カフェとかケーキ、そういうお店はすごく多い。
出店みたいなのがないわけじゃないけど、サンドイッチとか、そういう感じで。
こっちみたいな露店! 屋台! いいにおい! ふぎゃあ!!
みたいな感じなのは、ない。
くっ、ちょっと殿下とデジレ様頑張って作って……じゃんくなもの美味しい。
「レティのその食に対する執念はなんなの……」
「だって! 美味しい物食べたいじゃない!?」
「じゃあそう思うの、自分で作ればいいのに……」
「そうなんだけど。家でそんなことしたら、調理場の皆が倒れちゃうじゃない?」
確かに、とテオは頷く。
貴族の子女がご飯作る、なんてないもの。ガブさんとこでちょいちょいできたのはちょっと楽しかった。
うーん、でも作りたい。お父様にお願い……帰ってすぐは無理かな。
いや、でもファンテールでこういうのを見て美味しかったからお父様にも作ってあげたいとかそういう方向でせめて、怒りも緩和できるようにすれば……案外いい作戦かもしれない。
しかし、今はそれより目の前の!!
そんなこんなで街についたら馬車降りて!
屋台街楽しみすぎる!!
早く行こうと言う前に、テオに手を握られた。
言わんとすることは、レティ、はしゃぎすぎて迷子にならないでね、あたりだろう。
あっ、はい。わかってますとこくこくと私は頷いた。
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