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69.幕間――王の血筋⑥

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服の感じから旅人みたいだった。


(金の髪に水色の瞳か。まるでお貴族様だな)


金髪ってのは王族や貴族に多い(まあ、サウス帝国は別だけど)って言われてる。


「こんなとこまで入ってきたのが悪いのさ」


「おいおい。こっちの方が上玉じゃねえか。どうせなら――」



そこまで言った男が倒れ込んだ。


その姉ちゃんの後ろから駆けつけてきた人物が蹴りを入れた、と分かるまで少しかかっちまった。


(何だ、これ)


「痛ってえ、何だおま、いてててっ!!」


地面に崩れ落ちた男の腕を後ろできっちり押さえたのは、茶髪の人の良さそうな男の人だった。



「全く。無茶をしますね」


「ごめんなさい。どうしても放っておいけなくて」



ほんわかした空気出しているとこ何なんだけど、残りの奴がすっげえにらんでるからっ!!



「このっ!!」


そいつが懐から小刀を出して茶髪の兄ちゃんに襲いかかろうとしたっ!!


「――ファイヤーボール」



小さな火の玉が幾つも現れて男に襲いかかる。



「うわあああっ!! 何だぁっ!! あちっ、あちちちちっ!!」


身体のあちこちを叩きながらそいつが路地の向こうへ消えると、


「あなたはどうします?」


腕を捕らえられていた男は、


「ちょ、ちょっと待てよっ!! まさかあんた魔法使いなのかっ!?」


ここ、トレニア国で魔法を使える者は他に比べると少ない。


しかも、強い魔法を使える者はもっと少ないらしい。


この間の内戦で大賢者が注目を集めてからは特に魔法を使える者に対する目は変わった。


「悪かったっ!! 謝るから火の玉は勘弁してくれぇっ!!」


すると茶髪の兄ちゃんが、


「仕方ないな」



放してやると、覚えてろよー(そこは言うのか)と叫びながら去って行った。



「さて」


「待って。ギル、もう一人いる」


「分かってますよ、リナ」



暗がりに声が掛けられた。



「あなたはどうしますか?」



「いや、どうもしないな」


とても聞き覚えのある声がした。



(げ、シオン)



反射的に逃げの体勢になった俺を見た姉ちゃん――リナだったか――が、


「こんな場所では目立ちますね。何か事情があるようですが、場所を変えて話しませんか?」


「リナ」


どこかいさめるように茶髪の兄ちゃん――こっちはギルだったか――が呼んだけど、


「ごめんなさい」



首を振って答えていた。




「俺はこの方の護衛だ」


だから連れて帰る、と固い声でシオンが告げるとリナは肩をすくめてみせた。


「恐らくそれでは何の解決にもならないと思います。この子がどうしてこんなことをしたのかは知りませんが、少しお時間をいただいてもよろしいですか?」



穏やかな話し方はそれまで聞いた、そのどれとも違って聞こえた。





(何だか本当に心配されてるみたいだな)



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