一目惚れだけど、本気だから。~クールで無愛想な超絶イケメンモデルが健気な男の子に恋をする話

紗々

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「ごちそうさま。璃玖の料理が恋しかったから、やっと食べられて嬉しかった」
「そ、そう?そう言ってもらえてよかった…」
「あんた本当料理上手だよね。こんなの家庭で作るレベルじゃない気がする。さっきの、蓮根がくっついたつくねみたいなやつとか」
「あは。そんなことないよ。でも今日は頑張ったんだ。久々に和食食べたいんじゃないかなって思ったから…」
「…俺のためなんだ。嬉しい」
「…っ」
「ありがと」
「……っ。う、うん」

 …どうしよう。こっちこそ、久しぶりに葵と食事ができて嬉しすぎる。僕の方を見て微笑んでる葵を見るだけで、なんだか胸がいっぱいになる。

 食事が終わったら、ついに大量プレゼントの開封タイムがやってきた。僕はおそるおそる一つずつ丁寧に開けていく。

 ……ところが、開けても開けても全然終わらない。今のところ、マフラーが2枚、ジャケットやコート類が5枚、その他洋服とかいろいろ…、可愛くて繊細な模様のチョコレートにカラフルなマカロン…。お、美味しそうだけど…。
 時々チラリと葵の方を見ると、頬杖ついて微笑みながらずっと僕を見ている。

「……わ、わぁ~!これも可愛いね。すごく、美味しそう」

あまりの数の多さに僕は多少引いていたのだけど、僕が喜ぶと葵が本当に嬉しそうな顔をするから、…喜ばざるを得ない。
 でもそれにしても、あまりにも貰いすぎでは…普通友達に渡すお土産って、ひとりに1個じゃないの…?と恐縮しつつ、次に手に取った革のような材質の小箱を開けた。

「…え?と、時計……?」

 僕は今度こそ驚きすぎて固まった。時計…。腕時計だ…。銀色の文字盤に白いベルトの綺麗な腕時計が小箱の中に収まっていた。

「それ、俺が使ってるやつと同じなんだ」
「え?」
「…お揃いになるけど。色違いで」

葵が少し頬を赤らめて言う。…あ、葵と、同じ腕時計…?……いやいやいや、

「……あ、あのさ、」
「ん?」
「…こんなこと言うのも、無粋というか…アレなんだけど…。も、ものすごく、高価なものなんじゃないの…?」
「…まぁ。金額はあまり気にしてないから。璃玖が気に入ってくれたら嬉しいんだけど」
「……。」

…き、金額も、少しは、気にしてほしい…!僕は一般人なんだよ?しかもわりと貧乏な方の…。

「……ごめん、気に入らなかった?」
「!」

し、しまった。僕がドン引きの表情を隠せなかったせいで、葵が落ち込んだ顔してる。僕はとっさに取り繕って満面の笑みで答える。

「そんなことないよ!葵の時計いつもかっこいいなーって思って見てたし!ぼ、僕がこんな素敵なの貰っちゃっていいのかなぁって、ちょっと、その、申し訳なく思っただけで…」
「…そう?お揃いが嫌なのかと」
「ま、まさか!嬉しいよ。ありがとう、葵。だ、大事にするね」
「…ん。なら、よかった。俺は黒のベルトだけど、あんたは白が似合うと思って」

やっと葵が笑ってくれてホッとした。せっかくこうやってまた普通に話せるようになったのに、がっかりさせたくない。葵にとってお土産の金額や個数はどうでもいいらしい。僕にはあまりにも贅沢すぎて…ちょっと慣れないけど…。
 …葵が喜んでくれるなら、いいんだよね?ありがたく、受け取っておこう。…ちょっとありがたすぎるけど。ちょっとっていうか、…かなり。
 僕は気持ちを落ち着かせ、改めてたくさんのお土産の山を見渡した。いろいろな包み紙や袋が……。
 ……いろいろな、お店の。
 その時、ふと気付いた。葵はこれだけいろいろなお店で、僕のためのプレゼントを選んでくれたんだ、ってことを。行く先々で、僕を思い出してくれていたんだ。僕のことを思って、僕に似合いそうなものを…って、ひとつひとつ、心を込めて選んでくれたんだ。
 
「……。」

 僕は葵の姿を想像した。僕が見たことのない海外のショップで、品物を眺め、手に取りながら、どの色がいいか、どれが僕に似合うのかと一生懸命考えている葵。
 胸がきゅうっと甘く強く締め付けられた。

「…全部大事にするからね。本当にありがとう、葵」
「……ん」

 とても嬉しそうに、葵が微笑む。あぁ、笑顔が美しすぎて神がかってる。葵が眩しい…。僕は貰ったものの中からグレーのマフラーを手に取り、首元でもふもふさせながら葵を見つめてそう思った。それにしてもこのマフラー、すっごく滑らかで気持ちがいいな…。サラサラでとろーんとした感触。こんなマフラー、初めてだ。大事にしよう…。

 やっと全てのお土産を開け終わって、僕たちはそれぞれお風呂に入った。髪をドライヤーで乾かしながら寝る前に葵に挨拶しなきゃなと思い、リビングに行くと、葵がすでに照明を落とした部屋でソファに座って僕を見ていた。その姿がまるで僕が来るのを待っていたみたいで、少し緊張した。

「…今日はありがとう。お土産たくさん、ほんとに嬉しかった。…ゆっくり寝てね。おやすみなさい」

そう言って部屋に戻ろうと踵を返すと、

「璃玖」

葵が声をかけてきて、心臓がドクッと大きく鳴る。

「……ん?」

僕は努めて冷静を装って振り返る。…何をこんなに緊張してるんだろう。ドキドキしながら、葵の次の言葉を待つ。

「…もうすぐ、クリスマスだね」
「え?……あぁ、うん。そうだね」

何を言われるのかと身構えていたら、突然予想もしていなかった単語が出てきてキョトンとしてしまった。クリスマス…?でも、葵の表情はやけに真剣だ。

「今年のイブは、土曜日だね」
「そうだっけ?」
「ん」
「……。そっか」
「…ん」
「……。」

…えっと、どうしたんだろ。何か言った方がいいのかな。クリスマス、クリスマスについて…。僕が頭を巡らせていると、

「予定なかったら、イブは空けておいて。」
「……。…えっ?」
「…お願い」
「……。」

理解が追いついた途端、顔に火がついた。え?……え?!
 僕は一言も発することができないまま、葵を見つめる。葵の瞳は、至って真剣だった。熱のこもった目で、少し頬を赤らめながら、それ以上は何も言わず、じっと僕を見ている。返事を待っているようだ。
 沈黙に耐えきれず、僕は頷いた。

「う、うん!分かった。…空けておく、ね」

空けておくも何も、特に何かが入る予定はないんだけど。

「…ん。ありがと」
「じ、じゃあ、…その、」
「おやすみ」
「お、おやすみなさい」

僕は踵を返し、ぎこちない足取りで部屋に入って、ドアを閉めた。途端に口を押さえてへたり込む。頭が爆発しそうだ。

「…………?!」

な、何?!今の、なに?!どういうこと?!どうして葵が、ぼ、僕と、クリスマスを…?
 …まさか。
 まさか、何か…、深い意味が……?
 ……あるわけないか!まさかね!そんな!自惚れるな僕!!あ、葵は…、ただ、……ただ、

 ……暇なんだ!!クリスマスが暇なんだ、きっと!!

 ……いや、そんなわけないか。あんなに素敵な人が、素敵すぎる人が、クリスマス暇なわけない。むしろ引く手数多に決まってるじゃないか。じゃあ、どうしてわざわざそんなロマンチックなイベントの日に、僕なんかを……?

 「…………はぁ」

 僕はワケが分からずため息をつく。心臓はまだバクバクと激しく鳴り続けていて治まりそうにもない。せっかく葵と久しぶりにゆっくり話せてすごくホッとして、はぁ~今夜は熟睡だーなんて思ってたけど。
 あぁ…、今夜もまた眠れそうにない。

 僕は火照る頬を押さえながらソファベッドに横になり、ブランケットを被った。

 葵、どうして僕を……?



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