56 / 243
第二章
言葉にできない
しおりを挟む
殿下と話をして、当然のようにガブさんのところでご飯を食べ。
そしてテオと別れて部屋に戻る。もちろんジゼルちゃんに報告だ。
「ああ、スカイブルー……それは、トリスタン様にどうお伝えするか……」
「でもまだ同一人物じゃない可能性もあるし!」
「そうですが……でも王宮に自由に出入りができるとなると、それはかなり」
「うん、まぁ、それは、うん」
お互いに黙ってしまう。
でもね、ジゼルちゃん。まださらにこの上でひとつあることを足すと、全部また変わるのだ。
よくあるじゃない。
ほら、性別を偽って育てられた王子的な話が。
そう言うと、そんな話聞いたことなんてないと返された。
えー!
「えっ!? ない? おとぎ話とか流行の小説とか」
「私が読んでいたのは古典などなので……その、一般大衆的なものは……」
「えええええ、もったいない!! 面白いのよ、読もう!」
「そ、そんなに?」
「恋物語! ロマンス! 絶対、好き」
レティがそこまで言うなら、とどこかそわそわした様子でジゼルちゃんは頷く。
あ、これ絶対はまるやつ。
でもまぁその話はおいといて!
「だから私が思うに、第一王子は王位をつがない。王様も了承してる、殿下もわかってる。でも貴族は知らない、というのは事実」
「はい」
「その原因が第一王子が実は第一王女だったとする。この国の家督は男子だから」
「そうですね……そもそも継承権がありません」
「そう。だから人前にも出てこないんじゃないかなぁって、ちょっと考えてみたの」
と、この考えに至ったのは本当にぱらっと手に取った恋愛小説の設定がこれだったから。
まぁそれは、王女が王子で、騎士が令嬢だったって感じなんだけども。いやほんと紆余曲折を経て二人がくっつくまでがお前らいい加減にしろみたいな……それは今は、おいといて。
これについては殿下に聞いてもきっとなんの冗談かな、ってはぐらかされる可能性も高い。
「つまりレティは、第一王子のデジレ様が実は女子で。何らかの理由で男子として育ったけど王位を継ぐわけにはいかないので、第二王子の殿下が王位を継ぐ。それは王家内では決まっている事だから問題はない」
「そうそう」
「けど、貴族はそうはいかなくて派閥がある。問題が問題なだけに私たちもお父様に言えることではないですね……」
「うんうん」
「あとデジレ様が何故、怪盗をしているかですね……」
「え、それは多分」
「多分?」
楽しそうだったから、じゃないかなぁ……と、私が言うとジゼルちゃんは瞬く。
そんな理由、あるはずがないといった感じだ。
いやいや、あるときはあるよ。
お兄様系の方だったら楽しそうだったからは可能性として十分にあるよ。
そして夜会に現れたのも、気が向いたからだとか。そういう感じも全然あり得ると私は思う。
だって、別段これといった理由とか、まったくないとは言わないけど。
でもそういう軽いノリなんじゃないかな、と思う。
「これはもう一度殿下に尋ねるしかないですね」
「かなー」
「私たちが変に調査をして、どこかから情報が漏れるよりは、と思います」
「うん、確かに……」
なんだかんだ言って、私たちはまだ子供だ。
できること、できないことはある。
この前のことでちょっとは私も学習しているのです!
「で、でもレティの言うことが本当なら……それはそれで」
「そうね。でもお兄様が本当に懸想しているなら、王女様の方がいいんじゃない?」
「…………そうですね。抵抗があるわけではないのですが」
「私もー。好きなら性別なんて、って思うけどなんかこう、その」
「はい、言葉にできない何かこう」
うんうん、そうそう。
言葉にできないんだけどなんかこう。
なんかこう……想像できないというか。お兄様が右なの左なのと前世知識がある分、なんかこう。
こう!!! 考えちゃうじゃない!!!
何がどうなっても、お兄様の事好きだから嫌いになることはないと思うけど、それとこの気持ちの何かは別問題だと思う。
ええ、本当に。
けどお兄様もお兄様も大変じゃないかしらこれ。
私たちの想像、妄想が本当だった場合。
お兄様の好きな相手は王族。そうそうかなうものではないんじゃないかなぁと思うけど。
お兄様だしな……と、うん。
そしてテオと別れて部屋に戻る。もちろんジゼルちゃんに報告だ。
「ああ、スカイブルー……それは、トリスタン様にどうお伝えするか……」
「でもまだ同一人物じゃない可能性もあるし!」
「そうですが……でも王宮に自由に出入りができるとなると、それはかなり」
「うん、まぁ、それは、うん」
お互いに黙ってしまう。
でもね、ジゼルちゃん。まださらにこの上でひとつあることを足すと、全部また変わるのだ。
よくあるじゃない。
ほら、性別を偽って育てられた王子的な話が。
そう言うと、そんな話聞いたことなんてないと返された。
えー!
「えっ!? ない? おとぎ話とか流行の小説とか」
「私が読んでいたのは古典などなので……その、一般大衆的なものは……」
「えええええ、もったいない!! 面白いのよ、読もう!」
「そ、そんなに?」
「恋物語! ロマンス! 絶対、好き」
レティがそこまで言うなら、とどこかそわそわした様子でジゼルちゃんは頷く。
あ、これ絶対はまるやつ。
でもまぁその話はおいといて!
「だから私が思うに、第一王子は王位をつがない。王様も了承してる、殿下もわかってる。でも貴族は知らない、というのは事実」
「はい」
「その原因が第一王子が実は第一王女だったとする。この国の家督は男子だから」
「そうですね……そもそも継承権がありません」
「そう。だから人前にも出てこないんじゃないかなぁって、ちょっと考えてみたの」
と、この考えに至ったのは本当にぱらっと手に取った恋愛小説の設定がこれだったから。
まぁそれは、王女が王子で、騎士が令嬢だったって感じなんだけども。いやほんと紆余曲折を経て二人がくっつくまでがお前らいい加減にしろみたいな……それは今は、おいといて。
これについては殿下に聞いてもきっとなんの冗談かな、ってはぐらかされる可能性も高い。
「つまりレティは、第一王子のデジレ様が実は女子で。何らかの理由で男子として育ったけど王位を継ぐわけにはいかないので、第二王子の殿下が王位を継ぐ。それは王家内では決まっている事だから問題はない」
「そうそう」
「けど、貴族はそうはいかなくて派閥がある。問題が問題なだけに私たちもお父様に言えることではないですね……」
「うんうん」
「あとデジレ様が何故、怪盗をしているかですね……」
「え、それは多分」
「多分?」
楽しそうだったから、じゃないかなぁ……と、私が言うとジゼルちゃんは瞬く。
そんな理由、あるはずがないといった感じだ。
いやいや、あるときはあるよ。
お兄様系の方だったら楽しそうだったからは可能性として十分にあるよ。
そして夜会に現れたのも、気が向いたからだとか。そういう感じも全然あり得ると私は思う。
だって、別段これといった理由とか、まったくないとは言わないけど。
でもそういう軽いノリなんじゃないかな、と思う。
「これはもう一度殿下に尋ねるしかないですね」
「かなー」
「私たちが変に調査をして、どこかから情報が漏れるよりは、と思います」
「うん、確かに……」
なんだかんだ言って、私たちはまだ子供だ。
できること、できないことはある。
この前のことでちょっとは私も学習しているのです!
「で、でもレティの言うことが本当なら……それはそれで」
「そうね。でもお兄様が本当に懸想しているなら、王女様の方がいいんじゃない?」
「…………そうですね。抵抗があるわけではないのですが」
「私もー。好きなら性別なんて、って思うけどなんかこう、その」
「はい、言葉にできない何かこう」
うんうん、そうそう。
言葉にできないんだけどなんかこう。
なんかこう……想像できないというか。お兄様が右なの左なのと前世知識がある分、なんかこう。
こう!!! 考えちゃうじゃない!!!
何がどうなっても、お兄様の事好きだから嫌いになることはないと思うけど、それとこの気持ちの何かは別問題だと思う。
ええ、本当に。
けどお兄様もお兄様も大変じゃないかしらこれ。
私たちの想像、妄想が本当だった場合。
お兄様の好きな相手は王族。そうそうかなうものではないんじゃないかなぁと思うけど。
お兄様だしな……と、うん。
11
お気に入りに追加
3,171
あなたにおすすめの小説
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?
カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。
ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を
助けようとして、事故死。
その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。
魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。
ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!
婚約破棄されて田舎に飛ばされたのでモフモフと一緒にショコラカフェを開きました
碓氷唯
恋愛
公爵令嬢のシェイラは王太子に婚約破棄され、前世の記憶を思い出す。前世では両親を亡くしていて、モフモフの猫と暮らしながらチョコレートのお菓子を作るのが好きだったが、この世界ではチョコレートはデザートの横に適当に添えられている、ただの「飾りつけ」という扱いだった。しかも板チョコがでーんと置いてあるだけ。え? ひどすぎません? どうしてチョコレートのお菓子が存在しないの? なら、私が作ってやる! モフモフ猫の獣人と共にショコラカフェを開き、不思議な力で人々と獣人を救いつつ、モフモフとチョコレートを堪能する話。この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる