転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

余裕

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「おにいさまー」
 窓をこつんと叩けば気づく。
 特に魔術も何もないんで大丈夫。監視もなさそうなので私は鍵を開けてもらって、中にはいった。
 そして遮音の魔術ー。うすーくうすーく。気付かれないような精度で。
「御無事でとかはさておいて、魔術阻害されてますよね」
「これのせいだな」
 そう言って見せてくれたのは腕輪。あー、それいろんなものを遮断してる感すごい。
「他の奴らは」
「地下にいることを確認済みです。どうします?」
「あっちも魔術は使えなさそうだからな。俺も魔石は取られたし」
 とられる前に、全部使えないようにしたけどなとお兄様は仰る。
 高かったのに、チッ! みたいなそんな感じ。
「だと思ったので、魔石です。殿下達がこれ投げてぶっぱして助けてこいとかいうんで」
「やればいいのに」
「……デジレ様自らやる気だったと聞いてもそれを言いますか」
「いや、言わない」
 ですよね!
 そんなわけで魔石をじゃらーっと渡しました。
 お兄さまには、明日の式典にガブさんがついていくことを伝えた。
 そしてこれから皇太子様のとこにもいってお手紙を渡してくることも。
「そうか、じゃあ……ついでに証拠の一つくらいとってこい」
「えー、無理」
「できるだろ」
「いやいや……何かあったら、ですね」
「あのな、レティ。今自由に動けるのは、お前だけだからな」
「え?」
「俺は魔術が使えない。アレクとデジレはそもそも、動いたら駄目だ。ガブは守るべき対象になる」
 はい、と私は頷く。
 そうか、私だけかー。
「だとしたら、多少派手にやってもいい」
「さっきのと今の我繋がりません」
「派手にやって、かき回せばいい」
「話聞いてます?」
「お前が囮だ。その間にどうにかする」
 ああ、そういう。
「つまり、私が派手にひゃっほうしてると、私に目が向くので、ガブさんたちの方から視線をそらすことができるし、お兄様もその一瞬のすきをついてなにかやるってことですね」
 そうとお兄様は頷く。大分わかってきたな、と。
 あんまりわかりたく、ないです!
「だからな」
 と、私は明日に合わせての作戦をお兄様から頂いた。
 一言で言おう。
 あくどい!!!
「えっ、ほ、本当にやっていいんです? さ、さすがにお屋敷一件ぱーんとか私はそんな恐ろしいことをできないんですけど」
「できるだろ。庭とかでいいんだよ、でかい穴開けてな」
 そうやって騒いでる間に、俺は扉を蹴破って残りを助けてくる。外に出れば剣の一本でもあるだろうとお兄様は笑う。
 ひー、この人こわい。
 何か起きれば、地下の奴らも察する。だから派手に、というのがお兄様の命令だ。
 あとそれは、この屋敷の主が式典に出かけた後に、と。
「えー、でも私、殺すとか何とか聞いてるんですけど明日まで猶予あります?」
「ある。あの手のやつらは工作をしてからと思ってる。それに式典が明日あるのに、死体の片付けとかなんとかするのは面倒だろう」
「まぁ、そうですね」
「俺は屋敷の主とあった。どうやら俺は、盗賊か何かに捕まっていたところを、部下が助け出して保護した。今、国に連絡を入れている、という設定になるらしい」
 俺にしゃべらせない、制約をかける。そういった魔術を使う気なのだろうが、俺は耐性もある。
 それにそういう事ができるのは力のある魔術師、簡単にできることじゃないとお兄様は続けた。
 確かに。
 私、そういうのしようとまず、思わないけど……人の意識をいじるってことでしょ?
 それは、転移以上にやばいことだと思う。
 催眠術とか、あるにはあるけどこのお兄様がそれにかかる?
 かからないよねーって感じだし。
「大事にもしたくないだろうからな。そうなれば、自分の手のもの以外が入ってくる。すると、色んな事が露見する」
「なるほど……じゃあ、明日豪華な馬車が出発したら、私が庭から爆破していきますね」
「ああ」
「あ、それと、お兄様」
 手をと私は言う。
 いけるかな、どうかなー。全部切ってる腕輪に触ってちょっと魔力を流してみる。
 おう、すごい。すいとられる。これ、魔力使うと吸い取って、排出? して使わせないようにしてるんだなと触ってみてわかった。
 でも、キャパオーバーはなんでもあるよね!
「……お兄様、私、多分これ壊せます」
 今やると、私がいるのがばれちゃうのでよろしくない。
 でも明日、庭ちゅどーんの後になら、やっても問題ないはず。
 お兄様はお前は本当に規格外だなぁと笑って、明日は任せたと私の頭を乱暴に混ぜ繰り返した。
「まぁ、余裕はあるから大丈夫だ。あまり、こういった策謀は上手じゃないようだしな」
「そうなんです?」
「ああ、本当に、どうしてもハメたい相手の陣営の相手をこうして捕まえたなら、俺なら即、首を撥ねる。よっぽど使える相手じゃなけりゃ確保しておく意味なんてないからな」
「ひー」
 や、やだー! 絶対的に回したくないー!!
 お兄様はにぃと笑って、大丈夫だと仰る。その姿を見ると、本当に大丈夫なんだと思えてくるのが恐ろしい。
 本当に、恐ろしいのだけど――頼りには、なると思う。
「よし、レティ。行け、地下の奴らの命くらいは俺が朝までどうにか守ってやる」
 自信たっぷりの言葉。私はそれにこくこくと頷いた。
「だから、下手な気を起してちょっと様子を見てこようとか――思うなよ」
「う、はい。わかりました」
 お兄様は私を送り出す。私はまだやらなきゃいけないことがあるから、今度は王宮へと飛んだ。
 そわそわするけど、自分のできることをやらないといけないし。
 私は再び、王宮の皇太子様、ミカエラ様の所にやってきた。
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