転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
113 / 243
第三章

やりたいこと、やれること

しおりを挟む
「ジゼルちゃんおはよう!」
「おはよう、レティ」
 ぱぁんと扉あけて現れた私にジゼルちゃんは瞬いたのだがすぐにいつもの笑顔。
 思えば私、昨日はあのふかふかのお胸で存分に泣きまくった気もする。う、うろおぼえ!
「えっと……昨日は、ありがとう」
「いえ。もう大丈夫そうですね」
「うん、寂しいって喚いてるだけじゃだめだし」
 私はテオをびっくりさせてやるのよ、と言うとジゼルちゃんはそうですかと、なんだか私がこうなるのをわかっていたような。
 そんな表情だ。
「それで、どうするんです?」
「うん。えっと……とりあえず、朝ごはんかな!」
 私達は連れだって朝食とって、支度整えていつも通り学校へ。
 いつもならおはようと聞こえる声がないのはやっぱり寂しいのだけど、ぐだぐだしてられないわ。
 勉学エトセトラ、いつもの一日だ。
 いつもの一日だけど、やっぱり違う。いないことがしんどい。
 今、何してるかなぁと思ってしまう。
 ちょっと休憩とばかりにジゼルちゃんとカフェテラスでお茶をしてのんびり。
 お茶おいしい。
 けど、ここにいると誰かがやってくるのは常だ。
 まぁ、お兄様なんですけど! そして殿下も一緒なんですけど!
 挨拶もそこそこ、お兄様と殿下は同席してくる。
「ガブのやつが色々土産をあそこに置いていっててな。あれはお前にしかどうにかできないだろ」
「え、それは食材ですか!」
 そうだとお兄様は頷く。
 捨てるのももったいない。しかし、あれを寮の調理場に預けるのもなということで私の出番とのこと。
 どうやら今夜はそこでご飯作りになりそうだ。料理とかしたことないんだけど、前世知識がんばれというところ。
 ジゼルちゃんも一緒に食べようとなり、今晩がちょっと楽しみだ。
 ということは、だ。
 多分、人に聞かれたくない話とかもしちゃうんだろうなぁ、と思う。
「空元気かと思ったがそうでもないみたいだな」
「え?」
「テオドールがいなくて寂しいって昨日」
「あー! そ、それはそうだけど! そうだけど、大丈夫です! やりたいことができたので!」
「やりたいこと? なんだ、言ってみろよ」
「それは俺も気になるな」
「そういえば、朝のお話がまだでしたね」
 と、お兄様と殿下が食いついてきたのにジゼルちゃんが援護をしてしまったので。
 私はここでその話をしなくてはいけなくなった。
 いや、簡単に言うと魔術ですごいことしてテオをびっくりさせちゃうぞ、ってだけなんだけど。
 なんだかそう言うと馬鹿か、みたいな呆れられた視線を向けられそうなので色々こじつけて話すことにした。
「テオが勉強しにいくっていうなら私ものほほんとしてるんじゃなくて、何か勉強しようと思って。それで、色々考えて上手にできるの魔術だから、それを突き詰めてみようかな、と」
「……まずそこで一ついいたいのが、お前に突き詰めるは無理だと俺は思う」
「うぐっ、な、なんでですか!」
「お前の魔術は自由すぎる。多分、壁も底もないだろうと俺が思うからだ。まぁ、いいんじゃないか」
 おや、お兄様はするっと背を押してくださるようだ。
 ひぇー、これもなんかおっそろしいんですけど。
「それなら俺も力になれるかな。王族に使える魔術師達と会えるようにしてあげるよ」
 きっと色んな発見があるだろうと殿下はにこにこ笑む。
 その笑みの裏側にも何かありそうな気がしているのですが!!
「そのついでに姉上の話し相手にもなってくれると嬉しい」
「デジレ様の、ですか?」
「ああ、こいつの話しかしなくて俺はもう聞きたくない」
「私もそれはちょっと……」
 お兄様からの鋭い視線が突き刺さる。しかし、私も殿下もそれをスルーだ。
「レティ、魔術の方に歩むのはいいが、ちゃんと報告しておけよ」
「報告?」
「……言っておかないとあとでくどくど言われる。だいたい昨日のことも、お前が泣いてどうにもならなさそうだったから、俺にどういうことだと聞いてきたしな」
「あっ、それはもしやお父様」
「それ以外に誰がいる」
 そうですね、誰もいませんね!
 お父様か。お父様かー。どんなこと言われるのか全く想像ができない。
 渋い顔されるのかな。うう、話に行くのがちょっといやだ。
 お母様も一緒の方がなんとか上手にごまかせそうな気がする、そうしよう。
「魔術の方に進むなら、色んな課題があるから。そのどれかひとつでもどうにかできたら好きにさせてもらえるだろうけどね」
「そんなに簡単に行くとは思えません……」
「でもレティ、魔術を突き詰めて、どうするんですか?」
「どうする、って?」
「いえ、なんて言いますか……勉強しようと思っているのはわかります。でもそれは目標ではなくてあくまで手段のような感じがします」
 ジゼルちゃんは上手に言えないのですが、と頬に手を当てて困った顔だ。
 そう、それはあっている。
 テオを驚かせるための手段だ。目標は突然目の前に現れてババババーン! みたいな。
 しかしこれをするために、魔術をというのはなんか言いづらい。
 長距離転移というのはまだおそらく、為されていないことだ。
 為されていても、普通ではできないような、そういうレベルだから表に話として出てこないのだろう。
 国と国をまたぐような距離なんて難しい以外になにもない。
 しかし私はそれをやろうとしている。何も下地が無い、ということは無いと思うけど。
 それでも難しいことには違いないのだから。
「うーん、まぁ……内緒だけどやりたいことがあるの。だからやりたいことがやれるようになるまで、やれることをまずやっていくわ」
「そうですか、頑張ってくださいね、レティ」
「うん、ありがと。ジゼルちゃん!」
 私はやる気満々だ。拳にぎってふん、と息巻いているとお兄様は立ち直りが早いと呆れているようだった。
 別に立ち直ったとかではないんですけども!
 私が何をするにせよ、よーっぽどとんちんかんなことを言わない限りはとどめず見守ってくれるそうな。
 それはありがたいことだと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい

海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。 その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。 赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。 だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。 私のHPは限界です!! なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。 しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ! でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!! そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような? ♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟ 皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います! この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。

ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!

婚約破棄されて田舎に飛ばされたのでモフモフと一緒にショコラカフェを開きました

碓氷唯
恋愛
公爵令嬢のシェイラは王太子に婚約破棄され、前世の記憶を思い出す。前世では両親を亡くしていて、モフモフの猫と暮らしながらチョコレートのお菓子を作るのが好きだったが、この世界ではチョコレートはデザートの横に適当に添えられている、ただの「飾りつけ」という扱いだった。しかも板チョコがでーんと置いてあるだけ。え? ひどすぎません? どうしてチョコレートのお菓子が存在しないの? なら、私が作ってやる! モフモフ猫の獣人と共にショコラカフェを開き、不思議な力で人々と獣人を救いつつ、モフモフとチョコレートを堪能する話。この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...