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「今回の品はなかなかだな」

「有難うございます」



何がなじょしてこうなった。


場所は恐らくどこかの空き倉庫。

空調もない倉庫内には、段ボール等の箱があちらこちらに積まれ、その中央に十数人の人間がロープで縛られ、転がされていた。


彼らは(あたしを除いて)皆、華奢で顔の造りも繊細な美しさを見せていることから、オメガだとすぐに分かる。


(あたしは思い切りテチガイか何かだな。暗かったし)


久々にこっそり溜めに溜めたフェロモン解放しようと、人気のない場所を探してたら、拉致られました。


(何て情けない理由)


ちなみに何故そんなにフェロモン抑えているのかというと、自分がアルファだということに慣れないのと、うっかりオメガとかち合ってヒートとか起こされても大変だし、と考えてたからなんだけど。


「おや、これは?」

「申し訳ありません。どうしてか紛れ込んでしまいまして。ベータですが、何かに使え……」


(あたしはベータじゃないってばっ!!)


叫んでやりたくても、猿ぐつわを嚙まされてるので無理だった。


(だけど、こいつらアルファにしてはフェロモン薄いなあ)


同じアルファでも、実は序列があったりする。


見た感じ、トップはあのふたりみたいだけど、何かあたしよりは下みたい。



(まあ、そうでもなきゃ、こんなバカなことしないか)





オメガの裏取引。


オメガ性を持つ者は少なく、その見目の良さから、闇ルートで売買されることがある、とは聞いていたけれど。


この場でアルファのフェロモンを出して圧倒してもいいのだけど、まだ状況が読めない。


(せめて脱出路は確保しないと)



「まあベータでも若い女性のようですし。幾らでも買い手は見付かるでしょう」


「ではこれも商品として」


(げっ)


ぴき、と顔が引きつった時だ。



「彼女に触るな」


とても聞き覚えのある、ここで聞こえてはならない声がした。




倉庫の重い扉を開けて入ってきたのは、あたしがよく知る相手だった。


「その人は僕がマーキング済みなんです。手をつけてもらっては困りますね」


場は一瞬、緊迫したものになりかけたが、相手がひとり、と知ると、


「何だ、この女のつれか?」


「おや、この匂い……これはちょうどよい。オメガのようですな」


とたん、奴らの片割れがアルファのフェロモン(弱)を出した。


それでもオメガにはキツいらしく。


「うっ、」

「ぐっ、」

床に転がされているオメガ達の間からうめき声が上がる。



(ひどい)


誰も好きでそうなった訳じゃないのに。


ただアルファに生まれ付いただけで、そんなに傲慢な優越感を持つなんて。


――許さない。

あたしは久しぶりにフェロモンを解放した。


「うがっ、」

「何だっ、」


アルファのおバカさん達には加減なしでぶつけてやった。



「小野寺さんっ!!」

「何だこれはっ!!」

「退避っ!! 抑制剤をっ!!」


彼の傍らからバラバラと人が来て何か叫んでいたけど、こっちはそれどころじゃない。



(悪い奴等には制裁を。それ以外の人達には当たらないように……)





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