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その後、気付いたら悠里は車に乗せられ、秘書の運転でアパートまで帰ってきていた。秘書と何か言葉を交わしたかどうかも覚えていない。茫然自失のまま、部屋の鍵を開け、中に入り、鍵をかけた。真っ暗な部屋の中に入ると、そのまま膝から崩れ落ち、床に倒れ込んだ。
「…………ふっ、……う、……う゛ぅ……っ、……うわぁぁぁぁぁっ……!あぁぁぁぁ…っ…!!」
独りになってついに、悠里は大声を上げて泣いた。体中が軋むように痛い。辛いことの多い人生だったが、こんなに切実に死にたいと思った夜はなかった。胸をかきむしりたくなるほどに自分を恨んだ。惨めで情けなくて、自分が恥ずかしくて…。今夜の自分の痴態が何度も何度も思い出される。なんであんな男に犯されて、俺は悦んだんだろう。嫌で嫌でたまらないはずなのに。体は意志とは無関係に快感を追い、何度も甘い声を上げ、男を興奮させた。地獄だ。今夜のようなことが、これから何度も続くのか。一体いつまで。あの男が俺に飽きてくれるまで、ひたすら耐えるしかないのか。母を置いて死ぬことなどできない。ここまで俺を大事に育ててくれたのに、死の間際に置いてけぼりにして自分だけ先に楽になるなんて、そんな親不孝なこと絶対にできない。
痛む体を抱えて、悠里は真っ暗な部屋で涙が涸れ果てるまで泣いた。
悠里が帰った後、冬真はさっさと仕事に戻った。デスクに向かい、書類の束に一つずつ目を通す。
だが、集中しようとしても何度も頭の中に悠里の顔が浮かんでくる。冬真の言葉に怯えて青白い顔をする悠里。泣きながら冬真のモノを口に含んで必死で舌を動かし、奉仕する悠里。自分の下で身をくねらせて、痛みの隙間から快感を拾う悠里。
「…………。……ふ」
何故だか笑みがこぼれる。可愛いじゃねぇか、あいつ。思わずそう思ってしまった自分をとっさに否定する。まぁ、当分は遊べそうなおもちゃを見つけたな。あいつの泣き顔はなかなか興奮する。ストレス発散にはちょうどいい。俺が飽きるまで、金をチラつかせながらせいぜい愉しませてもらうか。
自分にそう言い聞かせ、仕事に戻る。冬真自身、本当は気付いていた。何故だか他の男や女どもとは違って、あいつの色っぽい仕草にやたらと興奮してしまうことを。終わったあとにすぐさま追い返したくなくて、バスルームで自ら綺麗にしてやりたくなったことを。咥えさせながら上目遣いで見つめさせて、中を洗いながら肩に縋り付かれて、気分が高揚したことを。一度きりの情事で終わらせたくなくて、難癖つけては束縛しようとしていることを。
だがそれらの事実からは目を背けた。たまにはこんなこともある。たまたま俺のツボに入る何かをあいつが持っているんだろう。どうせ飽きるまでのことだ。好きなだけ遊んでやる。
少しの事実から目を逸らし、冬真は普段より上機嫌で仕事を続けた。
「…………ふっ、……う、……う゛ぅ……っ、……うわぁぁぁぁぁっ……!あぁぁぁぁ…っ…!!」
独りになってついに、悠里は大声を上げて泣いた。体中が軋むように痛い。辛いことの多い人生だったが、こんなに切実に死にたいと思った夜はなかった。胸をかきむしりたくなるほどに自分を恨んだ。惨めで情けなくて、自分が恥ずかしくて…。今夜の自分の痴態が何度も何度も思い出される。なんであんな男に犯されて、俺は悦んだんだろう。嫌で嫌でたまらないはずなのに。体は意志とは無関係に快感を追い、何度も甘い声を上げ、男を興奮させた。地獄だ。今夜のようなことが、これから何度も続くのか。一体いつまで。あの男が俺に飽きてくれるまで、ひたすら耐えるしかないのか。母を置いて死ぬことなどできない。ここまで俺を大事に育ててくれたのに、死の間際に置いてけぼりにして自分だけ先に楽になるなんて、そんな親不孝なこと絶対にできない。
痛む体を抱えて、悠里は真っ暗な部屋で涙が涸れ果てるまで泣いた。
悠里が帰った後、冬真はさっさと仕事に戻った。デスクに向かい、書類の束に一つずつ目を通す。
だが、集中しようとしても何度も頭の中に悠里の顔が浮かんでくる。冬真の言葉に怯えて青白い顔をする悠里。泣きながら冬真のモノを口に含んで必死で舌を動かし、奉仕する悠里。自分の下で身をくねらせて、痛みの隙間から快感を拾う悠里。
「…………。……ふ」
何故だか笑みがこぼれる。可愛いじゃねぇか、あいつ。思わずそう思ってしまった自分をとっさに否定する。まぁ、当分は遊べそうなおもちゃを見つけたな。あいつの泣き顔はなかなか興奮する。ストレス発散にはちょうどいい。俺が飽きるまで、金をチラつかせながらせいぜい愉しませてもらうか。
自分にそう言い聞かせ、仕事に戻る。冬真自身、本当は気付いていた。何故だか他の男や女どもとは違って、あいつの色っぽい仕草にやたらと興奮してしまうことを。終わったあとにすぐさま追い返したくなくて、バスルームで自ら綺麗にしてやりたくなったことを。咥えさせながら上目遣いで見つめさせて、中を洗いながら肩に縋り付かれて、気分が高揚したことを。一度きりの情事で終わらせたくなくて、難癖つけては束縛しようとしていることを。
だがそれらの事実からは目を背けた。たまにはこんなこともある。たまたま俺のツボに入る何かをあいつが持っているんだろう。どうせ飽きるまでのことだ。好きなだけ遊んでやる。
少しの事実から目を逸らし、冬真は普段より上機嫌で仕事を続けた。
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