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第58話 発見された魔道具
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――時は少し遡る。
番の運命を変えるには自分の運命と混ぜ合わせる必要がある。
そう聞いたローズは筆頭魔術師であるギルに詳しい説明を求めた。
「方法としてはそれほど難しいものではありません。薬を同時に飲み干すだけです」
その後意識を失うため、椅子に座るか寝台に腰かけていた方がいい、と補足が入る。
「王妃様のお体に悪影響はないのでしょうか?」
アンヌの疑問にギルが答えを返した。
「お体のことでしたら心配はないですよ。……心の打撃まではわかりませんが」
それを聞いたローズが考え込むようすを見せた。
「王妃様?」
「ねぇ。アンヌ。彼の運命を変えることができたなら、私は後はどうなってもいいと思うの」
「王妃様!!」
「別に命を落とすとかそう言った意味ではないから安心して」
「できません!!」
ローズとしてはベリルに嫌われようとも仕方がないと思っての発言だった。
小さくため息をついてローズは続けた。
「きっと私の記憶を見られたら、嫌われてしまうわ。でも、彼のことだから気を遣ってなんでもないことのようにふるまって下さるでしょう。だから、先に離縁の手続きをしてしまおうと思うの」
「「王妃様!!」」
ギルとアンヌの声が重なる。
運命の番が別れるなど有り得ないことだった。
ローズの危惧を察したアンヌが声を張り上げる。
「王妃様の御心配はお察ししますが、あの番バk……ごほん、王妃様に一途な陛下がどのような記憶をご覧になられたとしてもそのようなことになるとは思えません!! どうかお考え直しをお願いいたします!!」
「お気持ちは十分にお察しますが、その判断は番である陛下がお戻りになられてからの方がよろしいかと思いますよ」
ギルもそう告げるがローズの意思は固かった。
現在シュガルト国で地位も権力もあるのは国王であるベリルであるが不在であり、そうなると王妃であるローズの発言力が最も高くなる。
これはどうしたものか、とギルとアンヌが目で相談し始めたとき、扉を叩く音がした。
「失礼します。筆頭魔術師様に火急の用があるとの者が来ております」
侍女の言葉にギルが訝し気な顔をした。
「よほどのことでないかぎり呼び出しはしないように言ってあるのですが」
「構いません。なにかあったのでしょう」
ローズの了承を得てギルが退出した。
「なんでしょうこんな時に」
眉を顰めたアンヌにローズが声を掛ける。
「アンヌ」
「王妃様。そう簡単に離縁などとおっしゃらないでください。どうかお考え直しを」
押し問答をしているうちにギルが戻ってきたがなんとも言い難い表情をしていた。
「このような時に申し訳ありませんが一時退席をお許しください」
聞いて見ると、保管してあった魔道具が突然反応を示したのだという。
それはかなり古くからあるもので、起動条件が難しいため長年放置されていたらしい。
「ですが、今回その……どういうわけか保管室に侵入者があり、その者の血が魔道具に付着したようなのです」
「それが起動条件なのですか? 筆頭魔術師様」
アンヌの問い掛けにギルが首を振った。
「いえ。正確には二親とも獣人である者、片方の親が獣人である者、そして二親が人族である者の血を注がなければ起動はしないはずなんですが」
報告に来た魔術師によると、大分前に実験のため二親が獣人、そして二親が人族の者の血は注がれていたのだといいう。
「どうやら侵入者がその該当者――片親が獣人である者だったらしく、一体なんの偶然なのか、その血が魔道具に注がれてしまったようなのです」
侵入者、と聞いてアンヌが色めき立つ。
「筆頭魔術師様、落ち着いている場合ではありません。その者の身柄は確保されたのですか?」
「御心配には及びません。保管室は入るのは容易いですが、出るには特殊な鍵と身分証が必要なので、侵入者は数日彷徨ったようでかなり衰弱していましたが非常食を持っていたらしく、それ以外の不調はないとのことです」
後のほうの言葉はギルの話を聞いて心配げにギルを見たローズに向けてのものだった。
たとえどのような立場の者であっても誰かが命を落とすということは避けたい。
甘いと言われようとそれがローズの思いである。
だが話はそこで終わりではなかった。
「それでですね。その起動してしまった魔道具は偶然にもシュガルト国と我が国の間で連絡が取れるものだったのです」
「……は?」
思いもよらない内容にローズが固まっているとアンヌが問い掛ける。
「それはどういったことでしょう? 筆頭魔術師様」
「その魔道具はぱっと見、鏡のような形をしております。恐らくそれと同じ物がシュガルト国にあるはずです。両方の魔道具を起動させることで鏡の部分に現在のお互いの姿が浮かび上がり、推測ですが会話もできると思われます」
魔術は三百年ほど前に最盛期を迎えたが、その力を疎んじた権力者達の手によって一度滅ぼされていた。
魔術に秀でた者を虐げたそれは魔術師狩りと呼ばれ、文明史の中でも最も大きな汚点と呼ばれている。
失われた技術の中には飛行術や人を遠く離れた場所まで転移させるものがあったらしいが、似たもので残っているのは手紙を転移させる転移陣くらいだった。
「それが本当でしたら素晴らしいことですわ。ぜひ確認に――」
「王妃様」
もしかしたらベリルと会話できるかもしれない、と浮足立つローズをアンヌが制した。
「王妃様は五日も臥せっておられたのですよ。御身を大事になさってください。筆頭魔術師様も今は王妃様の興味を引くような案件を持って来ないでくださいますか」
「アンヌ!!」
ローズが叱責するように予備がアンヌは素知らぬ顔だった。
「よろしいですね」
「わかりました」
殊勝気にうなずいてギルが退出するが、アンヌの固い表情は変わらなかった。
「ひどいわ。そんなふうに言うなんて」
「なんとでも。王妃様のお体が一番でございますから。さ、もう一度横になってください」
「もう大丈夫よ」
「どこがです。そんな真っ青な顔をなされて」
きっちりと寝具に覆われ、隙間なく上掛けの端まで抑えられたローズは反駁しようとしたが、すぐに瞼がおりてきた。
静かな寝息を立て始めた主を見下ろしながらアンヌが呟く。
「……そんなに恐れられるほどのご記憶はないはずなんですけどね」
番の運命を変えるには自分の運命と混ぜ合わせる必要がある。
そう聞いたローズは筆頭魔術師であるギルに詳しい説明を求めた。
「方法としてはそれほど難しいものではありません。薬を同時に飲み干すだけです」
その後意識を失うため、椅子に座るか寝台に腰かけていた方がいい、と補足が入る。
「王妃様のお体に悪影響はないのでしょうか?」
アンヌの疑問にギルが答えを返した。
「お体のことでしたら心配はないですよ。……心の打撃まではわかりませんが」
それを聞いたローズが考え込むようすを見せた。
「王妃様?」
「ねぇ。アンヌ。彼の運命を変えることができたなら、私は後はどうなってもいいと思うの」
「王妃様!!」
「別に命を落とすとかそう言った意味ではないから安心して」
「できません!!」
ローズとしてはベリルに嫌われようとも仕方がないと思っての発言だった。
小さくため息をついてローズは続けた。
「きっと私の記憶を見られたら、嫌われてしまうわ。でも、彼のことだから気を遣ってなんでもないことのようにふるまって下さるでしょう。だから、先に離縁の手続きをしてしまおうと思うの」
「「王妃様!!」」
ギルとアンヌの声が重なる。
運命の番が別れるなど有り得ないことだった。
ローズの危惧を察したアンヌが声を張り上げる。
「王妃様の御心配はお察ししますが、あの番バk……ごほん、王妃様に一途な陛下がどのような記憶をご覧になられたとしてもそのようなことになるとは思えません!! どうかお考え直しをお願いいたします!!」
「お気持ちは十分にお察しますが、その判断は番である陛下がお戻りになられてからの方がよろしいかと思いますよ」
ギルもそう告げるがローズの意思は固かった。
現在シュガルト国で地位も権力もあるのは国王であるベリルであるが不在であり、そうなると王妃であるローズの発言力が最も高くなる。
これはどうしたものか、とギルとアンヌが目で相談し始めたとき、扉を叩く音がした。
「失礼します。筆頭魔術師様に火急の用があるとの者が来ております」
侍女の言葉にギルが訝し気な顔をした。
「よほどのことでないかぎり呼び出しはしないように言ってあるのですが」
「構いません。なにかあったのでしょう」
ローズの了承を得てギルが退出した。
「なんでしょうこんな時に」
眉を顰めたアンヌにローズが声を掛ける。
「アンヌ」
「王妃様。そう簡単に離縁などとおっしゃらないでください。どうかお考え直しを」
押し問答をしているうちにギルが戻ってきたがなんとも言い難い表情をしていた。
「このような時に申し訳ありませんが一時退席をお許しください」
聞いて見ると、保管してあった魔道具が突然反応を示したのだという。
それはかなり古くからあるもので、起動条件が難しいため長年放置されていたらしい。
「ですが、今回その……どういうわけか保管室に侵入者があり、その者の血が魔道具に付着したようなのです」
「それが起動条件なのですか? 筆頭魔術師様」
アンヌの問い掛けにギルが首を振った。
「いえ。正確には二親とも獣人である者、片方の親が獣人である者、そして二親が人族である者の血を注がなければ起動はしないはずなんですが」
報告に来た魔術師によると、大分前に実験のため二親が獣人、そして二親が人族の者の血は注がれていたのだといいう。
「どうやら侵入者がその該当者――片親が獣人である者だったらしく、一体なんの偶然なのか、その血が魔道具に注がれてしまったようなのです」
侵入者、と聞いてアンヌが色めき立つ。
「筆頭魔術師様、落ち着いている場合ではありません。その者の身柄は確保されたのですか?」
「御心配には及びません。保管室は入るのは容易いですが、出るには特殊な鍵と身分証が必要なので、侵入者は数日彷徨ったようでかなり衰弱していましたが非常食を持っていたらしく、それ以外の不調はないとのことです」
後のほうの言葉はギルの話を聞いて心配げにギルを見たローズに向けてのものだった。
たとえどのような立場の者であっても誰かが命を落とすということは避けたい。
甘いと言われようとそれがローズの思いである。
だが話はそこで終わりではなかった。
「それでですね。その起動してしまった魔道具は偶然にもシュガルト国と我が国の間で連絡が取れるものだったのです」
「……は?」
思いもよらない内容にローズが固まっているとアンヌが問い掛ける。
「それはどういったことでしょう? 筆頭魔術師様」
「その魔道具はぱっと見、鏡のような形をしております。恐らくそれと同じ物がシュガルト国にあるはずです。両方の魔道具を起動させることで鏡の部分に現在のお互いの姿が浮かび上がり、推測ですが会話もできると思われます」
魔術は三百年ほど前に最盛期を迎えたが、その力を疎んじた権力者達の手によって一度滅ぼされていた。
魔術に秀でた者を虐げたそれは魔術師狩りと呼ばれ、文明史の中でも最も大きな汚点と呼ばれている。
失われた技術の中には飛行術や人を遠く離れた場所まで転移させるものがあったらしいが、似たもので残っているのは手紙を転移させる転移陣くらいだった。
「それが本当でしたら素晴らしいことですわ。ぜひ確認に――」
「王妃様」
もしかしたらベリルと会話できるかもしれない、と浮足立つローズをアンヌが制した。
「王妃様は五日も臥せっておられたのですよ。御身を大事になさってください。筆頭魔術師様も今は王妃様の興味を引くような案件を持って来ないでくださいますか」
「アンヌ!!」
ローズが叱責するように予備がアンヌは素知らぬ顔だった。
「よろしいですね」
「わかりました」
殊勝気にうなずいてギルが退出するが、アンヌの固い表情は変わらなかった。
「ひどいわ。そんなふうに言うなんて」
「なんとでも。王妃様のお体が一番でございますから。さ、もう一度横になってください」
「もう大丈夫よ」
「どこがです。そんな真っ青な顔をなされて」
きっちりと寝具に覆われ、隙間なく上掛けの端まで抑えられたローズは反駁しようとしたが、すぐに瞼がおりてきた。
静かな寝息を立て始めた主を見下ろしながらアンヌが呟く。
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