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初めての創作作業
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その夜僕はスマホを手に固まっていた。
帰宅して課題も済ませ、夕食等も終えた後気紛れにネット小説を読み漁った。
殆どが片想いを扱ったものを探して読み終えたが、自分と似たような、共感できるものはないな、と思った時ふとその一文が止まった。
――自分の想いをノートに書き出す。
これだ、と思った。
こんなに苦しいのは内に秘めているからで、一度何らかの形で表に出してしまえばきっと違うのだろう。
(小説を書くには――。いや、ただこの想いを隠すためなんだからそんなに拘らなくていいだろう)
投稿画面を出したところで指が止まった。
(こんなに書く項目があるのか)
題名、あらすじはともかく――ジャンルやタグ?
(ただこの想いを打ち出したいだけなのに)
途中何度も指が止まりかけながらも何とか欄を埋め、本文を書こうとした時だった。
(はあ? サブタイトルッ!? 僕はそんな長文を書くつもりはないっ!! というかショートショートのつもりなのだけれど?)
頭の中にはてなマークを飛ばしながらスマホを手に固まること十分余。
白詰草の指輪が頭を過り、『忘れたのは君』と入力することが出来た。
(サブタイトルでこんなに悩むとは思わなかった……)
既にメンタルをやられながらも指を進める。
ちなみにタイトルは決まっている。
バウムクーヘンエンド。
仲が良かった二人の内の一方が違う相手と挙式を挙げ、その帰宅後に引き出物のバウムクーヘンを一人で食しながら失恋の痛手に浸る、というシチュエーションだ。
高校生の僕には想像もつかないが――いや、案外想像つくかもしれない。
教会で式を挙げるタキシード姿の光とドレス姿の彼女の姿が浮かんでしまい、指が止まる。
一度深く息を吐いて心を落ち着かせる。
(ここで手が止まってどうするんだ。ああ、丁度いい。二次会の誘いを断るところからにしよう)
意外とスムーズに場面が浮かび、次に白詰草の場面に転換しようとしたが、同じページでは無理があるかも、と次の話へ回すことにした。
(あ、またサブタイトルか。ええと……『君が言ったのに』……いや、これだと何だか詰っているようだから。『君がいったのに』の方が柔らかい印象になるか。というかなかなか気を遣うな。ってこれは本当に小説って訳でもないんだけど。いや、あまりにも現実に近いと身バレするかもしれないしな)
白詰草の場面はスムーズに書けた。
(一番好きなところだしな)
ただ、薬指だという指摘は先生にして貰い、同級の子達はなしにした。
折角の思い出なのに揉めている場面にしたくなかったからだ。
(本当に可愛いな。光)
思い出の中の光にこちらもほんわりしながら話を進める。
(次は――『君が大事だから』)
自分のせいで幼なじみに迷惑がかかる、と距離を取る主人公。
(まあ、僕は違うけれど)
僕の幼なじみ、ということで妬んで光を苛めようとする輩とは物理でオハナシ合いしておいたし。
告白できないのだからせめて光に恋人が出来るまでは一緒にいたい、と思っていたのだけれど。
(もう、ここまでか)
今でさえ嫉妬で光にひどい態度を取ってしまいそうになる。
主人公は距離を置いて疎遠になった。
(やっぱり僕もそうした方がいいのかな……)
この想いを言葉に出すことは出来ない。
書き終えた頃には頭の中がぐしゃぐしゃになっていた。
(公開ボタンは――。どうしようか)
迷いながらも予約公開をセットする。
今すぐにはボタンを押せそうになかったから。
(その頃には少しはマシになっているかな)
だからその小説が公開された日にこんな目に遭うだなんて全く予想もしていなかった。
「ねえ、この小説書いたの、海斗だよね?」
目の前にはハイライトの消えた目をした光。
(どうしてこうなったっ!?)
帰宅して課題も済ませ、夕食等も終えた後気紛れにネット小説を読み漁った。
殆どが片想いを扱ったものを探して読み終えたが、自分と似たような、共感できるものはないな、と思った時ふとその一文が止まった。
――自分の想いをノートに書き出す。
これだ、と思った。
こんなに苦しいのは内に秘めているからで、一度何らかの形で表に出してしまえばきっと違うのだろう。
(小説を書くには――。いや、ただこの想いを隠すためなんだからそんなに拘らなくていいだろう)
投稿画面を出したところで指が止まった。
(こんなに書く項目があるのか)
題名、あらすじはともかく――ジャンルやタグ?
(ただこの想いを打ち出したいだけなのに)
途中何度も指が止まりかけながらも何とか欄を埋め、本文を書こうとした時だった。
(はあ? サブタイトルッ!? 僕はそんな長文を書くつもりはないっ!! というかショートショートのつもりなのだけれど?)
頭の中にはてなマークを飛ばしながらスマホを手に固まること十分余。
白詰草の指輪が頭を過り、『忘れたのは君』と入力することが出来た。
(サブタイトルでこんなに悩むとは思わなかった……)
既にメンタルをやられながらも指を進める。
ちなみにタイトルは決まっている。
バウムクーヘンエンド。
仲が良かった二人の内の一方が違う相手と挙式を挙げ、その帰宅後に引き出物のバウムクーヘンを一人で食しながら失恋の痛手に浸る、というシチュエーションだ。
高校生の僕には想像もつかないが――いや、案外想像つくかもしれない。
教会で式を挙げるタキシード姿の光とドレス姿の彼女の姿が浮かんでしまい、指が止まる。
一度深く息を吐いて心を落ち着かせる。
(ここで手が止まってどうするんだ。ああ、丁度いい。二次会の誘いを断るところからにしよう)
意外とスムーズに場面が浮かび、次に白詰草の場面に転換しようとしたが、同じページでは無理があるかも、と次の話へ回すことにした。
(あ、またサブタイトルか。ええと……『君が言ったのに』……いや、これだと何だか詰っているようだから。『君がいったのに』の方が柔らかい印象になるか。というかなかなか気を遣うな。ってこれは本当に小説って訳でもないんだけど。いや、あまりにも現実に近いと身バレするかもしれないしな)
白詰草の場面はスムーズに書けた。
(一番好きなところだしな)
ただ、薬指だという指摘は先生にして貰い、同級の子達はなしにした。
折角の思い出なのに揉めている場面にしたくなかったからだ。
(本当に可愛いな。光)
思い出の中の光にこちらもほんわりしながら話を進める。
(次は――『君が大事だから』)
自分のせいで幼なじみに迷惑がかかる、と距離を取る主人公。
(まあ、僕は違うけれど)
僕の幼なじみ、ということで妬んで光を苛めようとする輩とは物理でオハナシ合いしておいたし。
告白できないのだからせめて光に恋人が出来るまでは一緒にいたい、と思っていたのだけれど。
(もう、ここまでか)
今でさえ嫉妬で光にひどい態度を取ってしまいそうになる。
主人公は距離を置いて疎遠になった。
(やっぱり僕もそうした方がいいのかな……)
この想いを言葉に出すことは出来ない。
書き終えた頃には頭の中がぐしゃぐしゃになっていた。
(公開ボタンは――。どうしようか)
迷いながらも予約公開をセットする。
今すぐにはボタンを押せそうになかったから。
(その頃には少しはマシになっているかな)
だからその小説が公開された日にこんな目に遭うだなんて全く予想もしていなかった。
「ねえ、この小説書いたの、海斗だよね?」
目の前にはハイライトの消えた目をした光。
(どうしてこうなったっ!?)
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