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62.最終話
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いやぁ~…、燃えたわー……。
日が沈みかけ、オレンジ色の光がカーテンの隙間からほんの少し差し込む寝室。俺の愛しい颯太は気絶するように意識を失い、スヤスヤと眠っている。
「………………。」
そうっと体を拭いてやり、ブランケットをかける。……ドエロかったなぁ……颯太……。元々そんなに何度もイくほど体力ないはずの颯太が、我を忘れて声を上げながら、何度も何度も達していた。普段はあんなに大人しくて理性的なお利口颯太が、自分から足を開いて腰をくねらせながら俺のモノを早く早くとねだる姿はもう……。思い出すだけで鼻血が出そうだ。1年我慢した甲斐があった。全てが報われた気分だ。
しばらくその可愛い寝顔を堪能して、俺はベッドを降りた。その瞬間、膝がカクンッと折れて無様によろけた。
「おふっ」
あ、足腰が……、足腰が立たねぇ……。体力の限界を越えてヤりまくったもんだから、もう体中がミシミシガクガクいっている。まぁいい。これも歓びの代償だ。
俺は颯太を起こさないようにヨロヨロと寝室を出て、シャワールームに向かった。デカくて広くて全ての設備が最新で、文句なしの素晴らしい物件だが、こんな時は全ての部屋が遠いのが難点だな…。壁に時々手を添えながら、どうにかシャワールームまで辿り着いた。
颯太の不在の寂しさを紛らわそうと、俺は1年かけてあらゆるめぼしい部屋を見て回った。仕事の合間のわずかな時間を見つけては不動産屋と部屋巡り。帰国した颯太を最高の新居で迎えてやろうと、これでもかと高級マンションを探し回り、ようやく決めたのがここだ。有名人が多く住んでいて、セキュリティ対策もバッチリ。帰ってくる前に、すぐ住めるように部屋を整えておいて颯太を驚かせようと家具も何もかも揃えておいたのだ。もう今日からでも住める。まぁ一度は実家に顔出したいだろうからな。颯太の荷物も運び込まないと。
シャワーで汗を流してミネラルウォーターを取ってきて、寝室にそっと戻る。颯太はまだスヤスヤと眠っている。もう叫びたいくらいに可愛い。やっとだ。長い道のりだった…。これからここで、二人で一緒に暮らすんだ。
「…………ん……」
あ、起きそう。
もぞもぞと動き出した颯太が、うっすらと目を開ける。ぽやんとしているが、俺の姿を見ると、じぃっとこっちを見ている。可愛い。
「…よぉ。ルームツアーでもするか?この新居の」
颯太は無言でゆっくりと起き上がった。
「………………あ、……歩けるかな、俺…」
「ふ…」
俺は颯太の隣に座り、頬にキスをする。
「たっぷり発散したな、お互いに」
「……っ。…………うん」
真っ赤になってブランケットを引き上げて顔を隠す颯太が可愛い。1年ぶりの颯太はもう何をしていても可愛い。
「…………なぁ」
「……ん?」
俺は颯太の頬や首筋にチュッチュッと唇をくっ付けながら言った。
「……荷物、できるだけ早く運び込めよ。もう逃がさないからな」
「に、逃げないよ」
「……愛してる」
「……うん、知ってる。俺もだよ、樹」
樹は嬉しそうに俺の頬に手を当てると、ニッコリと幸せそうに笑いながら、そっと唇を重ねてくる。目を閉じてそれを受け入れながら、俺も幸せを噛みしめていた。
その後。
「ね、ねぇっ!樹っ!」
「んあ?」
「み、見たっ?…今すれ違った人。モデルの清崎葵だよ」
「あぁ、うん、知ってる。ここに住んでるみたいだな。さっきの黒髪の恋人と一緒にいるところ前にも見かけたことあるよ」
「へぇ…っ!」
マンション1階のロビーですれ違った美貌のモデルに驚いたらしい颯太は目を輝かせている。俺は少しだけむっとしながらエレベーターのボタンを押した。
「何喜んでんだよ」
「…えっ?何が」
「他の男にときめいてんじゃねーよ」
「っ?!な、何言ってるんだよ!ただ有名人に会ったからビックリしただけじゃん!……そ、……そっちこそ……」
「?……何だよ」
「何?さっきの黒髪の恋人って。しっかり覚えちゃってさ」
「…………あ?……え?お、お前、…ヤキモチ焼いてんの?」
颯太は真っ赤な顔をして俺からプイッと顔を背ける。……すげぇ可愛い。思わずムラッとする。
エレベーターに乗り込んでも目を合わせようとしない。可愛くて可愛くて、ついニンマリしてしまう。
「……はぁ。……幸せだなぁ……」
「…?何が?」
「颯太にヤキモチ焼かれてる……」
「べっ!!べつに焼いてないから!!」
「ほんと可愛いなお前」
「……くっ……」
真っ赤な顔でいじけてしまった颯太は、25階に着いてからも一言も話さずスタスタ先に歩いていく。
部屋に入って、買い物してきたものを颯太がテキパキと片付けている間に、俺はコーヒーを入れる。
「……颯太」
「……。」
「……こっち来いよ。コーヒー入れたぞ。ほら、お揃いのマグカップだぞー」
「……。」
いじけていた颯太はチラリとローテーブルの上を見ると途端に機嫌を直してスタスタと近寄ってくる。
…………はぁ。ホントもう…………。
「……ふふ。いただきまぁす」
淡いグリーンの陶器のマグカップを嬉しそうに持ってコーヒーを飲む颯太。可愛くて愛おしくてたまらなくて、胸が締めつけられる。俺が一生守っていくんだ。この笑顔を。
「…………なぁ」
「ん?」
「買い出し、疲れたな」
「そう?今日はホームセンターとスーパーしか行ってないし、そんなに…」
「休憩したいだろ?」
「……っ、」
俺の言いたいことを察したらしい颯太の顔がほんのりと赤くなる。
「…行こう、ベッド」
俺が促すと、颯太は自分のグリーンのマグカップを、テーブルの上の淡い水色のマグカップの横に大切そうにそっと並べて置いた。
ーーーーーー end ーーーーーー
読んでくださってありがとうございました!
日が沈みかけ、オレンジ色の光がカーテンの隙間からほんの少し差し込む寝室。俺の愛しい颯太は気絶するように意識を失い、スヤスヤと眠っている。
「………………。」
そうっと体を拭いてやり、ブランケットをかける。……ドエロかったなぁ……颯太……。元々そんなに何度もイくほど体力ないはずの颯太が、我を忘れて声を上げながら、何度も何度も達していた。普段はあんなに大人しくて理性的なお利口颯太が、自分から足を開いて腰をくねらせながら俺のモノを早く早くとねだる姿はもう……。思い出すだけで鼻血が出そうだ。1年我慢した甲斐があった。全てが報われた気分だ。
しばらくその可愛い寝顔を堪能して、俺はベッドを降りた。その瞬間、膝がカクンッと折れて無様によろけた。
「おふっ」
あ、足腰が……、足腰が立たねぇ……。体力の限界を越えてヤりまくったもんだから、もう体中がミシミシガクガクいっている。まぁいい。これも歓びの代償だ。
俺は颯太を起こさないようにヨロヨロと寝室を出て、シャワールームに向かった。デカくて広くて全ての設備が最新で、文句なしの素晴らしい物件だが、こんな時は全ての部屋が遠いのが難点だな…。壁に時々手を添えながら、どうにかシャワールームまで辿り着いた。
颯太の不在の寂しさを紛らわそうと、俺は1年かけてあらゆるめぼしい部屋を見て回った。仕事の合間のわずかな時間を見つけては不動産屋と部屋巡り。帰国した颯太を最高の新居で迎えてやろうと、これでもかと高級マンションを探し回り、ようやく決めたのがここだ。有名人が多く住んでいて、セキュリティ対策もバッチリ。帰ってくる前に、すぐ住めるように部屋を整えておいて颯太を驚かせようと家具も何もかも揃えておいたのだ。もう今日からでも住める。まぁ一度は実家に顔出したいだろうからな。颯太の荷物も運び込まないと。
シャワーで汗を流してミネラルウォーターを取ってきて、寝室にそっと戻る。颯太はまだスヤスヤと眠っている。もう叫びたいくらいに可愛い。やっとだ。長い道のりだった…。これからここで、二人で一緒に暮らすんだ。
「…………ん……」
あ、起きそう。
もぞもぞと動き出した颯太が、うっすらと目を開ける。ぽやんとしているが、俺の姿を見ると、じぃっとこっちを見ている。可愛い。
「…よぉ。ルームツアーでもするか?この新居の」
颯太は無言でゆっくりと起き上がった。
「………………あ、……歩けるかな、俺…」
「ふ…」
俺は颯太の隣に座り、頬にキスをする。
「たっぷり発散したな、お互いに」
「……っ。…………うん」
真っ赤になってブランケットを引き上げて顔を隠す颯太が可愛い。1年ぶりの颯太はもう何をしていても可愛い。
「…………なぁ」
「……ん?」
俺は颯太の頬や首筋にチュッチュッと唇をくっ付けながら言った。
「……荷物、できるだけ早く運び込めよ。もう逃がさないからな」
「に、逃げないよ」
「……愛してる」
「……うん、知ってる。俺もだよ、樹」
樹は嬉しそうに俺の頬に手を当てると、ニッコリと幸せそうに笑いながら、そっと唇を重ねてくる。目を閉じてそれを受け入れながら、俺も幸せを噛みしめていた。
その後。
「ね、ねぇっ!樹っ!」
「んあ?」
「み、見たっ?…今すれ違った人。モデルの清崎葵だよ」
「あぁ、うん、知ってる。ここに住んでるみたいだな。さっきの黒髪の恋人と一緒にいるところ前にも見かけたことあるよ」
「へぇ…っ!」
マンション1階のロビーですれ違った美貌のモデルに驚いたらしい颯太は目を輝かせている。俺は少しだけむっとしながらエレベーターのボタンを押した。
「何喜んでんだよ」
「…えっ?何が」
「他の男にときめいてんじゃねーよ」
「っ?!な、何言ってるんだよ!ただ有名人に会ったからビックリしただけじゃん!……そ、……そっちこそ……」
「?……何だよ」
「何?さっきの黒髪の恋人って。しっかり覚えちゃってさ」
「…………あ?……え?お、お前、…ヤキモチ焼いてんの?」
颯太は真っ赤な顔をして俺からプイッと顔を背ける。……すげぇ可愛い。思わずムラッとする。
エレベーターに乗り込んでも目を合わせようとしない。可愛くて可愛くて、ついニンマリしてしまう。
「……はぁ。……幸せだなぁ……」
「…?何が?」
「颯太にヤキモチ焼かれてる……」
「べっ!!べつに焼いてないから!!」
「ほんと可愛いなお前」
「……くっ……」
真っ赤な顔でいじけてしまった颯太は、25階に着いてからも一言も話さずスタスタ先に歩いていく。
部屋に入って、買い物してきたものを颯太がテキパキと片付けている間に、俺はコーヒーを入れる。
「……颯太」
「……。」
「……こっち来いよ。コーヒー入れたぞ。ほら、お揃いのマグカップだぞー」
「……。」
いじけていた颯太はチラリとローテーブルの上を見ると途端に機嫌を直してスタスタと近寄ってくる。
…………はぁ。ホントもう…………。
「……ふふ。いただきまぁす」
淡いグリーンの陶器のマグカップを嬉しそうに持ってコーヒーを飲む颯太。可愛くて愛おしくてたまらなくて、胸が締めつけられる。俺が一生守っていくんだ。この笑顔を。
「…………なぁ」
「ん?」
「買い出し、疲れたな」
「そう?今日はホームセンターとスーパーしか行ってないし、そんなに…」
「休憩したいだろ?」
「……っ、」
俺の言いたいことを察したらしい颯太の顔がほんのりと赤くなる。
「…行こう、ベッド」
俺が促すと、颯太は自分のグリーンのマグカップを、テーブルの上の淡い水色のマグカップの横に大切そうにそっと並べて置いた。
ーーーーーー end ーーーーーー
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