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第二章
突然すぎて、でも突然じゃない
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なんていうか、叫びたい。
お兄様とマンツーマンというのは私にとってあまり良い思い出がないのだから!
そんなわけでー!
私はついてこいとひっぱられて人気のない、学園内の端っこにある東屋まで連行されました。
で、連れてきたはいいけどお兄様は何も言わず黙っているのだ。
「あのー、お兄様」
そして私はそれに焦れて話はなんですかーと、声かける。
「……レティ、俺はな」
親父殿に縁を切ってもらおうと、思うのだ、と。
うんちょっと意味わかんないと思うようなことを言った。
「え、なんで? どうして?」
「デジレが」
「ま、まって。まって! 呼び捨て!?」
いやお兄様、お兄様よ。デジレ様は王族なので呼び捨てはいかがなものかと!
私たちは臣下にあたるのだから、そこは、そこは!
「ああ、良いんだよ。もう」
「もうって、何が」
尋ねると、お兄様はふっと笑って見せる。
え、なにその勝ち誇った笑みは。え、え?
「俺がこういうのはお前の為でもある」
「私の?」
「そうだ」
俺がいなくなれば、お前は好きなやつを婿にとれる。
そう、お兄様は言う。
何か色んな説明がぶっとばされててよくわからないんだけど。
ぽかんとしている私を見てそのうちわかるとお兄様は言う。
そのうちわかるとは、何がですか!
「わけわからないんですけど」
「じゃあお前、アレクの所に嫁に行く気はあるか?」
「ないです!」
「カロンの所」
「もっとないです!」
「そういうことだ。俺がいたら、お前はどっちかのところにいくぜ。まぁアレクの方が可能性が高い」
ええええええええと変な声を出す私にお兄様はため息をつく。
お前が考えられるのは、自分以外の事なんだな、と。
「俺がいたら、家督は俺が継ぐだろう。そうすると家にお前の居場所はない」
「というかなんか、私嫁に行く前提ですよね、これ。嫁に行かずに婿も取らずに自由に一人で生きていく選択肢もありますよね!」
「お前がそれできるのか」
「うっ……」
「……お前はわかってねーな」
何がですか、と私は言う。
お兄様は、お前のその考えはいつまでもテオドールがそばにいてくれると、思っているだろうと。
私はそう言われて、即頷いていた。いや、そうじゃないとはわかっているんだけど。
いるんだけど、そばにいるのが当たり前すぎて。
するとお兄様は呆れた、と零して。
「ずっとそばにいるなんてねーだろ。現に……いや、お前はまだ知らないか」
「え、何がですか」
「自分で聞けよ、テオドールに」
「テオに?」
こうやって話を振られるってことは何かあるんだ。
そういえば、テオはお父様に話があるって言われてたから、もしかしてその時に何かあったのかもしれない。
テオは私に、何も話していない。
それに気づいて、なんだか……もやっとする。
なんでもかんでも私に言ってくれなきゃやだ、ってわけじゃないけどお兄様は何か知ってるっぽいのに私は知らない。
それがなんだか、気持ち悪い。
私はうう、と唸っていた。知らずのうちに。
「おい、レティ。お迎えだぜ」
「え?」
と、お兄様が視線で示す。そっちを見ればテオが息切らして走ってきて。
迎えに来ました、と笑む。
「テオ」
「お迎えに来ました。お話は終わりましたか?」
「終わってる。テオドール、それよりお前はまだレティに話してないんだな」
「……トリスタン様、それは」
「俺はお前の好きにしたらいいと思う。お前ならまぁ、任せていい。俺のためにも」
お兄様はそういうと笑って、ちゃんと話せよと言ってそれじゃあなと離れていく。
かわりにテオは東屋に入ってきて、私の傍に立った。私は座ったまま、テオを見上げる。
残されたのはテオと、私だけだ。
私はテオ、と名前を呼ぶ。
するとテオはいつもと変わらぬ笑顔で、なんですかと応えた。
「……お兄様が、私の知らないテオの話を知ってる。私には話してくれないの?」
「それは」
「この前、お父様に呼び止められたのと関係ある?」
そう問うと、テオは瞬いて。
ああ、と。
なんというか気まずそうに視線を逸らした。その表情はなんというか、今まで見たことがないようなもので私はちょっとびっくりした。
「うん、内緒にしてることはある」
「それは私に言えない?」
「……言えないのは、まだ決めてないからかな」
決めてない? と私は尋ねる。
そう、とテオは頷く。
「旦那様は僕に、国外留学してみるかって話を持ってきたんだ」
「なんで?」
「僕が優秀だから」
あ、しれっと。そういう事言う。いや、でも確かにそれは事実だと思うけど。
「もっとたくさん、いろいろなことを勉強してくるかって」
「でも学校、入ったばかりよ?」
「旦那様はレティと勉強してた頃の僕から知ってる。それを見て、だと思うよ」
「……そっか」
テオは、僕は長男ではないからと言う。
その表情は困ったような感じだ。私はああ、と理解した。
貴族の家督は長男が継ぐ。ではそれ以外は、となると。どこかに婿入りするだとか、自分で稼ぐ方法を見つけるだとか。
そういうことができる人が多いわけではない。
お父様もそれはわかっているのだ。けど、テオが何かつかめるように、そういう道筋のために話をしたんだろうなと私は思った。
そうだとすると、どうしたいのか決めるのはテオで。
私はそれを反対する事はできないなぁ、と思う。
思う、けど。
「テ、テオはどうしたいの? どうするの……」
「それを考えてるんだけど、まだそれを決めなきゃいけないところまで時間があるから」
「え、そうなの?」
「うん。この学年が終わるまでは、時間があるよ」
それってすぐじゃないのと思うけれど飲み込んだ。
そっか、と私は呟いてふるふると首を振って顔に出そうなちょっとさびしい気持ちを振り払った。
「テオが、行きたいならいいと思うわ、うん」
「――本当にそう思ってる?」
どうにかこうにか笑み浮かべて、テオに言う。
するとテオは、淡々と言葉紡いだ。
「レティは、俺がいなくなってもいい?」
「え」
「いなくても、やっていける?」
「それは……」
言ってくれないと、俺はわからないふりをするよ、と。
テオは言う。
何だろうこの違和感、と思う。そう、テオは僕じゃなくて俺と言ってる。
ねぇ、と膝をついて私の手をとったテオはまっすぐ私を射抜くように見つめてくる。
うっ。
真摯にこうして見つめられると、照れる。困る。
私が黙り込んでいると、テオはふと柔らかな笑みを浮かべて。
「俺はレティと一緒にいたい。けど、ずっと一緒にいられるわけじゃないから、ずっと一緒にいられる方法を探してる」
「テオ、私は」
「でもレティの周りにはいろんな人がいるから、今の俺じゃあ負ける」
「負ける……?」
「そう、負ける」
「だから負けない術を探してる。手探りだ、何もわかんないよ」
けどそれは時間をかけていられるものでもないからとテオは言う。
テオは何かに、焦っているのだ。
「レティ」
俺はレティが好きだよと微笑んで。
微笑んで、手の甲に口付ける。
待って。
待って。
いくらなんでも、わかる。
私はこれにどんな意味が込められているのか、わかる。
ふわっ……え、えっ。
どうしたらいいか、わかんない!
テオは私を好きと言ってる。私も好きだよ!
でも、でもその意味が同じかというと違うのだと、今知った、今感じた。
突然、こんな。こんな。
考えまとまらないわけわかんない。これ今答えなきゃいけない?
わかんない、こんな答え今すぐ出せない、言えない。
そんな私のあたふたにテオは笑う。
「突然、とか思ってるだろうけど。突然じゃないよ。俺は一緒にい始めた頃から好きだから」
「えっ」
「あまりにも気づいてくれないからもう言うしかないと思って」
関係が変わることも覚悟の上で、とテオは苦笑する。
「レティ、こういうのは鈍いよね」
「えっ、鈍い!?」
「鈍いね。トリスタン様なんか結構前から知ってるし、ジゼルさんもベルも知ってる」
「は!?」
え、ちょ。
私だけか! 私だけ気付いてなかっただけか!
嘘! と漏らす私にテオは本当と答えた。
うう、気まずい。
「うううう、き、気付いてなくてごめん」
「いいよ、いつものことだから。レティはそれでいいと思う」
「テオ、あの、私」
「レティ、いい。何も言わなくていい、俺が言ったことは今は忘れてもいい」
けどいつか、ちゃんと答えてもらうからとテオは言う。
「本当はちゃんと、俺が自分で言えるって思うまで口にしないつもりだったんだけどレティの顔見てたら」
今言っておかないといけない気がしたから。
テオの言葉に私は瞬く。なんで私の顔見て、そう思うのよ。
「……ちょっとは意識した?」
「すごく、した」
「そっか。それはそれでよかったのかな――ねぇ、レティ、覚えてる?」
最初に会った時のことを、とテオは言う。
正直、あんまりよく覚えていない。でもなんか、美少年の笑顔の破壊力すごいって思ったのは覚えてるんだけど。
さすがにそれをテオに言うのは、なんだかはばかられると思ってあいまいに、あんまりよく覚えてないと答えた。
「俺は、覚えてるよ」
何を、どう覚えているのか。
私何かわめき散らした記憶はあるけど!
テオは話さないけどと言う。こ、これは意地悪だな!!
むむ、と睨む私にテオは笑いかけてくれる。
「帰ろうか」
「うん、そうね……」
その日は、久しぶりにテオに手を引いてもらった。
こうやって手を繋いで歩くなんて、そういえば久しぶりだと思ったのだ。
繋いだ手が気恥ずかしくて、でもちょっと嬉しくて。心躍ったのは内緒だ。
お兄様とマンツーマンというのは私にとってあまり良い思い出がないのだから!
そんなわけでー!
私はついてこいとひっぱられて人気のない、学園内の端っこにある東屋まで連行されました。
で、連れてきたはいいけどお兄様は何も言わず黙っているのだ。
「あのー、お兄様」
そして私はそれに焦れて話はなんですかーと、声かける。
「……レティ、俺はな」
親父殿に縁を切ってもらおうと、思うのだ、と。
うんちょっと意味わかんないと思うようなことを言った。
「え、なんで? どうして?」
「デジレが」
「ま、まって。まって! 呼び捨て!?」
いやお兄様、お兄様よ。デジレ様は王族なので呼び捨てはいかがなものかと!
私たちは臣下にあたるのだから、そこは、そこは!
「ああ、良いんだよ。もう」
「もうって、何が」
尋ねると、お兄様はふっと笑って見せる。
え、なにその勝ち誇った笑みは。え、え?
「俺がこういうのはお前の為でもある」
「私の?」
「そうだ」
俺がいなくなれば、お前は好きなやつを婿にとれる。
そう、お兄様は言う。
何か色んな説明がぶっとばされててよくわからないんだけど。
ぽかんとしている私を見てそのうちわかるとお兄様は言う。
そのうちわかるとは、何がですか!
「わけわからないんですけど」
「じゃあお前、アレクの所に嫁に行く気はあるか?」
「ないです!」
「カロンの所」
「もっとないです!」
「そういうことだ。俺がいたら、お前はどっちかのところにいくぜ。まぁアレクの方が可能性が高い」
ええええええええと変な声を出す私にお兄様はため息をつく。
お前が考えられるのは、自分以外の事なんだな、と。
「俺がいたら、家督は俺が継ぐだろう。そうすると家にお前の居場所はない」
「というかなんか、私嫁に行く前提ですよね、これ。嫁に行かずに婿も取らずに自由に一人で生きていく選択肢もありますよね!」
「お前がそれできるのか」
「うっ……」
「……お前はわかってねーな」
何がですか、と私は言う。
お兄様は、お前のその考えはいつまでもテオドールがそばにいてくれると、思っているだろうと。
私はそう言われて、即頷いていた。いや、そうじゃないとはわかっているんだけど。
いるんだけど、そばにいるのが当たり前すぎて。
するとお兄様は呆れた、と零して。
「ずっとそばにいるなんてねーだろ。現に……いや、お前はまだ知らないか」
「え、何がですか」
「自分で聞けよ、テオドールに」
「テオに?」
こうやって話を振られるってことは何かあるんだ。
そういえば、テオはお父様に話があるって言われてたから、もしかしてその時に何かあったのかもしれない。
テオは私に、何も話していない。
それに気づいて、なんだか……もやっとする。
なんでもかんでも私に言ってくれなきゃやだ、ってわけじゃないけどお兄様は何か知ってるっぽいのに私は知らない。
それがなんだか、気持ち悪い。
私はうう、と唸っていた。知らずのうちに。
「おい、レティ。お迎えだぜ」
「え?」
と、お兄様が視線で示す。そっちを見ればテオが息切らして走ってきて。
迎えに来ました、と笑む。
「テオ」
「お迎えに来ました。お話は終わりましたか?」
「終わってる。テオドール、それよりお前はまだレティに話してないんだな」
「……トリスタン様、それは」
「俺はお前の好きにしたらいいと思う。お前ならまぁ、任せていい。俺のためにも」
お兄様はそういうと笑って、ちゃんと話せよと言ってそれじゃあなと離れていく。
かわりにテオは東屋に入ってきて、私の傍に立った。私は座ったまま、テオを見上げる。
残されたのはテオと、私だけだ。
私はテオ、と名前を呼ぶ。
するとテオはいつもと変わらぬ笑顔で、なんですかと応えた。
「……お兄様が、私の知らないテオの話を知ってる。私には話してくれないの?」
「それは」
「この前、お父様に呼び止められたのと関係ある?」
そう問うと、テオは瞬いて。
ああ、と。
なんというか気まずそうに視線を逸らした。その表情はなんというか、今まで見たことがないようなもので私はちょっとびっくりした。
「うん、内緒にしてることはある」
「それは私に言えない?」
「……言えないのは、まだ決めてないからかな」
決めてない? と私は尋ねる。
そう、とテオは頷く。
「旦那様は僕に、国外留学してみるかって話を持ってきたんだ」
「なんで?」
「僕が優秀だから」
あ、しれっと。そういう事言う。いや、でも確かにそれは事実だと思うけど。
「もっとたくさん、いろいろなことを勉強してくるかって」
「でも学校、入ったばかりよ?」
「旦那様はレティと勉強してた頃の僕から知ってる。それを見て、だと思うよ」
「……そっか」
テオは、僕は長男ではないからと言う。
その表情は困ったような感じだ。私はああ、と理解した。
貴族の家督は長男が継ぐ。ではそれ以外は、となると。どこかに婿入りするだとか、自分で稼ぐ方法を見つけるだとか。
そういうことができる人が多いわけではない。
お父様もそれはわかっているのだ。けど、テオが何かつかめるように、そういう道筋のために話をしたんだろうなと私は思った。
そうだとすると、どうしたいのか決めるのはテオで。
私はそれを反対する事はできないなぁ、と思う。
思う、けど。
「テ、テオはどうしたいの? どうするの……」
「それを考えてるんだけど、まだそれを決めなきゃいけないところまで時間があるから」
「え、そうなの?」
「うん。この学年が終わるまでは、時間があるよ」
それってすぐじゃないのと思うけれど飲み込んだ。
そっか、と私は呟いてふるふると首を振って顔に出そうなちょっとさびしい気持ちを振り払った。
「テオが、行きたいならいいと思うわ、うん」
「――本当にそう思ってる?」
どうにかこうにか笑み浮かべて、テオに言う。
するとテオは、淡々と言葉紡いだ。
「レティは、俺がいなくなってもいい?」
「え」
「いなくても、やっていける?」
「それは……」
言ってくれないと、俺はわからないふりをするよ、と。
テオは言う。
何だろうこの違和感、と思う。そう、テオは僕じゃなくて俺と言ってる。
ねぇ、と膝をついて私の手をとったテオはまっすぐ私を射抜くように見つめてくる。
うっ。
真摯にこうして見つめられると、照れる。困る。
私が黙り込んでいると、テオはふと柔らかな笑みを浮かべて。
「俺はレティと一緒にいたい。けど、ずっと一緒にいられるわけじゃないから、ずっと一緒にいられる方法を探してる」
「テオ、私は」
「でもレティの周りにはいろんな人がいるから、今の俺じゃあ負ける」
「負ける……?」
「そう、負ける」
「だから負けない術を探してる。手探りだ、何もわかんないよ」
けどそれは時間をかけていられるものでもないからとテオは言う。
テオは何かに、焦っているのだ。
「レティ」
俺はレティが好きだよと微笑んで。
微笑んで、手の甲に口付ける。
待って。
待って。
いくらなんでも、わかる。
私はこれにどんな意味が込められているのか、わかる。
ふわっ……え、えっ。
どうしたらいいか、わかんない!
テオは私を好きと言ってる。私も好きだよ!
でも、でもその意味が同じかというと違うのだと、今知った、今感じた。
突然、こんな。こんな。
考えまとまらないわけわかんない。これ今答えなきゃいけない?
わかんない、こんな答え今すぐ出せない、言えない。
そんな私のあたふたにテオは笑う。
「突然、とか思ってるだろうけど。突然じゃないよ。俺は一緒にい始めた頃から好きだから」
「えっ」
「あまりにも気づいてくれないからもう言うしかないと思って」
関係が変わることも覚悟の上で、とテオは苦笑する。
「レティ、こういうのは鈍いよね」
「えっ、鈍い!?」
「鈍いね。トリスタン様なんか結構前から知ってるし、ジゼルさんもベルも知ってる」
「は!?」
え、ちょ。
私だけか! 私だけ気付いてなかっただけか!
嘘! と漏らす私にテオは本当と答えた。
うう、気まずい。
「うううう、き、気付いてなくてごめん」
「いいよ、いつものことだから。レティはそれでいいと思う」
「テオ、あの、私」
「レティ、いい。何も言わなくていい、俺が言ったことは今は忘れてもいい」
けどいつか、ちゃんと答えてもらうからとテオは言う。
「本当はちゃんと、俺が自分で言えるって思うまで口にしないつもりだったんだけどレティの顔見てたら」
今言っておかないといけない気がしたから。
テオの言葉に私は瞬く。なんで私の顔見て、そう思うのよ。
「……ちょっとは意識した?」
「すごく、した」
「そっか。それはそれでよかったのかな――ねぇ、レティ、覚えてる?」
最初に会った時のことを、とテオは言う。
正直、あんまりよく覚えていない。でもなんか、美少年の笑顔の破壊力すごいって思ったのは覚えてるんだけど。
さすがにそれをテオに言うのは、なんだかはばかられると思ってあいまいに、あんまりよく覚えてないと答えた。
「俺は、覚えてるよ」
何を、どう覚えているのか。
私何かわめき散らした記憶はあるけど!
テオは話さないけどと言う。こ、これは意地悪だな!!
むむ、と睨む私にテオは笑いかけてくれる。
「帰ろうか」
「うん、そうね……」
その日は、久しぶりにテオに手を引いてもらった。
こうやって手を繋いで歩くなんて、そういえば久しぶりだと思ったのだ。
繋いだ手が気恥ずかしくて、でもちょっと嬉しくて。心躍ったのは内緒だ。
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