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第8話

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「全く。ロメオにも困ったものだな。まさかあそこまであの令嬢に入れあげるなど。廃嫡が決まったとはいえ申し訳ない」

 再び国王が頭を下げ、オフィーリアは困ったように告げた。

「此の度のこと私はそれほど気にしておりませんので、どうかお気になさらずお願い致します」

 オフィーリアの答えに国王は納得していないように見えたが、

「陛下、娘もこう申しております故」

 マベウス公爵が執り成し、何とか収まったところでこの後のことをどうするか、という話になった。

「マベウス公爵令嬢にはこの詫びとして新しい縁談をと思っていたのだが、そちらの方はどうやら必要はないようだな」

 国王の意味ありげな発言にマベウス公爵が渋面で答える。

「陛下。娘は傷心している最中にございます。そうそう次の話を持って来られても困ります」

 そのマベウス公爵の台詞に焦ったようにシャガール辺境伯令息が割り込んだ。

「お待ちを。話が違いませんか」

「何のことだね?」

「白々しい。あのバ……王太子の件が片付いたらご令嬢との婚約を前向きに考えて下さる、とおっしゃったのはそちらではないですか」

「……お父様?」

 そんな話など全く聞いてない、というふうにオフィーリアが父親の方を見る。

「いや、そうは言ったがまさかあんなにひどいやり取りを聞かされるとは、――ああ。オフィーリア。勿論其方のことではない。それでだな、もう少しばかりこちらで傷を癒してからでもよいだろう」

 マベウス公爵がそう言うとハロルドも乗って来た。

「そうですよね。オフィーリアには休養が必要です。たっぷりとね」

 その言葉を聞いて再びシャガール辺境伯令息が慌てたように割って入る。

「お前までそう来るのか。それなら学園時代の――」

「それは卑怯だぞ」

 場の空気が一気に変わりかけたところで国王が重々しく告げた。

「ではこの件は公爵に一任するが、シャガール辺境伯令息の事情も多少は考慮するよう」

「「はっ」」

「あり難きお言葉」

 その国王の言葉で場は収まったかに見えたが帰りの馬車でまたひと悶着が起きた。

「先ほどの話はまだ終わっていませんが」

 シャガール辺境伯令息がオフィーリア達の馬車に同乗する、と言い始めたのだ。




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