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第二章
子供の夜会
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ぱーてぃーないと、いぇーい!
なんて言ったらしばかれる。
あっという間に問題の、殿下主催? でいいのかな。多分あってる。
王城でのパーティーの日です。
今日は、日付が変わるまでの時間過ごすということで。
ナイトっていったけどまだ実際は夕方なのだけど。
私はお兄様と一緒に馬車に詰められて実家から出発している。テオも一緒だ。
「お兄様、エスコートのお相手は?」
「なんで俺が。そもそも、そういうことをしたい相手を探すためのものなんだからな」
ですよね!
お兄様は不機嫌そう、にみえて。実のところそうではない。
心逸っている、という感じだ。
時間があったのでどうしてこういうことになったのか、と聞いてみると。
まず、殿下にしぶしぶだが人を探していることを告げた。最初はお前何を言っているんだ、と言われていたけれどそのうち協力する、となって。
探すにもそういう場がないと無理だろう、と今回のこれを開くことになったそうだ。
もともと殿下主催で何か、という話はあったらしい。本来の予定はこじんまりと行う予定だったのだとか。仲の良い者だけのガーデンパーティーか、夜会か。殿下がそういう企画事をするのは、今後の色んな行事とか、企画とか。そういうことに口をだすことの練習らしい。
でも当初の予定を変えて、大きなイベントにしたのは殿下はお兄様の探し人が誰かご存じだからだと思う。
人が多い方が確かに、隠れやすいから出てきやすい。
「出会ったらどうするんです?」
「どうするだろうな、わからん」
まだ自分の心を持て余しているような。私がお兄様の心の内を全て理解するとか、もちろん無理なんだけど。
ざわついているんだろうなぁと、感じる。
むーんとお兄様をみていると、それよりと投げかけられた。
「人も多い。しっかりテオドールに見張られていろよ。テオドールも目を離すなよ、逃げられないようにな」
「はい、もちろん」
見張られるとか世話される前提ー!
もう、とぷりぷり怒る私にふとお兄様は笑みを向ける。や、やわらかくてやさしくてこわい。
「……見つかると良いですね」
「そうだな。ああ、そうそう、お前も」
「はい?」
「きれいに着飾ってるからな。色々な奴に声かけられるだろうが、お前のナイトに守ってもらえよ」
「ナイト?」
「…………おい、テオドール」
「いつものことなので」
「苦労するな」
「まぁ、それもわかった上で楽しんでいるので」
んんん? 二人だけで会話が成立している!
私は仲間外れだ。なんなのよーと言うと二人は笑う。仲良いな! いつの間に!
そして王城も見えてきた。
きらきらしてみえる。明かりがたくさんなのもあるけど、雰囲気とか。
昼間にくるのとは、違う雰囲気だ。
きらきら輝いているそこは、心躍るものがある。
でもここで、今から色んな思惑も交差するんだろうなぁ、と。
ぼんやり色々なことを思っていると馬車が止まった。
テオが最初に降りて、お兄様が次に。最後は私だ。
「レティお嬢様、どうぞ」
「レティ、来い」
「おうふ」
「……おうふって何だ」
「いえ、その……ちょっと気を緩めてしまっただけで。ちゃんとするので大丈夫です!」
おうふ、と思わず出たのは。
降りようとしたら右側にお兄様で左側にテオで、手を差し出してくるとか。
なんていうか、そう。お姫様になったような!
ひええええええってなる光景だった。
そう、さっきお兄様がナイトとか言ってたけどまさに、それだと思う。
きっと普通の、何も知らない子だったらこれ、舞い上がっちゃうんだろうなぁ。
両手になんとやらーとはこれのことだ。私もちょっとだけそれを満喫。
「こけないでくださいよ」
「恥をかかせるなよ」
そう。
こういう! お小言が! なければ!!
「わかってます。私は隅っこでおとなしく美味しいものを食べてます!」
「そうだな。そうしておけ」
隅っこにいても目立つと思いますけど、とテオが言う。おとなしくしておくから目立たないわよ、多分。
と、思っているけど。
お兄様と一緒にきて、もうすでに目立っているのは周囲の視線からしてわかる。
ダンスとか言われたらどうしよう。踊れなくはない、一応。そういう技術も、礼儀も叩き込まれているし、十分にこなせる。
でも、好きか嫌いか。得意か苦手かといえば、苦手だ。
「じゃあ、俺は離れるからな」
「はい。ではまた」
「トリスタン様、いってらっしゃいませ」
するりとお兄様の手が離れる。会場に入ってしまえば一緒にいる意味もないものね。
さて、私たちはどうするかというと。
すぐにおいしいもの! するわけにもいかないのはわかっている。
友人たちを見かければ挨拶。そのうち殿下のご挨拶があるだろうから、そこまではおとなしくしていたい。
「あ、ジゼルさんとベルですよ」
「本当? あっ、ジゼルちゃん綺麗!」
わぁ、と駆け寄りたいのを必死で我慢。
ジゼルちゃんとベルは絵になるなぁ、と私は思う。
ジゼルちゃんは濃い緑色のドレス。華やかなこの場で、といっても今日は青が多いけど。あの色のドレスはなかなか、渋いと思う。
けど落ち着いて見えて、ジゼルちゃんには似合っている。あと制服着てるとあんまりよくわかんなかったけど、ドレスだとすごくよくわかる。
いえ、私は知っていたけど? 一緒に生活してるんだから、ゆるーい格好をしたりするから、知ってた。
「……レティ、思ってることを口にしちゃだめですよ」
「えっ?」
「……何を、とか聞いて言わせないでくださいね」
「あっ、はい」
うん。言わないよ。
しかし。しかし!
同じ年代としてあの成長具合はうらやましい。平均よりちょっと大きいよね。
そう何がって、胸の大きさの話ですよ!!
私平均より、ちょっとだけ。本当にちょっとよ、ちょっとだけ小さい感じだから、うらやましい。
でもジゼルちゃんだから抱き着いてちょっとふかふかしたいとも思わなくもないんだけど。
そういう色んな思考をテオはわかっているのだと思う。はぁ、とため息つかれた。
なんて言ったらしばかれる。
あっという間に問題の、殿下主催? でいいのかな。多分あってる。
王城でのパーティーの日です。
今日は、日付が変わるまでの時間過ごすということで。
ナイトっていったけどまだ実際は夕方なのだけど。
私はお兄様と一緒に馬車に詰められて実家から出発している。テオも一緒だ。
「お兄様、エスコートのお相手は?」
「なんで俺が。そもそも、そういうことをしたい相手を探すためのものなんだからな」
ですよね!
お兄様は不機嫌そう、にみえて。実のところそうではない。
心逸っている、という感じだ。
時間があったのでどうしてこういうことになったのか、と聞いてみると。
まず、殿下にしぶしぶだが人を探していることを告げた。最初はお前何を言っているんだ、と言われていたけれどそのうち協力する、となって。
探すにもそういう場がないと無理だろう、と今回のこれを開くことになったそうだ。
もともと殿下主催で何か、という話はあったらしい。本来の予定はこじんまりと行う予定だったのだとか。仲の良い者だけのガーデンパーティーか、夜会か。殿下がそういう企画事をするのは、今後の色んな行事とか、企画とか。そういうことに口をだすことの練習らしい。
でも当初の予定を変えて、大きなイベントにしたのは殿下はお兄様の探し人が誰かご存じだからだと思う。
人が多い方が確かに、隠れやすいから出てきやすい。
「出会ったらどうするんです?」
「どうするだろうな、わからん」
まだ自分の心を持て余しているような。私がお兄様の心の内を全て理解するとか、もちろん無理なんだけど。
ざわついているんだろうなぁと、感じる。
むーんとお兄様をみていると、それよりと投げかけられた。
「人も多い。しっかりテオドールに見張られていろよ。テオドールも目を離すなよ、逃げられないようにな」
「はい、もちろん」
見張られるとか世話される前提ー!
もう、とぷりぷり怒る私にふとお兄様は笑みを向ける。や、やわらかくてやさしくてこわい。
「……見つかると良いですね」
「そうだな。ああ、そうそう、お前も」
「はい?」
「きれいに着飾ってるからな。色々な奴に声かけられるだろうが、お前のナイトに守ってもらえよ」
「ナイト?」
「…………おい、テオドール」
「いつものことなので」
「苦労するな」
「まぁ、それもわかった上で楽しんでいるので」
んんん? 二人だけで会話が成立している!
私は仲間外れだ。なんなのよーと言うと二人は笑う。仲良いな! いつの間に!
そして王城も見えてきた。
きらきらしてみえる。明かりがたくさんなのもあるけど、雰囲気とか。
昼間にくるのとは、違う雰囲気だ。
きらきら輝いているそこは、心躍るものがある。
でもここで、今から色んな思惑も交差するんだろうなぁ、と。
ぼんやり色々なことを思っていると馬車が止まった。
テオが最初に降りて、お兄様が次に。最後は私だ。
「レティお嬢様、どうぞ」
「レティ、来い」
「おうふ」
「……おうふって何だ」
「いえ、その……ちょっと気を緩めてしまっただけで。ちゃんとするので大丈夫です!」
おうふ、と思わず出たのは。
降りようとしたら右側にお兄様で左側にテオで、手を差し出してくるとか。
なんていうか、そう。お姫様になったような!
ひええええええってなる光景だった。
そう、さっきお兄様がナイトとか言ってたけどまさに、それだと思う。
きっと普通の、何も知らない子だったらこれ、舞い上がっちゃうんだろうなぁ。
両手になんとやらーとはこれのことだ。私もちょっとだけそれを満喫。
「こけないでくださいよ」
「恥をかかせるなよ」
そう。
こういう! お小言が! なければ!!
「わかってます。私は隅っこでおとなしく美味しいものを食べてます!」
「そうだな。そうしておけ」
隅っこにいても目立つと思いますけど、とテオが言う。おとなしくしておくから目立たないわよ、多分。
と、思っているけど。
お兄様と一緒にきて、もうすでに目立っているのは周囲の視線からしてわかる。
ダンスとか言われたらどうしよう。踊れなくはない、一応。そういう技術も、礼儀も叩き込まれているし、十分にこなせる。
でも、好きか嫌いか。得意か苦手かといえば、苦手だ。
「じゃあ、俺は離れるからな」
「はい。ではまた」
「トリスタン様、いってらっしゃいませ」
するりとお兄様の手が離れる。会場に入ってしまえば一緒にいる意味もないものね。
さて、私たちはどうするかというと。
すぐにおいしいもの! するわけにもいかないのはわかっている。
友人たちを見かければ挨拶。そのうち殿下のご挨拶があるだろうから、そこまではおとなしくしていたい。
「あ、ジゼルさんとベルですよ」
「本当? あっ、ジゼルちゃん綺麗!」
わぁ、と駆け寄りたいのを必死で我慢。
ジゼルちゃんとベルは絵になるなぁ、と私は思う。
ジゼルちゃんは濃い緑色のドレス。華やかなこの場で、といっても今日は青が多いけど。あの色のドレスはなかなか、渋いと思う。
けど落ち着いて見えて、ジゼルちゃんには似合っている。あと制服着てるとあんまりよくわかんなかったけど、ドレスだとすごくよくわかる。
いえ、私は知っていたけど? 一緒に生活してるんだから、ゆるーい格好をしたりするから、知ってた。
「……レティ、思ってることを口にしちゃだめですよ」
「えっ?」
「……何を、とか聞いて言わせないでくださいね」
「あっ、はい」
うん。言わないよ。
しかし。しかし!
同じ年代としてあの成長具合はうらやましい。平均よりちょっと大きいよね。
そう何がって、胸の大きさの話ですよ!!
私平均より、ちょっとだけ。本当にちょっとよ、ちょっとだけ小さい感じだから、うらやましい。
でもジゼルちゃんだから抱き着いてちょっとふかふかしたいとも思わなくもないんだけど。
そういう色んな思考をテオはわかっているのだと思う。はぁ、とため息つかれた。
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