嘘やん……

神崎 ルナ

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「うそでしょ……」



身体中に広がる筋肉痛にも似た鈍い痛み。


見覚えのない、ホテルと思わしき室内には広いベットが目立つように配置されていて、あたしはそこにいた。


ご丁寧にも後ろから抱き締められた体勢で。


規則的な鼓動が背中に響く。


(ってちょっと待って!!)


そのことが示す事実にあたしの全身が、かっと熱くなり、次の瞬間冷や汗が落ちた。


(待って昨日は……)




五年も付き合っていた相手が妻子持ちだと知り、バックに遠心力つけて叩きつけてやって、その後やけになってバーに駆け込んでやけ酒して……。



(まさか)


この年で未経験、って訳じゃないし流石にナニがあったかは分かる。


分かるけど、


(テンプレすぎるやろ、自分っ!!)



浮気(どっちかというと不倫)されてバーで男引っかけて一夜を共に、ってどこの三文小説っ!?


(小説とかだと大体イケメンとかで、あれこれあったけど最後はハピエン、って普通はないからっ!!)


大体その辺のバーにそうそうイケメンは落ちていないはず。


(そもそも会ってすぐこれ、ってどう考えても一夜限りの相手ってことじゃないっ!!)


とにかくここは逃げの一手、とそろりと体を起こそうとしたその瞬間腰から背中の辺りにかけて甘い衝撃が走り抜けた。


「……」


かろうじて声にはしなかったものの、余韻がじんじんと流れ、力が入らない。


(ちょっ、まさかこれ)



体の奥までは届いてないし(まだ向こうも寝てるからそれほどは……。ってこの時点で結構存在感あるんだけどっ)、確実にあれを連想させるものがあたしの足の間に挟まってて。


(嘘やん……)



自覚したとたん、体の奥に甘い熱が生まれた。


(え、どうして)



焼き付くようでどこかもどかしいそれは一度も感じたことのないもので。


大体、元彼(って言っていいのか)との夜はあたしが奉仕するばかりで、くたくたに疲れてからの行為で感じるどころかひたすら我慢の連続だった。


それでも捨てられたくなかったから、それなりによがってるふりまでして。


(その結果があれですか)


思い返して遠い目になっていると、ぐいと体を引かれた。

その弾みでまだ浅いところにいたそれが体の奥へ押し込まれ、自分でも信じられないほど甘い息が漏れる。


「……っ、」


何とか体に走る感覚を逃していると肩を軽く噛まれた。


「俺がいるのに他のこと考えてた?」


耳元で言われた言葉はありきたりなのに、独占欲と執着を感じさせるには十分で。


(凄い美声なんだけどっ!!)


これだけ声が良かったら後は何でも許せるかも、ってくらいのレベルだった。


(ってか、相手の顔くらい覚えてなさいよ、あたしっ!!)




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