終末学園の生存者

おゆP

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第二章

第14話 アイドルの誘い(1)

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1.
 昼休みに貫雪砕地と一悶着起こした後は、拍子抜けするほど話がうまく進んだ。
 どれほどかと言うと、二年五組の野外ステージの提案は放課後の実行委員会のメインテーマとして取り上げられた。
 そして、十分ほどの質疑応答をへて、喝采されるほどの好評を見せ満場一致で承認された。
 実は実行委員会が独自に事前調査をした際に、野外での催しを希望するクラスが多く対応に困っていたらしい。
 結果、予想を遙かに上回る要望要求無理難題が透哉の元に殺到することとなった。
 松風を不正参加させる目的で生まれた原案だけに、具体性がないふわついた案だったのだ。
 しかし、委員会の中で得た要望の数々を組み込むことで具体性が生まれてきた。
 居合わせた教員と砕地の仲介と助力もあって、無茶な案はふるいにかけ、棄却され、企画として形になりつつあった。
 実行委員会を終えた透哉は、確かな手応えを感じ、気合いと共に拳を握り決意を固める。

(よしっ! さしあたって一番の問題は吹奏楽部とバンド部が希望する野外ライブか……)

 野外ステージに明確な用途を与えられたため輪郭がうっすらとだが見えてきた。
 しかし、全ての要望を満たせるかどうかは別の話。
 とりあえずライブが可能なスペックが最低条件だ。楽器を演奏したり、歌を歌ったり、音楽をする場所を作る。

「ライブって何だ」

 透哉は一人廊下を歩きながら、声に出して自問する。
 大いなる成果と断言してもいい状況においても、障害や問題はつきものである。
 透哉は音楽という物を教養としても娯楽としても必要としたことがない。無関心に伴う無知さが透哉を迷子にした。
 歌うにせよ、演奏するにせよ、はっきり言って何を準備すればいいか分からないのだ。
 音楽への関心皆無で自発的に聞くことはまずない。学園外に出かけたときにたまに耳にする程度である。
 取らぬ狸の皮算用はよくないと思い先走りを抑えていたのだが、地盤の固まりが順調過ぎたせいで次のプランが手持ち無沙汰になっていた。
 直ちにスマホで調べる。

(あっれー? どうしよ全然分かんねぇ)

 分からない言葉を調べた結果、分からない言葉で説明されて、全部分からなくなる負のループに陥ってしまった。
 文面と画像だけでは限界がある。
 今の透哉の状態は『ケーキを焼くぞ。でもケーキって何だ?』と勢い勇んでから料理の本を捲るようなものだ。
 寮に戻ったらまた豪々吾に聞いてみるか、動画でも検索してみるかと考える。
 会議の後に聞けば良かったと後悔が過ぎるが、不用意に尋ねるのは危険だと思った。
 進行役の無知さが露呈することで提案そのものが取りやめになることを恐れたからだ。
 と、眺めていたスマホが着信を受け、画面が強制的に変わる。
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