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 優秀な秘書である神谷のサポートもあり、父の遺した仕事の引き継ぎは順調に進んでいった。若過ぎる息子の社長就任に、周囲の目は懐疑的だった。本当にやっていけるのかと。なめるんじゃねぇ。こっちがガキの頃から経営についてどれだけ勉強させられてきたと思ってるんだ。周囲の心配をよそに、冬真は頭角を現し仕事に邁進していた。

 しかし当然ストレスは溜まる。社を担う責任は重大だ。息抜きがなければやっていられない。特に冬真の場合は。
 目の前に跪き、冬真のモノに舌を這わせ必死で奉仕をする女の髪を乱暴に掴み、ぐっと深く押し込み、咥えさせる。

「ふっ……!ん、…くぅ……っ!」

 苦しさに女は涙と涎をダラダラと垂らしながら、それでも献身的に舌を動かし、吸い上げる。じゅるる、と淫猥な音を立てながら顔を歪めて健気に尽くす女の顔に興奮した冬真は、息を荒げその様を見つめる。たっぷりと堪能すると、今度は女の髪をぐいっと引っ張り、引き抜く。

「上がれ」

 短い命令で女をベッドに上がらせると、仰向けになった女の太ももを掴んで開き、一気に腰を深く沈めた。

「んっ、……んあぁぁんっ!…は、はぁ…っ、あっ!あぁっ!」

 女はシーツを掴みながらたちまちいやらしく腰をくねらせ、冬真の劣情を煽る。女の膝を掴み、上体を起こしたままで腰を激しく穿つ。
 女を攻めながら、冬真はあの男のことを考えていた。

 父親の葬儀の日から、もう一月経つ。なのにいまだにあいつの顔が頭から離れない。
 あの男。親父の愛人の息子だという、若い男。儚げな整った顔は、たしかに美しかった。纏う色気には凄みさえ感じた。それでいて、服従することは決してないとでも言いたげな視線の強さ。何故だか妙に気になり、何度もあいつを思い出す。

 目の前でよがる女に、あの男の姿を重ねる。冬真の下で身をくねらせ、喘ぐ姿を。

「……ふっ、…………はぁ」

 無性に興奮し、冬真はますます腰を穿つスピードを上げる。女が悲鳴のような嬌声を上げた。

「はぁぁぁぁんっ!あ、……んあぁっ!……あ、ひぃっ!…はぁっ、はぁっ……、んっ!……あぁぁぁぁっ……!」
「…………くっ…」

 射精の瞬間、何度も強く突くと、女もまた同時に絶頂を迎えた。


 事が終わって今日の女をさっさと追い返した後、神谷を呼び出し尋ねる。

「親父の葬儀会場に来ていたあの親子、その後何か動きはあるのか」
「いえ、特には」
「あいつらのことはどの程度知ってるんだ、お前」
「私は詳しいことは何も。時々、社長が春美さんにお会いになる時に送迎したことはあります。それだけです。奥様はお二人の関係をご存知でしたが、春美さんはその事を知りません」
「…徹底的に調べろ。特にあの息子の普段の生活ぶりとかな。あんなところにまでわざわざしゃしゃり出てきた連中だ。妙なこと考えてるかもしれねぇ」
「承知いたしました」

 深い意味はない。ただ愛人親子にウロウロされてしつこく金でもせびられたら気分が悪いからな。何か企んでいるならいるで、知っておく必要がある。


 数日後。神谷からの報告があった。

「息子の篠崎悠里さんは現在K大学に通っている3年生です。アルバイトを3ヵ所掛け持ちしています。春美さんは肺癌を患っており、かなり病状が悪い様子です。数ヶ月前から総合病院に入退院を繰り返しているようですが、直近2ヶ月の入院費用の支払いが滞っているようです」

 渡された報告書に目を通す。シングルマザーで他に働き手はいない。身よりもない。…親父に色目使って取り入る理由は充分に分かる。だが。

「……何でそんなに金に困ってんだ。どうせ親父からたんまり貰ってたんだろ。何に使ってやがるんだ」
「分かりません。私は社長から春美さんとの金銭のやり取りに関しては何も聞いておりませんでしたので」

 神谷は淡々と答える。
 …息子の学費か?だがこの報告書によれば、母親は入院する直前まで朝と晩仕事を掛け持ちして働いていたようだ。その上息子自身もこれだけ働いていれば、学費や生活費は賄えるはずだ。しかも母親は親父と深い仲だった。当然目的の金はたっぷり貰っていただろう。何故入院費用が滞るのか。貧乏人が、一体何に浪費していたのか。…まぁ、どうでもいい。どうせ浮かれて身の丈に合っていない高級ブランドの物でも買い漁っていたのだろう。

「何にせよ、金には困ってるわけだな」

 冬真は手元の報告書を見下ろしニヤリと笑った。
 あの生意気な男、しばらく遊んでやるか。




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