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リベンジ!!クリスマス☆③

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「楽しかったなー、今年のクリスマス」

 マンションのエントランスを入った美晴はすでにもう今日が終わったかのような口ぶりで、エレベーターホールに向かう。

「そうか?ならよかったよ」

 俺もあえて合わせる。

「はい。僕ね、こんなにクリスマスイブの夜を満喫したのって初めてなんです。クリスマスって僕にとっては家族でチキンとケーキを囲んで過ごすもので……、もちろん、子どもの頃はそれはそれですごく楽しかったけど、……こうやって、好きな人と一緒にイルミネーションを見て、プレゼントを渡して……。…恋人同士のクリスマスって、いいですね」
「……そうか」
「ふふっ……。響さんにとってはきっとそんなに特別なものじゃないでしょうけど」
「そんなことねぇよ」

 どうやら大輝とはクリスマスを一緒には過ごしていないらしい。恋人と過ごすクリスマスという初体験の相手が自分であることにひそかに喜びをおぼえる。

 エレベーターで上がり、いつものように喋りながらマンションの廊下を歩く。部屋の前まで辿り着くと、俺は鍵を開けながら美晴に尋ねた。

「一日中外で過ごして疲れただろ?ゆっくりしようぜ」
「はいっ」

 美晴がニコニコ答える。俺はドアを開けて美晴を中に通した。

「……?あれ、……響さん、リビングの電気、つけっぱなしじゃないですか?……ん??」

 奥の部屋からゆらゆらとした光が見えていることに戸惑う美晴。明らかにいつものリビングの雰囲気とは違う。

「いいから靴脱げよ」
「ん……っ??」
「ほら」

 どうやらリビングの灯りではないらしいと気付いた美晴が怖がって固まっている。俺は美晴の靴を脱がせ、手を繋いでリビングまで連れて行き、ドアを開けた。

 その瞬間、

「────っ!!……う、……わぁ……っ!!…………ひ、……ひゃぁぁぁっ!!」

 美晴がすごい声を上げる。

 広いリビング一面が、まるで別世界のようだった。全ての壁と、天井や床のラグの上まで、美しいクリスマスの装飾が施されている。派手すぎないイルミネーションのオレンジがかった暖かな灯りが周囲で揺らめき、赤や緑のたくさんの可愛らしい飾り付けで彩られていた。
 そして部屋の中央には、天井まで届きそうな大きなツリー。
 赤とゴールドのオーナメントでまとめられた深い緑のツリーの足元には、たくさんのぬいぐるみたち。二人の思い出のねずみの夢の国ランドのキャラクターたちが、ツリーを背にして周りをぐるりと囲んで楽しそうな表情で座っている。

「………………ふ……、」
「気に入ったか?」
「………………っ、」

 美晴はリビングの入り口から一歩も動かず、両手で口元を押さえたままポロポロと涙を零している。

「なぁ、美晴」

 俺は美晴の体を自分の方に向かせ、その涙を拭いながら言った。

「俺にとっても初めてだし、特別だよ」
「…………っ、……ひく」
「クリスマスなんて別にそんな特別な日じゃなかったからな、今までは。こんなに心底好きになった子と一緒に過ごせて、どうにかして喜ばせてやりたくて……。二人きりの特別な夜にしたくて。……初めてだよ、俺にとってもな」
「ひ…………ひび、…………う、……う゛ぅっ……」
「メリークリスマス、美晴。……毎年俺のそばにいてくれよ。この日だけじゃなくて、いつも、どんな日でもな」
「ふっ……、……う、…………っ、」

 言葉にならない美晴はまだポロポロ涙を零しながら何度も頷くと、そのまま俺の胸に飛び込んできた。俺の背中に腕をまわしてぎゅっとしがみつき、ヒクヒク震えながら泣いている。

(……どこまで可愛いんだ、こいつは……)

 俺はその小さな体を優しく抱きしめ、この想いが全部伝わるようにと祈りを込めて、美晴の頭のてっぺんに唇を押し当てた。





「……すっごいなぁ……。……どうしたんですか?これ…」

 ようやく落ち着いた美晴は、ツリーのために隅っこに追いやられたローテーブルとソファーのところにちょこんと座ってポカンと口を開けながら、飾り立てられたリビングを見渡している。

「ツテを使ってな。知り合いのインテリアコーディネーターとそのスタッフの子たちが頑張ってくれた」
「ひぇ…」
「お前を午前中から追い出したのはこのためだ。ちなみに大輝もこの演出を成功させるために俺が頼んでわざわざ帰国してもらったんだぞ」
「え…………えぇっ?!そっ、そうなんですかぁ?!」

 美晴はひっくり返りそうなほど驚いている。やっぱり何かおかしいとは少しも思っていなかったようだ。

「……すごい……。本当にビックリしました。まさか、……こっ…………こんなに……」

 また美晴の目が潤んできた。

「ふ、もういいって。そんなに泣くなよ。それよりほら、あのぬいぐるみたちと戯れてこいよ」
「……なんでぬいぐるみと戯れるんですか…………ぐすっ」
「似合うからだよ。お前らしいだろ。思い出のねずみの国のヤツだぞ」
「ふふ。うん、そうですね。……楽しかったなぁ、あの時も……。響さんがお土産いっぱい買ってくれたし、……それに……」
「……。それに、何だよ」
「…………。すごいドキドキした。あの時…」
「…………ああ」

 そうだったな。あの時。
 声をかけてきた女の子たちを追っ払うために、まだ付き合ってもいなかった美晴の額にキスをしたんだっけ。

「心臓が破裂しちゃうかと思ったんですよ。僕、あの時はもう、響さんのこと大好きだったから…」
「えっ!……マ、マジか」
「……。……うん」
「えっ、マジで?!そうなの?……い、いつから…」
「……。」

 顔を真っ赤にした美晴はすちゃっ、と立ち上がるとスタスタとツリーの方に歩いて行った。

「お、おい。肝心なところ話せよ…」
「ふふっ。可愛いなぁ全部。…こんなのもたくさん用意してくれてたんですね……嬉しい……」

 ごまかすように立ち上がった美晴だったが、ぬいぐるみを一つ一つ手に取ってはたった今の会話のことを忘れてしまったようにニコニコしている。
 まったく……教えてくれよそこんとこ……。

「…………あれっ?……この子……これ…」

(あ、やっと気付いたか)

 いろんなキャラクターのぬいぐるみたちが並んでいる中で、俺たちがお揃いで持っているあの二匹のウサギたちのぬいぐるみを見つけた美晴はピタリと動きを止めた。まじまじと見つめている。

「何ですか?これ。この子が持ってるの…」
「さぁな。お前にプレゼントじゃねーの?」
「……えっ」
「開けてみろよ」
「……響さん…」

 水色のウサギの方に持たせておいたその小さな箱を、美晴はおそるおそるといった感じでそっと取り上げる。そして上品なネイビーブルーのその箱をゆっくりと開けた。

「………………っ!」

 中を見た美晴の瞳が揺れ、息を呑む唇が少し震えた。
 そこには俺からのプレゼントであるペアリングが入っていた。王道中の王道だが、いろいろ考えた結果これしかないという結論に達した。俺の気持ちを美晴に伝えるのにこれ以上のものはない。俺は美晴のそばに行き隣に座ると、その手にある小さな箱をそっと受け取った。そして美晴の左手をとる。

「俺のお前への気持ちの証だ。……つけてくれるか?美晴」
「…………っ、……はい……っ」

 美晴はまたその綺麗な瞳に涙を浮かべながら、震える声で返事をした。俺は微笑むと、細い薬指に優しくそっと、小さい方の指輪をつけた。白い指に銀色の艶やかな光がとても似合っている。俺はその手を自分の唇にゆっくりと押し当てた。

「……っ!……ひびきさん……」
「……愛してるよ、美晴。……これでもう一生、俺のものだ」
「…………ふ、…………はい……」

 美晴は嬉しそうにそう答えると、もう一つの指輪を同じように俺の左手の薬指にはめた。

「……すごく綺麗……。似合ってる、響さん」
「お前もな」
「ありがとう、響さん。…一生外さないから」
「ああ。……俺もだよ」

 手を伸ばし、その華奢な体を抱き寄せて唇を近づけると、俺を見つめていた美晴はそっと目を閉じた。触れ合った瞬間、美晴は俺の首に腕をまわしてきゅ、と抱きしめてくる。その仕草が可愛くて、俺はますます力を込めて美晴を抱きしめる。体温を与えあうように何度も何度も繰り返すキス。美しく彩られた暖かい部屋の中で、俺たちは互いの想いを感じ、幸せをかみしめた。

 唇が離れた瞬間、美晴は俺の頬にピタリと自分の頬を寄せ、耳元で甘くささやいた。

「愛してます、響さん。僕をこんなに幸せにしてくれて、ありがとう」



   ーーーーー end ーーーーー




 更新終わります(^^)
 最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました!



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感想 2

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みんなの感想(2件)

まぁや
2022.12.27 まぁや

初めましてこんばんは
完結おめでとうございます♡
とっても素敵なお話をありがとうございます!

リベンジクリスマスはにやにやしながら拝読させて頂きました
2人ともかーわーいー♡♡♡
リベンジ大成功して良かったです( *´꒳`*)

毎日更新を楽しみにしていたので明日から寂しいです(;´д`)
新連載や既存の追加エピソード等楽しみにお待ちしてますね
寒さと年末年始のお忙しい中ですが体調にお気を付けて無理ない執筆応援してま~す\( ´ω` )/

紗々
2022.12.27 紗々

まぁやさま

読んでくださってありがとうございました!
楽しんでいただけて嬉しいです。

このお話は本編だけ書いて終わるつもりでいたのですが、1件感想をいただけたことが嬉しくて調子に乗って後日談まで書きました(≧∇≦)笑
他にも楽しんでくださった方がいるのだと思うともう……感無量です(;_;)♡

お優しい感想をありがとうございました。また頑張ります~!

解除
mm
2022.12.11 mm

いつも読ませていたいただきありがとうございます!めちゃくちゃドキドキします💓響の葛藤が、、カッコいいのに素敵すぎます‼︎続き楽しみに待ってます😊

紗々
2022.12.16 紗々

mmさま

すみません!感想をいただいていることに今さら気付きました……
もはや自己満足のように書いている私の作品ですが、読んでくださっている方がいてすごく嬉しいです~!完結までちゃんと書きますので、よければもうしばらくどうぞお付き合いくださいませ♡

ありがとうございました(*^_^*)

解除

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