上 下
21 / 46

21.

しおりを挟む
 至近距離で見つめあう、俺と美晴。

「…………っ、ひ、……ひびき、さん…」
「…………美晴…………。…可愛いな、お前、……本当に……」
「……っ、そ、そんな、…………んっ!」

 俺はたまらずそのまま美晴に唇を重ねた。

「あ……っ!……ん、ふぅ……っ」

 甘い声が可愛くて、俺はますます興奮してもう自分を抑えることができない。何度も角度を変え、柔らかい唇を貪る。

「……っ、……はぁっ!……ひ、……ひびき、さん……っ」
「はぁっ……はぁっ……、……美晴……。…いいんだよな?俺…、今度こそ間違ってないよな?今、……ちゃんとサイン出してたよな?」

 俺は美晴の頬を撫でながら額をコツンと押しつけて尋ねる。

「うん……っ、うん……っ!響さん……、……来て……」

 美晴は色っぽい目で俺を誘い、両腕を俺の首に回し積極的に求めてくる。

(あぁっ……!…可愛い……、美晴……っ!)

 俺は夢中になってその甘い唇を味わいながら、劣情を抑えきれずにそのまま助手席のシートを倒し、完全に美晴の上に体を重ねた。

「あ……ん、…ひ、響さん……っ!こっ、こんな、ところで……」
「……もう、マンションまで待てねぇよ……美晴……。た、頼む、から、……このまま……っ」
「あっ……!……あぁ……ん!」

 俺は美晴の舌に自分のそれを絡めながら、シャツの下から両手を滑り込ませてその滑らかな肌の感触を味わう。




 ピロピロッ…
 ピロピロッ…




「………………。……ん、」

 あれ?俺寝てたのか。仕事から帰ってきて、そのままソファーに……ちくしょう。めっちゃめちゃいい夢見てたのに。誰だ起こしやがったヤツは。
 起き上がってスマホを確認する。……クソ。会社の方のメールかよ。仕事の連絡で起きちまった。
 美晴からのラインだったらよかったのに。

「…………。ああ、クソ。どうする」

 幸せな夢から目覚めたら現実が待っている。結局1週間以上が過ぎてしまった。あれ以来、何も連絡できないまま。

(……いや、だってよぉ……)

 そう。夢と現実はまったく違うのだ。今でもまざまざと思い出す、美晴のあの言葉。


『………………今度何かしたら、………………ブロックするから』


「~~~~~っ!!あぁぁぁ……」

 何かしてしまった。ああまで言われていたのに、俺は……またやっちまったんだ……!あいつが……、美晴が可愛すぎるのがいけない。あの潤んだ目に吸い込まれそうになったんだよ。なんか俺……、美晴のあの綺麗なうるうるした目を見たら、なんか勘違いしてしまって……。
 なんかOKサインが出てるような気がしちまったんだよ!!

 電話したい。食事に誘いたい。……でも怖ぇんだもん。万が一、もし、も、もうブロックされてたらどうしよう。もう生きる気力が湧かない。だって一度目のミスの時にあれだけ心底怯えさせてしまったんだぞ。その辺の女にするみたいに、なんか花とかアクセサリーとか適当に持って行って謝ってすむような感じじゃない。
 俺はブロックされているかもしれないという恐怖から、なかなか連絡もできずにいた。ヘタレにもほどがある。

「……こんな風になるもんなんだなぁ……。…この俺が。……ふ」

 今までの自分とあまりにも違いすぎて我ながら笑えてくる。嫌われることが怖くて、ビビり倒して全然前に進めない。ダメで元々と思えれば、もっとガンガン押せるんだろうけどなぁ……。でも俺が押してダメだったことなんかないんだよなぁ。だからダメだった時の衝撃もことさら大きいだろうと……まして相手はあの美晴……。

「…………はーーー……」

 俺は頭を抱えて深い溜息をついた。

 その時。

 プルル…

「っ?!」

 弾かれたようにプライベートの方のスマホを手に取る。…………み、美晴だ!!一気に心臓がドクドクと激しく高鳴りだす。手が震える。俺はすぐさまラインを開いた。


『ねずみさんの夢の国にはいつ連れて行ってくれるんですか?』


 スチャッ。


 俺は秒の速さで返信した。


『明日です』



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

彼女のお見合い相手に口説かれてます

すいかちゃん
BL
カラオケ店でアルバイトしている澤木陸哉は、交際している彼女から見合いをすると告げられる。おまけに、相手の条件によっては別れるとも・・・。見合い相手は、IT関連の社長をしている久住隆一。 だが、なぜか隆一に口説かれる事になる。 第二話「お見合いの条件」 麻里花の見合い相手と遭遇した陸哉。だが、彼には見合いをする気はないらしい。おまけに、麻里花に彼氏がいるのを怒っているようだ。もし、見合いが断られたら・・・。 第三話「交換条件」 隆一と食事をする事になった陸哉。話しているうちに隆一に対して好感を抱く。 見合いを壊すため、隆一が交換条件を提案する。 第四話「本気で、口説かれてる?」 ホテルの部屋で隆一に迫られる陸哉。お見合いを壊すための条件は、身体を触らせる事。 最後まではしないと言われたものの・・・。 第五話「心が選んだのは」 お見合い当日。陸哉は、いてもたってもいられず見合い会場へと向かう。そして、自分の手で見合いを壊す。隆一にも、2度と会わないつもりでいたが・・・。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...