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第三章
やりたいこと、やれること
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「ジゼルちゃんおはよう!」
「おはよう、レティ」
ぱぁんと扉あけて現れた私にジゼルちゃんは瞬いたのだがすぐにいつもの笑顔。
思えば私、昨日はあのふかふかのお胸で存分に泣きまくった気もする。う、うろおぼえ!
「えっと……昨日は、ありがとう」
「いえ。もう大丈夫そうですね」
「うん、寂しいって喚いてるだけじゃだめだし」
私はテオをびっくりさせてやるのよ、と言うとジゼルちゃんはそうですかと、なんだか私がこうなるのをわかっていたような。
そんな表情だ。
「それで、どうするんです?」
「うん。えっと……とりあえず、朝ごはんかな!」
私達は連れだって朝食とって、支度整えていつも通り学校へ。
いつもならおはようと聞こえる声がないのはやっぱり寂しいのだけど、ぐだぐだしてられないわ。
勉学エトセトラ、いつもの一日だ。
いつもの一日だけど、やっぱり違う。いないことがしんどい。
今、何してるかなぁと思ってしまう。
ちょっと休憩とばかりにジゼルちゃんとカフェテラスでお茶をしてのんびり。
お茶おいしい。
けど、ここにいると誰かがやってくるのは常だ。
まぁ、お兄様なんですけど! そして殿下も一緒なんですけど!
挨拶もそこそこ、お兄様と殿下は同席してくる。
「ガブのやつが色々土産をあそこに置いていっててな。あれはお前にしかどうにかできないだろ」
「え、それは食材ですか!」
そうだとお兄様は頷く。
捨てるのももったいない。しかし、あれを寮の調理場に預けるのもなということで私の出番とのこと。
どうやら今夜はそこでご飯作りになりそうだ。料理とかしたことないんだけど、前世知識がんばれというところ。
ジゼルちゃんも一緒に食べようとなり、今晩がちょっと楽しみだ。
ということは、だ。
多分、人に聞かれたくない話とかもしちゃうんだろうなぁ、と思う。
「空元気かと思ったがそうでもないみたいだな」
「え?」
「テオドールがいなくて寂しいって昨日」
「あー! そ、それはそうだけど! そうだけど、大丈夫です! やりたいことができたので!」
「やりたいこと? なんだ、言ってみろよ」
「それは俺も気になるな」
「そういえば、朝のお話がまだでしたね」
と、お兄様と殿下が食いついてきたのにジゼルちゃんが援護をしてしまったので。
私はここでその話をしなくてはいけなくなった。
いや、簡単に言うと魔術ですごいことしてテオをびっくりさせちゃうぞ、ってだけなんだけど。
なんだかそう言うと馬鹿か、みたいな呆れられた視線を向けられそうなので色々こじつけて話すことにした。
「テオが勉強しにいくっていうなら私ものほほんとしてるんじゃなくて、何か勉強しようと思って。それで、色々考えて上手にできるの魔術だから、それを突き詰めてみようかな、と」
「……まずそこで一ついいたいのが、お前に突き詰めるは無理だと俺は思う」
「うぐっ、な、なんでですか!」
「お前の魔術は自由すぎる。多分、壁も底もないだろうと俺が思うからだ。まぁ、いいんじゃないか」
おや、お兄様はするっと背を押してくださるようだ。
ひぇー、これもなんかおっそろしいんですけど。
「それなら俺も力になれるかな。王族に使える魔術師達と会えるようにしてあげるよ」
きっと色んな発見があるだろうと殿下はにこにこ笑む。
その笑みの裏側にも何かありそうな気がしているのですが!!
「そのついでに姉上の話し相手にもなってくれると嬉しい」
「デジレ様の、ですか?」
「ああ、こいつの話しかしなくて俺はもう聞きたくない」
「私もそれはちょっと……」
お兄様からの鋭い視線が突き刺さる。しかし、私も殿下もそれをスルーだ。
「レティ、魔術の方に歩むのはいいが、ちゃんと報告しておけよ」
「報告?」
「……言っておかないとあとでくどくど言われる。だいたい昨日のことも、お前が泣いてどうにもならなさそうだったから、俺にどういうことだと聞いてきたしな」
「あっ、それはもしやお父様」
「それ以外に誰がいる」
そうですね、誰もいませんね!
お父様か。お父様かー。どんなこと言われるのか全く想像ができない。
渋い顔されるのかな。うう、話に行くのがちょっといやだ。
お母様も一緒の方がなんとか上手にごまかせそうな気がする、そうしよう。
「魔術の方に進むなら、色んな課題があるから。そのどれかひとつでもどうにかできたら好きにさせてもらえるだろうけどね」
「そんなに簡単に行くとは思えません……」
「でもレティ、魔術を突き詰めて、どうするんですか?」
「どうする、って?」
「いえ、なんて言いますか……勉強しようと思っているのはわかります。でもそれは目標ではなくてあくまで手段のような感じがします」
ジゼルちゃんは上手に言えないのですが、と頬に手を当てて困った顔だ。
そう、それはあっている。
テオを驚かせるための手段だ。目標は突然目の前に現れてババババーン! みたいな。
しかしこれをするために、魔術をというのはなんか言いづらい。
長距離転移というのはまだおそらく、為されていないことだ。
為されていても、普通ではできないような、そういうレベルだから表に話として出てこないのだろう。
国と国をまたぐような距離なんて難しい以外になにもない。
しかし私はそれをやろうとしている。何も下地が無い、ということは無いと思うけど。
それでも難しいことには違いないのだから。
「うーん、まぁ……内緒だけどやりたいことがあるの。だからやりたいことがやれるようになるまで、やれることをまずやっていくわ」
「そうですか、頑張ってくださいね、レティ」
「うん、ありがと。ジゼルちゃん!」
私はやる気満々だ。拳にぎってふん、と息巻いているとお兄様は立ち直りが早いと呆れているようだった。
別に立ち直ったとかではないんですけども!
私が何をするにせよ、よーっぽどとんちんかんなことを言わない限りはとどめず見守ってくれるそうな。
それはありがたいことだと思う。
「おはよう、レティ」
ぱぁんと扉あけて現れた私にジゼルちゃんは瞬いたのだがすぐにいつもの笑顔。
思えば私、昨日はあのふかふかのお胸で存分に泣きまくった気もする。う、うろおぼえ!
「えっと……昨日は、ありがとう」
「いえ。もう大丈夫そうですね」
「うん、寂しいって喚いてるだけじゃだめだし」
私はテオをびっくりさせてやるのよ、と言うとジゼルちゃんはそうですかと、なんだか私がこうなるのをわかっていたような。
そんな表情だ。
「それで、どうするんです?」
「うん。えっと……とりあえず、朝ごはんかな!」
私達は連れだって朝食とって、支度整えていつも通り学校へ。
いつもならおはようと聞こえる声がないのはやっぱり寂しいのだけど、ぐだぐだしてられないわ。
勉学エトセトラ、いつもの一日だ。
いつもの一日だけど、やっぱり違う。いないことがしんどい。
今、何してるかなぁと思ってしまう。
ちょっと休憩とばかりにジゼルちゃんとカフェテラスでお茶をしてのんびり。
お茶おいしい。
けど、ここにいると誰かがやってくるのは常だ。
まぁ、お兄様なんですけど! そして殿下も一緒なんですけど!
挨拶もそこそこ、お兄様と殿下は同席してくる。
「ガブのやつが色々土産をあそこに置いていっててな。あれはお前にしかどうにかできないだろ」
「え、それは食材ですか!」
そうだとお兄様は頷く。
捨てるのももったいない。しかし、あれを寮の調理場に預けるのもなということで私の出番とのこと。
どうやら今夜はそこでご飯作りになりそうだ。料理とかしたことないんだけど、前世知識がんばれというところ。
ジゼルちゃんも一緒に食べようとなり、今晩がちょっと楽しみだ。
ということは、だ。
多分、人に聞かれたくない話とかもしちゃうんだろうなぁ、と思う。
「空元気かと思ったがそうでもないみたいだな」
「え?」
「テオドールがいなくて寂しいって昨日」
「あー! そ、それはそうだけど! そうだけど、大丈夫です! やりたいことができたので!」
「やりたいこと? なんだ、言ってみろよ」
「それは俺も気になるな」
「そういえば、朝のお話がまだでしたね」
と、お兄様と殿下が食いついてきたのにジゼルちゃんが援護をしてしまったので。
私はここでその話をしなくてはいけなくなった。
いや、簡単に言うと魔術ですごいことしてテオをびっくりさせちゃうぞ、ってだけなんだけど。
なんだかそう言うと馬鹿か、みたいな呆れられた視線を向けられそうなので色々こじつけて話すことにした。
「テオが勉強しにいくっていうなら私ものほほんとしてるんじゃなくて、何か勉強しようと思って。それで、色々考えて上手にできるの魔術だから、それを突き詰めてみようかな、と」
「……まずそこで一ついいたいのが、お前に突き詰めるは無理だと俺は思う」
「うぐっ、な、なんでですか!」
「お前の魔術は自由すぎる。多分、壁も底もないだろうと俺が思うからだ。まぁ、いいんじゃないか」
おや、お兄様はするっと背を押してくださるようだ。
ひぇー、これもなんかおっそろしいんですけど。
「それなら俺も力になれるかな。王族に使える魔術師達と会えるようにしてあげるよ」
きっと色んな発見があるだろうと殿下はにこにこ笑む。
その笑みの裏側にも何かありそうな気がしているのですが!!
「そのついでに姉上の話し相手にもなってくれると嬉しい」
「デジレ様の、ですか?」
「ああ、こいつの話しかしなくて俺はもう聞きたくない」
「私もそれはちょっと……」
お兄様からの鋭い視線が突き刺さる。しかし、私も殿下もそれをスルーだ。
「レティ、魔術の方に歩むのはいいが、ちゃんと報告しておけよ」
「報告?」
「……言っておかないとあとでくどくど言われる。だいたい昨日のことも、お前が泣いてどうにもならなさそうだったから、俺にどういうことだと聞いてきたしな」
「あっ、それはもしやお父様」
「それ以外に誰がいる」
そうですね、誰もいませんね!
お父様か。お父様かー。どんなこと言われるのか全く想像ができない。
渋い顔されるのかな。うう、話に行くのがちょっといやだ。
お母様も一緒の方がなんとか上手にごまかせそうな気がする、そうしよう。
「魔術の方に進むなら、色んな課題があるから。そのどれかひとつでもどうにかできたら好きにさせてもらえるだろうけどね」
「そんなに簡単に行くとは思えません……」
「でもレティ、魔術を突き詰めて、どうするんですか?」
「どうする、って?」
「いえ、なんて言いますか……勉強しようと思っているのはわかります。でもそれは目標ではなくてあくまで手段のような感じがします」
ジゼルちゃんは上手に言えないのですが、と頬に手を当てて困った顔だ。
そう、それはあっている。
テオを驚かせるための手段だ。目標は突然目の前に現れてババババーン! みたいな。
しかしこれをするために、魔術をというのはなんか言いづらい。
長距離転移というのはまだおそらく、為されていないことだ。
為されていても、普通ではできないような、そういうレベルだから表に話として出てこないのだろう。
国と国をまたぐような距離なんて難しい以外になにもない。
しかし私はそれをやろうとしている。何も下地が無い、ということは無いと思うけど。
それでも難しいことには違いないのだから。
「うーん、まぁ……内緒だけどやりたいことがあるの。だからやりたいことがやれるようになるまで、やれることをまずやっていくわ」
「そうですか、頑張ってくださいね、レティ」
「うん、ありがと。ジゼルちゃん!」
私はやる気満々だ。拳にぎってふん、と息巻いているとお兄様は立ち直りが早いと呆れているようだった。
別に立ち直ったとかではないんですけども!
私が何をするにせよ、よーっぽどとんちんかんなことを言わない限りはとどめず見守ってくれるそうな。
それはありがたいことだと思う。
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