ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

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 俺の中の一番古い記憶の時から、そうちゃんはずっと俺と一緒にいる。

 俺とそうちゃんは同じマンションの同じ3階に住んでいて、同じ幼稚園に通っていた。同い年で、同じクラス。しかもお互いに一人っ子。母親同士は子どもの入園を機に同じフロアにこんなに共通点がある親子が住んでいると知ってすぐに意気投合したそうだ。
 
 覚えているのは、園バスに並んで座っているそうちゃんの横顔。教室で机を並べて弁当を食べているそうちゃんの横顔。クレヨンで絵を描いているそうちゃんの横顔。いつもそうちゃんの隣にいた俺は、そうちゃんの横顔ばかり記憶に残っている。

 “たきみやそうた”と、“たちもといつき”。
 五十音順でもいつも名前が前後に並ぶ。俺はそうちゃんのことが大好きで、いつもそうちゃんの傍にいた。そうちゃんは小さい頃から物静かで、優しくて、とても可愛い顔をしていた。色白で、肌がつるつるしていて、目がキラキラで。なんかお人形みたいだな、と思うことがあった。四六時中一緒に遊んでいたのに、ケンカなんてしたこともなかった。

「いっくんはスポーツが大好きで、そうちゃんはお絵かきが大好きで、好きなことや性格は全然違うのに、本当に仲良しさんですよねぇ」
「そうなんですよー。滝宮さんともいつも話してるんです。大人しいそうちゃんとうちのちゃらんぽらんな樹とじゃ全然タイプが違うのに、不思議と仲良しよねぇって」
「ふふふ。すごいですよね。園でもいつも二人はニコイチってかんじですよ」

 いつだったか、母親とクラスの先生がこんな話をしていた。二人を見上げてその会話を聞いていた俺は先生に尋ねた。

「せんせー。ニコイチってなあに?」
「ああ、ふふ。えっとねぇ、二人で一つっていうか…、とっても仲が良くて二人はセットってかんじがするよね、って意味よ」

そう言いながら先生は自分の両手の人差し指を真ん中でぴょんとくっつける仕草をした。
 先生のくっついた人差し指を見ながら、俺は心の中でその単語を繰り返した。ニコイチ。二人で一つ。その表現に俺は満足した。そうだ。俺とそうちゃんは二人で一つ。いつも一緒なんだ。これからもずっと。
 自分でも不思議なくらいに、俺はその頃からそうちゃんのことが好きで好きでたまらなかった。一緒に遊んで楽しい友達は他にもたくさんいたが、そうちゃんだけは別格だった。

 園庭でダンゴムシを探しているときに、そうちゃんに言った。

「そうちゃん!あのね、僕たちはニコイチなんだよ」
「…ニコイチってなあに?」

 可愛いそうちゃんが小首をかしげる。

「えっとねー、…んー…、あのね…」

 先生から聞いた表現を忘れてしまった俺は言った。

「いつもずーっと一緒ってこと!」
「そっかー。ふふ」

 そうちゃんはニコニコ笑っていた。その笑顔が本当に本当に可愛くて。小さい俺は思わずそうちゃんをぎゅっと抱きしめてほっぺに思いっきりキスしたくなったけど、我慢して言った。

「ずっとずーっと一緒にいようね、そうちゃん!」
「うん。僕いっくんとずっと一緒にいるよ」

 そうちゃんのその返事を聞いて俺は嬉しくてたまらなかった。そうちゃんさえいれば毎日幸せだった。


 幼稚園に通っていた三年間、俺たちは同じクラスだった。そして小学校の入学式の日。学校の掲示板に貼り出されていたクラス分けの名簿を見た母が、

「あら!またそうちゃんと同じクラスよ!すごいわねぇ樹。これで4年連続じゃない」

 そう言って笑った。

「本当?どれ?どこ?」
「ほら、ここよ。これがそうちゃんの名前で、これが樹の名前」

 掲示板を指差して母が教えてくれた。

 “滝宮颯太” “立本樹”

 そうか。あれが俺たちの名前なのか。難しい漢字を見て俺はそう思った。横で一緒に見ていたそうちゃんとそうちゃんのお母さんも驚きながら喜んでいた。

「よかったわねぇ颯太。またいっくんと同じクラスだって」
「うんっ!」

 はにかんだようにニコニコ笑うそうちゃんに俺は抱きついた。

「やったー!そうちゃんと一緒!そうちゃんと一緒!」
「こら!止めなさい樹!そうちゃんのスーツが皺になっちゃうでしょう」

 母が俺のスーツの背中をグイッと引っ張って引き離す。そうちゃんのお母さんはクスクス笑っていた。

 入学して最初の席順は案の定五十音順だった。俺は初めて小学校の教室に入り、自分の席に座り、そうちゃんの後ろ姿を少しドキドキしながら見ていた。これからの小学校生活もそうちゃんとずっと一緒に過ごせるのだと思うと、緊張よりも楽しみな気持ちの方がはるかに勝った。

 俺は何一つ疑ってはいなかった。
 俺とそうちゃんは、永遠に離れることはないのだと。
 大きくなっても、大人になっていつかおじいちゃんになっても、ずっとずっと一緒にいるのだと。まるで家族のように。
 何の根拠もないのに、小さな俺は何故だかそう信じていた。

 俺はあの頃から、そうちゃんのことが好きでたまらなかったのだ。




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