転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第一章

天の助け

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 ジゼルちゃんが近づいてくることにお兄様と殿下も気付く。
 けど、この人は気付かない。一方的に何かいってるけど右から左だ。
「お話し中失礼いたします」
 ジゼルちゃんは少し離れたところで足を止め、一礼する。
 お兄様と殿下がそれに反応したのを確認して一歩、近づき名前と、家を名乗った。
 そして友との語らいを許してくださいますかと許可をまずとる。
 お兄様と殿下が頷くと、ジゼルちゃんはそこで初めて、私に視線を向けた。
「お久しぶりです。お時間よろしいですか?」
「ええ、もちろんです」
 私はお兄様たちに視線向けて失礼しますと告げた。
 わぁいジゼルちゃんと脱出!! と、きゃっきゃしたのも束の間。
「ちょっとお待ちになって! あなた失礼じゃありません?」
 食い下がってこられた!!
「突然現れて妹君を連れていくなんて……お話していましたのよ?」
 んんんん、お話などしておりません。
 あなたとはしておりません!!
 不機嫌顔でジゼルちゃんに迫る。ジゼルちゃんはそれに笑顔で対抗した。
「申し訳ありません、気が付きませんでした。次から気を付けます」
 笑顔で丁寧に謝罪する。わかったならいいのよと吐き捨てて、彼女はまたお兄様たちのほうに向きなおった。
「いきますよ、レティ」
 こそっとジゼルちゃんは言う。こんなところに長居は無用ということだ。
 うん、と私は頷いてそしてテオを呼ぶ。
 テオもこの流れをみていたのだからどうするかはわかっていた様子。
 ではでは、お兄様。また今度ー! と心の中で私は盛大に手を振る。
 お兄様と殿下からの突き刺さるような視線は気にしない。一人だけ逃げるのか、ってやつですね。
 そして、まだ騒がしい場所から離れて、どちらの姿も見えなくなってから。
「ジゼルちゃんありがとう、助かったわ!」
「困ってそうでしたものね。あの方、良い話聞きませんもの」
「あれ、知ってるの?」
 ええ、とジゼルちゃんは言う。
 ジュリア・ベイル。それが彼女の名前だ。家は男爵家で、最近よくない話を多く聞く家らしい。
「きっとお二人なら上手にあしらうでしょう」
「そうね。テオもよく我慢してたわね」
「あそこで僕がでるともっとややこしいことになってましたよ」
 ああいう人もやっぱりいるんですねとテオはあきれたような声色だ。
 あ、従者モードもとけてる。
「じゃあレティ、テオ君、いきましょうか」
「え?」
「どこにですか?」
「最近はやりのお店! 並ばないといけないからベルを行かせました」
 さすがジゼルちゃん。それ、面倒事に首突っ込みそうなベルがいたら、もっともめたはずだ。
 面倒事の中にあるのを知ってか知らずか、あの場から離しておいたジゼルちゃんはさすがだとしか言いようがない。
「ベル、まだかまだかとイライラしてるでしょうね」
「そうね、だから早くいってあげましょう」
 幸いお店は歩いてすぐとのこと。お迎えについてはジゼルちゃんちの執事さんがすでに我が家に届けたとか。
 もう最初から一緒に行くこと決定だったわけだ。
 でもいろいろおしゃべりしたいし、嬉しいことに変わりない。こういうお誘いは喜んで! なのだから。
「あ、でも今度ちゃんと、お兄様を紹介してくださいね。ちゃんとご挨拶したことないので」
「お兄様を紹介……うぅん……紹介していいのかしら」
 猫かぶりお兄様が猫かぶりやめたのみたらジゼルちゃんどんな反応するかなぁと思う。
 想像してみる。あ、なんか別に問題なさそう。じゃあいいかな、という結論だ。
「お兄様に今度、話しておくわ」
 まぁきっと、入学したら関わることになるだろうし。
 ジゼルちゃんがうれしいというのなら、私も嬉しい!
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