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第二章
第6話 十二学区。(1)『絵』
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1.
土曜日、午前九時五十五分。
夜ノ島学園から北向きに私道を歩くこと約五分。周囲の景色から切り取られたような開けた場所に出る。
私鉄夜ノ島線、夜ノ島学園前駅。
驚くべきことに学園が運営する朝松市と十二学区を結ぶ専用の路線である。
駅舎前には車数台分の駐車場と小さなバス停。道を挟んで小さなタクシー会社があるのみで、目立つ建物はない。
よくある田舎の小さな駅である。
その改札前に制服姿の透哉の姿があった。
駅の存在は知っていたが、足を運ぶのは初めてだった。
『十二学区に行ってみない?』
一昨日学長室で受けた流耶の誘いに乗り訪れていた。
『夜ノ島学園十二学区』
平たく言うと別のカリキュラムを持つ夜ノ島学園が建っている市街地の総称。
しかし、十二学区こそが本来の夜ノ島学園であり、透哉たちの学園はその派生部分に属する。悪く言うと十二学区の末端。
十二学区への入学できなかった能力の劣る生徒の滑り止めに当たり、同時にワケアリの生徒を秘密裏に匿う収容施設としても機能している。
それがあの後流耶から教えられた夜ノ島学園の本当の姿。
そして、十二学区自体は旧夜ノ島学園が廃校に追いやられる前から存在していると聞かされ、さらに驚いた。
一昨日得たばかりの知識を頭の中で反芻しながら、駅周辺を見回す。
ホタルとは駅前に十時に集合と約束していたのだが、まだ現れない。
駅前の時計に視線を向けると十時まであと二分。集合時刻に遅れることへの苛立ちと言うより、電車に乗り遅れやしないだろうかという心配の方が大きかった。
と、路肩の古ぼけた鉄塔に見覚えのある青白い光が走る。
バチバチと電撃が爆ぜ、慌ただしい到着を知らせる。
『――御波! すまない! 寝過ごした!』
頭上からの呼びかけに顔を上げると街路樹の更に上空からホタルが飛び出し、鉄塔の中腹に着地する。
鉄塔はホタルが着地した衝撃でブルブルと増え、余波の電撃を帯電させたまま青白く光る。
「出たな、インチキ飛行!」
高さにして八メートルほど離れたホタルに向け、透哉は声を張り上げる。
ホタルは魔力を電荷に変換できるエンチャンターで、その応用として磁力を発生させ、自身を磁石として金属に吸着することで強引に飛ぶこともできる。
当然、媒介にできる金属があること前提なので森林の中や何もない広場では使うことができない。
「インチキ飛行とはなんだ。能力を使いこなしているからこその荒技ではないか!」
実際、ホタルにもこの飛び方が荒いという自覚はあった。吸着を強めることで移動速度は上げられるがそれに伴って体に負担がかかるし、コントロールを誤ると鞭打ち状態になって全身が鈍く痛む。
ホタルは上から見回すとマンホール目がけて踏み切り、衝突の間際で磁力を反発させ、ふわりと舞い降りる。
着地すると紫電を纏った髪の毛がふわりと踊る。
「器用なこった」
「この辺は慣れだな」
周囲に人工物がある場所なら重力とは無縁なのだろうか。
透哉の中に小さな探究心が芽生えたが、今日はそんなことのために集合したわけではない。
「じゃあ、行くか」
「そうだな。もう電車の時間なのか?」
尋ねられて透哉が駅前の時計を再度見ると十時ぴったり。じきに電車が到着する。
切符に相当する物は事前に流耶に受け取っているので後は無人の改札を潜って乗り場で待つだけだ。
しかし、その前に流耶からの指摘事項を思い出し、透哉は自らを拘束する魔道具『白檻』をどこからともなく取りだす。
学園の夏服の上からすっぽり羽織るとあっという間に白ずくめの装束ができあがる。
『白檻』は流耶が自分たちを拘束、強制転送するための魔道具であると同時、着込んだ状態で魔力を通わせることで自身の姿を眩ませ、隠蔽する光学迷彩のような使い方もできる。
が、この場で求められているのは魔力だけの隠蔽。
姿形は今のままに体から発せられる魔力を周囲に漏らさないための能力。魔力を封じる能力ではないのでエンチャントを行えば魔力は漏れ出し、周囲にばれてしまう。
早い話、非魔力行動を指示されたのだ。
ホタルも透哉に倣い『白檻』を羽織るが、白いフード付きのマントは怪しい宗教団体とかに見えなくもない。
横はスリットになっていて自由に手が出し入れできるので動き易い作りだがどうも落ち着かない。
こんな格好で怪しまれないだろうか、周囲の反応が気になる。
なんだかんだでその辺は年頃の少年少女である。
お互いの格好をなんとも言えない表情で見る二人の耳に踏切の音が届く。
間もなくホームに滑り込んできた電車は田舎のローカル線らしく僅か二両の編成。しかも透哉とホタル以外の乗客は皆無だった。
人目を気にしなくてよくなったが、無人と言うのは落ち着かない。
二人が乗り込むと車掌の笛を合図にガタンと大きく揺れた後、電車はゆっくりと動き始めた。
正直電車に乗る程度で十二学区に行けるというのも不思議だし、電車に乗らないと行けないと言うのも不思議なのだ。
透哉の思い描く十二学区とはメサイアの重要拠点に当たり、まっとうな方法では出入りもままならない要塞みたいな場所なのだ。
それがこんな二両ぽっちの田舎電車で行けるというのだ。
疑問を拭い去れない透哉たちをよそに電車はどんどん加速する。五分ほどの直進を経て電車の軌道に変化が見られる。
流耶に事前に聞いた話だと十二学区は山を跨いだ丁度裏側に位置するらしい。
正面の山に向かって猛進していたので、トンネルを通じて直線で十二学区につながっていると思っていたがどうやら違うらしい。
徐々に線路が西向きに逸れていき、山裾の小さなトンネルを抜けると一気に景色が開けた。
眼前に広がる一面の青色にホタルは歓声を上げる。
「おおっ! すごいな、御波! 海だ!」
「ああ、」
大声こそ上げなかったが透哉が抱いた驚きもホタルと同じである。
海岸線に沿って無骨なテトラポットが群れをなし転がっていて、その向こうでは白い砂浜が線路に並走するように伸び、キラキラと輝く海面が彼方まで広がっていた。
とてもまともとは言えない人生を送ってきた二人もこのときばかりは本来の目的を忘れ、車窓からの景色に魅了され、感動していた。
しかし、その感動も束の間の出来事に終わる。
電車の車輪が軋みを上げ、車体がさっきとは反対に傾き始め、大きく揺れ出す。
線路が沿岸から内陸に戻り、山の裏に回り込む。
木々が生い茂る田舎っぽい景色が急変し、奇妙なほど整えられたエリアに進入する。
二人は無意識に息をのむと先ほどとは違う種類の驚きから声を漏らす。
「なんだ、これは?」
先に広がる景色、あるいは世界は二人の想像を凌駕していた。
山を迂回した先には朝松市のような学園を有した市街地が広がっていて、その中の駅に電車は停車すると思っていた。
根本から違う。
眼下に広がるすり鉢状の敷地。
まるで巨大な採石場の跡地をそのまま開拓して都市化したみたいな町並み。
段ボール箱の中にコンピューターを詰め込んだみたいなちぐはぐさ。
高所から一望しているにもかかわらず全容が見えないほどの広大さ。
自然から都市への急な落差には恐怖すら覚える。
そして、眼前に広がる敷地と建造物の全てを総称して十二学区。
そんな場所に向けて電車は変わらぬスピードでガタンゴトンと迫っていく。
隣で言葉を失うホタルを見て、ふと透哉は思いつき、あるいは冷静さを取り戻し、左目を凝らす。
(――――っ!)
透哉は思わず目を見開いた。
まるで自分だけ幽霊を見てしまったみたいに。
現在電車はすり鉢状の敷地の上部を縁に沿うように走っている。
恐らく、まだ十二学区の敷地には入っていない。透哉はその左目に映った物を見て判断した。
外からだからはっきりと見えた奇妙な物。
敷地の壁の境界線から細い線のような物が網目状に前方を覆っていた。全容は見えなかったが恐らく学区の敷地を囲むようにドーム状に張られているのだろうと推測する。
可視状態にないと言うことは物理的に干渉するためではなく、センサーみたいなセキュリティーを目的としているのかもしれない。
不可視の感知用の魔道具か、エンチャンターの能力。あるいは、『悪夢』か。
流耶が電車の使用を強制したのはこれへの干渉を防ぐためだったのだろう。
「……どんな規模だよ」
「御波、どうかしたのか? すごい汗だぞ、大丈夫か?」
透哉の異常に気づいたホタルが顔をのぞき込む。
言われて額を拭うとべったりと脂汗をかいていた。自分で思っている以上に動揺していたらしい。
「……はっきりと断言できないが網のような囲いが見えた。かなり広範囲だ。恐らく十二学区全域を覆っている」
「網? 私には何も見えないのだが」
「前に言っただろ? 俺の左目は『原石』って言う魔眼だって。魔力の流れを見ることができるって」
ああ、そう言えばそうだな、と頷こうとして透哉の目を見たホタルは思わず言葉を飲み込んだ。
自分の全てを叩き付けて戦った夜に、明確な殺意と共に向けられたあの透明な目。
意思とは無関係にあのときのことを思い出してしまった。
ホタルが透哉の左目に意識を奪われている間に電車は駅に到着したようで、緩やかに減速した後、静かに停車した。
『お降りの際は足下にご注意ください―――』
車内アナウンスを聞き流し、二人は席を立つ。
「降りるぞ。源」
「しかし、本当にこんな物を着ていて大丈夫なのか? 逆に目立ってしまうのではないか?」
「……俺もそう思う」
下車する直前になってホタルは改めて不安を口にし、透哉もそれに同意した。
結局乗ってきた電車の乗客は透哉たち二人だけ。顔は隠していないものの、普通の学生は白いマントを羽織って電車に乗ったりしない。
この姿を人目に晒す時はすぐそこに迫っていた。
着用理由を疑問に思いつつも二人揃って『白檻』を電車に乗る前から素直に羽織っている。
予め流耶に着るように厳命されたのだ。
十二学区に踏み入るに当たって、魔力の使用も禁じられている。『白檻』の着用は魔力の漏洩を防ぎ、素性や力量を隠すためである。
乗り場を後にした二人は改札を求めてホームの中をぐるりと見回し、息を飲んだ。
文明の違う国に訪れたのかと思うほど整備された建物だった。
人の手が加わっていない場所がなく、文化水準が十年単位で先行している感覚にさえ陥る。
コンクリートに囲まれた施設内は天井に設けられた天窓のおかげで室内にもかかわらず明るい。
実は日の傾きに合わせて蛍光灯の明るさが自動調整され最適な明るさを保つ仕組みになっているが、二人が知るはずもない。
支柱には広告を流し続けるディスプレイ。
館内アナウンスがひっきりなしに鼓膜を叩く。
情報量の多さにめまいを覚えそうになる。
まるで駅が一つの大きな機械のように機能している。
『通行証の提示をお願いします』
おっかなびっくり駅構内を歩く二人に、無人改札のゲートが電子音声で話しかけてくる。
「おお、えっと、これか?」
一瞬戸惑った透哉だったが、電子音声が言う通行証には心当たりがあった。流耶から切符の代わりに預かったトランプ大のプラカードだ。恐る恐る翳すとグリーンのランプを点灯させ、
『ようこそ、夜ノ島学園十二学区パレットガーデン展望エントランスへ』
電子アナウンスが歓迎してくれた。
ホタルもカードを翳し、入場を果たす。
二人は電車を降りてから階段やエレベーターを使って昇降などしていない。乗ってきた電車も山肌を駆け上がってなどいない。普段生活している夜ノ島学園と高低差はほとんど変わらない、はずである。
『夜ノ島学園十二学区パレットガーデン展望エントランス』
電子アナウンスが告げた長ったらしい現在位置の情報に従うなら地表にいながら展望という高所にいる矛盾が発生している。
とりあえず外の様子が見たい、何故か中腰のホタルが言う。周囲の景色に圧倒されて完全に腰が引けてしまっていた。
サイズの小さいケージに押し込まれた子犬のようである。
「向こうに行ったら見えるんじゃねーのか?」
「(コクンコクン)」
無言で頷くホタルを引き連れ、透哉は窓際へと移動する。
ガラス張りのデッキからは先ほど電車内から見た景色が一望できた。
透哉とホタルが感じている矛盾は遙か下方に広がる十二学区の敷地を地上とした場合、簡単に説明が付いた。
しかし、だとすると見下ろしている町並みと展望エントランスとはどれほどの高低差があるのだろう。
十階相当の建物の屋上を見下ろしながら十二学区と称される未知に震える。
デッキから角度を変えて見て分かったことだが、透哉たちが降りた駅のホームと乗り場は高層ビルの上部に直接接続される形になっていて、まるで高層ビルが大きな橋の橋脚のように見えた。
景色を眺めながらガラスに沿って移動していると降りてきた改札とは別の改札に突き当たった。
正面の電光掲示板には『十二学区ターミナルステーション』と書かれている。
見回すと透哉たちが乗ってきた外と繋がる路線とは別の路線図が下の階への案内図と一緒に表示されていた。
十二学区内を回るためには下の階に降りて別の路線に乗り換える必要がありそうだ。
「めちゃくちゃな広さだな」
ぐるりと見回し、なんとも言えない感覚に陥る。良いとか悪いとかではなく、ただただ凄い。
それは地方の人間が都会を訪れたときのカルチャーショックに似ているのかもしれない。
そんな中を目が痛いほど派手な様相をした人々が行き交う。
赤、青、黄色、緑、紫、と言った絵の具の原色を被ったみたいな色の服。
熱帯魚の水槽に放り込まれたメダカの気分だった。
背格好や顔立ちから恐らく同年代。
そして、華美な服装の数々は学校ごとの制服だとすれば彼らが十二学区の学生で、比較的落ち着いたグレーや黒のスーツ姿は十二学区で働く大人たちだろう。
戸惑いよりも驚き、不安よりも興奮が勝る二人であるが、徐々に冷静さを取り戻してきた。
電車に乗って十二学区に進入したのはいいが、唆した張本人が姿を見せない。
「しかし、ここからどうするのだ?」
「わからん。流耶の指示は電車に乗ってこの駅で降りることだったからな。待っていればいつも通りこれで引きずり回されるんじゃねーのか?」
透哉は『白檻』の端を摘まんでひらひらと揺らしながら投げやりに返事をする。
困っているけどまだ深刻に考えていない堂々たる迷子の二人。
そんな二人の正面から少女が一人こちらに向かって歩いてくる。
改札を通ってきた直後なのかパスケースを鞄に片付けながら。
(十二学区の生徒か?)
(多分な。流耶と合流する前に目立つのはまずい。自然を装え)
二人は小声でやりとりを済ませ、人を待ってますよ~という風を装い興味もないのに電光掲示板に流れるニュースを眺めていた。
「よく来たわね。二人とも」
ところがその少女はまるで二人の知り合いのように話しかけてきた。
……誰だ?
同じ疑問を抱いた透哉とホタルは顔を見合わせ目を瞬かせるが、お互い心当たりなど無い。
「悪いが人違いじゃねーのか?」
「やれやれ、この敷地内にあなたたちの知り合いが他にいるのかしら?」
眼前の少女は半眼の呆れ顔で自分たちが知り合いみたいに言う。
しかし、二人は「お前誰やねん」状態。
そこで透哉は見ず知らずの少女としてではなく、知人という観点でもう一度見直してみる。
金糸を襟元にあしらった真っ白なワンピース風の制服。足には甲の部分にリボンの装飾が施されたローファーを履いている。
肩にかけられた鞄はベルトを付け替えると背負うこともできるタイプの汎用性重視の学生鞄だ。
頭には可愛らしい髪飾りまでつけてある。
どこかのお嬢様のような上品さとショートケーキみたいなかわいらしさが漂う、日本人形のような長い黒髪の少女。
それが何故か、草川流耶と同じ声で話しかけてきた。
二人は凍り付き、目の前の少女が十二学区での流耶の姿であると死に物狂いで飲み込む。
「――御波、洗面器を持っているか?」
「――持ってない。逆に聞くけどバケツ持ってないか?」
「すまない。私も持ってない。むしろあったら私が使いたい」
ホタルの静かな問いに透哉も小さな声で何かを我慢しているように答える。
「何かしら、随分失礼ことを言われている気がするわ」
真っ白な流耶は、事もあろうに頬をぷくっと膨らませて、かわいらしくむくれて見せる。
その姿に透哉とホタルの中の何か大事なものが破断した。
「おおおっ! お前! なんだその服と笑顔と言葉遣いは!? それといつも頭に巻いている包帯はどこに行った!? それと服とにっこりと喋り方は!?」
「流耶、早く説明してやれ。源が壊れかかっている」
瞬く間に厳戒態勢を迎えたホタル。迅速に対応しなければ取り返しがつかないことになる。最悪、深刻な後遺症が残ってしまうかもしれない危うい状態だ。
説明を促す透哉の顔色も悪いが、症状で上を行くホタルの存在が透哉の意識をギリギリの部分で踏みとどまらせた。
「そうね、テラスでお茶でもしながらどうかしら?」
透哉とホタルの状態など気にもとめず流耶は「うふふっ」と口元に手を添えて上品に笑う。
「「気持ちが悪い! 吐きそうだ!」」
「あら、じゃあ先にトイレに案内しようかしら?」
「「バケツを頼む! 大きめの奴を二人前!!」」
「あらあら、仲がいいことで」流耶は困ったように言ってやや低めの声で二人に詰め寄ると「……私のここでの立場も考えてくれる?」口元を歪ませて耳打ちする。
気づくと周囲の視線がこちらに集まっていた。
いつもの流耶に二人は安堵して後に従うことにした。
三人はエントランスからそそくさと立ち去ると、下りのエスカレーターに飛び乗った。
土曜日、午前九時五十五分。
夜ノ島学園から北向きに私道を歩くこと約五分。周囲の景色から切り取られたような開けた場所に出る。
私鉄夜ノ島線、夜ノ島学園前駅。
驚くべきことに学園が運営する朝松市と十二学区を結ぶ専用の路線である。
駅舎前には車数台分の駐車場と小さなバス停。道を挟んで小さなタクシー会社があるのみで、目立つ建物はない。
よくある田舎の小さな駅である。
その改札前に制服姿の透哉の姿があった。
駅の存在は知っていたが、足を運ぶのは初めてだった。
『十二学区に行ってみない?』
一昨日学長室で受けた流耶の誘いに乗り訪れていた。
『夜ノ島学園十二学区』
平たく言うと別のカリキュラムを持つ夜ノ島学園が建っている市街地の総称。
しかし、十二学区こそが本来の夜ノ島学園であり、透哉たちの学園はその派生部分に属する。悪く言うと十二学区の末端。
十二学区への入学できなかった能力の劣る生徒の滑り止めに当たり、同時にワケアリの生徒を秘密裏に匿う収容施設としても機能している。
それがあの後流耶から教えられた夜ノ島学園の本当の姿。
そして、十二学区自体は旧夜ノ島学園が廃校に追いやられる前から存在していると聞かされ、さらに驚いた。
一昨日得たばかりの知識を頭の中で反芻しながら、駅周辺を見回す。
ホタルとは駅前に十時に集合と約束していたのだが、まだ現れない。
駅前の時計に視線を向けると十時まであと二分。集合時刻に遅れることへの苛立ちと言うより、電車に乗り遅れやしないだろうかという心配の方が大きかった。
と、路肩の古ぼけた鉄塔に見覚えのある青白い光が走る。
バチバチと電撃が爆ぜ、慌ただしい到着を知らせる。
『――御波! すまない! 寝過ごした!』
頭上からの呼びかけに顔を上げると街路樹の更に上空からホタルが飛び出し、鉄塔の中腹に着地する。
鉄塔はホタルが着地した衝撃でブルブルと増え、余波の電撃を帯電させたまま青白く光る。
「出たな、インチキ飛行!」
高さにして八メートルほど離れたホタルに向け、透哉は声を張り上げる。
ホタルは魔力を電荷に変換できるエンチャンターで、その応用として磁力を発生させ、自身を磁石として金属に吸着することで強引に飛ぶこともできる。
当然、媒介にできる金属があること前提なので森林の中や何もない広場では使うことができない。
「インチキ飛行とはなんだ。能力を使いこなしているからこその荒技ではないか!」
実際、ホタルにもこの飛び方が荒いという自覚はあった。吸着を強めることで移動速度は上げられるがそれに伴って体に負担がかかるし、コントロールを誤ると鞭打ち状態になって全身が鈍く痛む。
ホタルは上から見回すとマンホール目がけて踏み切り、衝突の間際で磁力を反発させ、ふわりと舞い降りる。
着地すると紫電を纏った髪の毛がふわりと踊る。
「器用なこった」
「この辺は慣れだな」
周囲に人工物がある場所なら重力とは無縁なのだろうか。
透哉の中に小さな探究心が芽生えたが、今日はそんなことのために集合したわけではない。
「じゃあ、行くか」
「そうだな。もう電車の時間なのか?」
尋ねられて透哉が駅前の時計を再度見ると十時ぴったり。じきに電車が到着する。
切符に相当する物は事前に流耶に受け取っているので後は無人の改札を潜って乗り場で待つだけだ。
しかし、その前に流耶からの指摘事項を思い出し、透哉は自らを拘束する魔道具『白檻』をどこからともなく取りだす。
学園の夏服の上からすっぽり羽織るとあっという間に白ずくめの装束ができあがる。
『白檻』は流耶が自分たちを拘束、強制転送するための魔道具であると同時、着込んだ状態で魔力を通わせることで自身の姿を眩ませ、隠蔽する光学迷彩のような使い方もできる。
が、この場で求められているのは魔力だけの隠蔽。
姿形は今のままに体から発せられる魔力を周囲に漏らさないための能力。魔力を封じる能力ではないのでエンチャントを行えば魔力は漏れ出し、周囲にばれてしまう。
早い話、非魔力行動を指示されたのだ。
ホタルも透哉に倣い『白檻』を羽織るが、白いフード付きのマントは怪しい宗教団体とかに見えなくもない。
横はスリットになっていて自由に手が出し入れできるので動き易い作りだがどうも落ち着かない。
こんな格好で怪しまれないだろうか、周囲の反応が気になる。
なんだかんだでその辺は年頃の少年少女である。
お互いの格好をなんとも言えない表情で見る二人の耳に踏切の音が届く。
間もなくホームに滑り込んできた電車は田舎のローカル線らしく僅か二両の編成。しかも透哉とホタル以外の乗客は皆無だった。
人目を気にしなくてよくなったが、無人と言うのは落ち着かない。
二人が乗り込むと車掌の笛を合図にガタンと大きく揺れた後、電車はゆっくりと動き始めた。
正直電車に乗る程度で十二学区に行けるというのも不思議だし、電車に乗らないと行けないと言うのも不思議なのだ。
透哉の思い描く十二学区とはメサイアの重要拠点に当たり、まっとうな方法では出入りもままならない要塞みたいな場所なのだ。
それがこんな二両ぽっちの田舎電車で行けるというのだ。
疑問を拭い去れない透哉たちをよそに電車はどんどん加速する。五分ほどの直進を経て電車の軌道に変化が見られる。
流耶に事前に聞いた話だと十二学区は山を跨いだ丁度裏側に位置するらしい。
正面の山に向かって猛進していたので、トンネルを通じて直線で十二学区につながっていると思っていたがどうやら違うらしい。
徐々に線路が西向きに逸れていき、山裾の小さなトンネルを抜けると一気に景色が開けた。
眼前に広がる一面の青色にホタルは歓声を上げる。
「おおっ! すごいな、御波! 海だ!」
「ああ、」
大声こそ上げなかったが透哉が抱いた驚きもホタルと同じである。
海岸線に沿って無骨なテトラポットが群れをなし転がっていて、その向こうでは白い砂浜が線路に並走するように伸び、キラキラと輝く海面が彼方まで広がっていた。
とてもまともとは言えない人生を送ってきた二人もこのときばかりは本来の目的を忘れ、車窓からの景色に魅了され、感動していた。
しかし、その感動も束の間の出来事に終わる。
電車の車輪が軋みを上げ、車体がさっきとは反対に傾き始め、大きく揺れ出す。
線路が沿岸から内陸に戻り、山の裏に回り込む。
木々が生い茂る田舎っぽい景色が急変し、奇妙なほど整えられたエリアに進入する。
二人は無意識に息をのむと先ほどとは違う種類の驚きから声を漏らす。
「なんだ、これは?」
先に広がる景色、あるいは世界は二人の想像を凌駕していた。
山を迂回した先には朝松市のような学園を有した市街地が広がっていて、その中の駅に電車は停車すると思っていた。
根本から違う。
眼下に広がるすり鉢状の敷地。
まるで巨大な採石場の跡地をそのまま開拓して都市化したみたいな町並み。
段ボール箱の中にコンピューターを詰め込んだみたいなちぐはぐさ。
高所から一望しているにもかかわらず全容が見えないほどの広大さ。
自然から都市への急な落差には恐怖すら覚える。
そして、眼前に広がる敷地と建造物の全てを総称して十二学区。
そんな場所に向けて電車は変わらぬスピードでガタンゴトンと迫っていく。
隣で言葉を失うホタルを見て、ふと透哉は思いつき、あるいは冷静さを取り戻し、左目を凝らす。
(――――っ!)
透哉は思わず目を見開いた。
まるで自分だけ幽霊を見てしまったみたいに。
現在電車はすり鉢状の敷地の上部を縁に沿うように走っている。
恐らく、まだ十二学区の敷地には入っていない。透哉はその左目に映った物を見て判断した。
外からだからはっきりと見えた奇妙な物。
敷地の壁の境界線から細い線のような物が網目状に前方を覆っていた。全容は見えなかったが恐らく学区の敷地を囲むようにドーム状に張られているのだろうと推測する。
可視状態にないと言うことは物理的に干渉するためではなく、センサーみたいなセキュリティーを目的としているのかもしれない。
不可視の感知用の魔道具か、エンチャンターの能力。あるいは、『悪夢』か。
流耶が電車の使用を強制したのはこれへの干渉を防ぐためだったのだろう。
「……どんな規模だよ」
「御波、どうかしたのか? すごい汗だぞ、大丈夫か?」
透哉の異常に気づいたホタルが顔をのぞき込む。
言われて額を拭うとべったりと脂汗をかいていた。自分で思っている以上に動揺していたらしい。
「……はっきりと断言できないが網のような囲いが見えた。かなり広範囲だ。恐らく十二学区全域を覆っている」
「網? 私には何も見えないのだが」
「前に言っただろ? 俺の左目は『原石』って言う魔眼だって。魔力の流れを見ることができるって」
ああ、そう言えばそうだな、と頷こうとして透哉の目を見たホタルは思わず言葉を飲み込んだ。
自分の全てを叩き付けて戦った夜に、明確な殺意と共に向けられたあの透明な目。
意思とは無関係にあのときのことを思い出してしまった。
ホタルが透哉の左目に意識を奪われている間に電車は駅に到着したようで、緩やかに減速した後、静かに停車した。
『お降りの際は足下にご注意ください―――』
車内アナウンスを聞き流し、二人は席を立つ。
「降りるぞ。源」
「しかし、本当にこんな物を着ていて大丈夫なのか? 逆に目立ってしまうのではないか?」
「……俺もそう思う」
下車する直前になってホタルは改めて不安を口にし、透哉もそれに同意した。
結局乗ってきた電車の乗客は透哉たち二人だけ。顔は隠していないものの、普通の学生は白いマントを羽織って電車に乗ったりしない。
この姿を人目に晒す時はすぐそこに迫っていた。
着用理由を疑問に思いつつも二人揃って『白檻』を電車に乗る前から素直に羽織っている。
予め流耶に着るように厳命されたのだ。
十二学区に踏み入るに当たって、魔力の使用も禁じられている。『白檻』の着用は魔力の漏洩を防ぎ、素性や力量を隠すためである。
乗り場を後にした二人は改札を求めてホームの中をぐるりと見回し、息を飲んだ。
文明の違う国に訪れたのかと思うほど整備された建物だった。
人の手が加わっていない場所がなく、文化水準が十年単位で先行している感覚にさえ陥る。
コンクリートに囲まれた施設内は天井に設けられた天窓のおかげで室内にもかかわらず明るい。
実は日の傾きに合わせて蛍光灯の明るさが自動調整され最適な明るさを保つ仕組みになっているが、二人が知るはずもない。
支柱には広告を流し続けるディスプレイ。
館内アナウンスがひっきりなしに鼓膜を叩く。
情報量の多さにめまいを覚えそうになる。
まるで駅が一つの大きな機械のように機能している。
『通行証の提示をお願いします』
おっかなびっくり駅構内を歩く二人に、無人改札のゲートが電子音声で話しかけてくる。
「おお、えっと、これか?」
一瞬戸惑った透哉だったが、電子音声が言う通行証には心当たりがあった。流耶から切符の代わりに預かったトランプ大のプラカードだ。恐る恐る翳すとグリーンのランプを点灯させ、
『ようこそ、夜ノ島学園十二学区パレットガーデン展望エントランスへ』
電子アナウンスが歓迎してくれた。
ホタルもカードを翳し、入場を果たす。
二人は電車を降りてから階段やエレベーターを使って昇降などしていない。乗ってきた電車も山肌を駆け上がってなどいない。普段生活している夜ノ島学園と高低差はほとんど変わらない、はずである。
『夜ノ島学園十二学区パレットガーデン展望エントランス』
電子アナウンスが告げた長ったらしい現在位置の情報に従うなら地表にいながら展望という高所にいる矛盾が発生している。
とりあえず外の様子が見たい、何故か中腰のホタルが言う。周囲の景色に圧倒されて完全に腰が引けてしまっていた。
サイズの小さいケージに押し込まれた子犬のようである。
「向こうに行ったら見えるんじゃねーのか?」
「(コクンコクン)」
無言で頷くホタルを引き連れ、透哉は窓際へと移動する。
ガラス張りのデッキからは先ほど電車内から見た景色が一望できた。
透哉とホタルが感じている矛盾は遙か下方に広がる十二学区の敷地を地上とした場合、簡単に説明が付いた。
しかし、だとすると見下ろしている町並みと展望エントランスとはどれほどの高低差があるのだろう。
十階相当の建物の屋上を見下ろしながら十二学区と称される未知に震える。
デッキから角度を変えて見て分かったことだが、透哉たちが降りた駅のホームと乗り場は高層ビルの上部に直接接続される形になっていて、まるで高層ビルが大きな橋の橋脚のように見えた。
景色を眺めながらガラスに沿って移動していると降りてきた改札とは別の改札に突き当たった。
正面の電光掲示板には『十二学区ターミナルステーション』と書かれている。
見回すと透哉たちが乗ってきた外と繋がる路線とは別の路線図が下の階への案内図と一緒に表示されていた。
十二学区内を回るためには下の階に降りて別の路線に乗り換える必要がありそうだ。
「めちゃくちゃな広さだな」
ぐるりと見回し、なんとも言えない感覚に陥る。良いとか悪いとかではなく、ただただ凄い。
それは地方の人間が都会を訪れたときのカルチャーショックに似ているのかもしれない。
そんな中を目が痛いほど派手な様相をした人々が行き交う。
赤、青、黄色、緑、紫、と言った絵の具の原色を被ったみたいな色の服。
熱帯魚の水槽に放り込まれたメダカの気分だった。
背格好や顔立ちから恐らく同年代。
そして、華美な服装の数々は学校ごとの制服だとすれば彼らが十二学区の学生で、比較的落ち着いたグレーや黒のスーツ姿は十二学区で働く大人たちだろう。
戸惑いよりも驚き、不安よりも興奮が勝る二人であるが、徐々に冷静さを取り戻してきた。
電車に乗って十二学区に進入したのはいいが、唆した張本人が姿を見せない。
「しかし、ここからどうするのだ?」
「わからん。流耶の指示は電車に乗ってこの駅で降りることだったからな。待っていればいつも通りこれで引きずり回されるんじゃねーのか?」
透哉は『白檻』の端を摘まんでひらひらと揺らしながら投げやりに返事をする。
困っているけどまだ深刻に考えていない堂々たる迷子の二人。
そんな二人の正面から少女が一人こちらに向かって歩いてくる。
改札を通ってきた直後なのかパスケースを鞄に片付けながら。
(十二学区の生徒か?)
(多分な。流耶と合流する前に目立つのはまずい。自然を装え)
二人は小声でやりとりを済ませ、人を待ってますよ~という風を装い興味もないのに電光掲示板に流れるニュースを眺めていた。
「よく来たわね。二人とも」
ところがその少女はまるで二人の知り合いのように話しかけてきた。
……誰だ?
同じ疑問を抱いた透哉とホタルは顔を見合わせ目を瞬かせるが、お互い心当たりなど無い。
「悪いが人違いじゃねーのか?」
「やれやれ、この敷地内にあなたたちの知り合いが他にいるのかしら?」
眼前の少女は半眼の呆れ顔で自分たちが知り合いみたいに言う。
しかし、二人は「お前誰やねん」状態。
そこで透哉は見ず知らずの少女としてではなく、知人という観点でもう一度見直してみる。
金糸を襟元にあしらった真っ白なワンピース風の制服。足には甲の部分にリボンの装飾が施されたローファーを履いている。
肩にかけられた鞄はベルトを付け替えると背負うこともできるタイプの汎用性重視の学生鞄だ。
頭には可愛らしい髪飾りまでつけてある。
どこかのお嬢様のような上品さとショートケーキみたいなかわいらしさが漂う、日本人形のような長い黒髪の少女。
それが何故か、草川流耶と同じ声で話しかけてきた。
二人は凍り付き、目の前の少女が十二学区での流耶の姿であると死に物狂いで飲み込む。
「――御波、洗面器を持っているか?」
「――持ってない。逆に聞くけどバケツ持ってないか?」
「すまない。私も持ってない。むしろあったら私が使いたい」
ホタルの静かな問いに透哉も小さな声で何かを我慢しているように答える。
「何かしら、随分失礼ことを言われている気がするわ」
真っ白な流耶は、事もあろうに頬をぷくっと膨らませて、かわいらしくむくれて見せる。
その姿に透哉とホタルの中の何か大事なものが破断した。
「おおおっ! お前! なんだその服と笑顔と言葉遣いは!? それといつも頭に巻いている包帯はどこに行った!? それと服とにっこりと喋り方は!?」
「流耶、早く説明してやれ。源が壊れかかっている」
瞬く間に厳戒態勢を迎えたホタル。迅速に対応しなければ取り返しがつかないことになる。最悪、深刻な後遺症が残ってしまうかもしれない危うい状態だ。
説明を促す透哉の顔色も悪いが、症状で上を行くホタルの存在が透哉の意識をギリギリの部分で踏みとどまらせた。
「そうね、テラスでお茶でもしながらどうかしら?」
透哉とホタルの状態など気にもとめず流耶は「うふふっ」と口元に手を添えて上品に笑う。
「「気持ちが悪い! 吐きそうだ!」」
「あら、じゃあ先にトイレに案内しようかしら?」
「「バケツを頼む! 大きめの奴を二人前!!」」
「あらあら、仲がいいことで」流耶は困ったように言ってやや低めの声で二人に詰め寄ると「……私のここでの立場も考えてくれる?」口元を歪ませて耳打ちする。
気づくと周囲の視線がこちらに集まっていた。
いつもの流耶に二人は安堵して後に従うことにした。
三人はエントランスからそそくさと立ち去ると、下りのエスカレーターに飛び乗った。
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