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61.需要と供給
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「取り上えず、その不正って何ですか? 裏帳簿とか?」
「おや開き直ったね。というか、こちらにそんな器用なもの、あるはずないじゃないかい」
そうなんだよね。ここにいる間、手伝わせてもらって分かったんだけど、こちらには貸借対照表すら存在しない。
「簿記が早く発明されるといいなぁ」
「おや、自分でやるとは言わないのかな?」
どこか面白がっているようにラインが聞いてくる。
「あたしだってそのくらい弁えてます」
あたしが持っている前世の知識は、『こちら』の世界で披露していいいものじゃない。
どうしても、というのなら先々を見据えて、それなりの舞台を準備しなくてはならない。
一瞬の栄光と、長いかもしれない人生を秤にかけるほど、無謀ではないつもり。
そう言うとラインは感心したようだった。
「ちゃんと考えてるんだね。てっきりこれはこちらの人達のためになるから、どんどん進めましょう!! とか、言うんじゃないかと思っていたよ」
「あたし、そこまでじゃないですよ」
ごめん、とラインから謝罪が入り、続けて、
「話を戻そうか。どうもライラ嬢の話によるとね、それは小麦の価格操作――自作自演みたいなんだ」
(――はあっ!?)
需要と供給。
商売をする上では忘れてはならない単語である。
この二つのバランスが取れないと、商品が過剰に溢れたり、品薄になって値上がりしたり、と下手をすれば不況を引き起こしかねないのだ。
過去、授業で習った内容を思い返していると、
「どうもね、小麦を貴族達が買い占めて、値を吊り上げようとしているんだ」
その先はあたしでも想像がついた。
小麦の値段が上がり、その山のてっぺんまできたところで売れば、差額分、大儲けができる。
(……ん? でも)
「それだとその後、小麦が暴落するんじゃ?」
「まあ、そうだよね」
そう返すラインの顔色はどこかすぐれない。
「――ライン?」
「その計画書によると、買い占めを行った貴族達を青磁宮の監査官が捕縛することになっていてね」
「は?」
「だから言ったろ。自作自演だって。わざと小麦の相場をいじってその犯人を宰相自ら――青磁宮は宰相の管轄なんだよ――捕縛する。これにより、貴族達の企みをいち早く見破った宰相に人気が集まる、という寸法だろうね」
(何ですかそれはーっ!!)
「おや開き直ったね。というか、こちらにそんな器用なもの、あるはずないじゃないかい」
そうなんだよね。ここにいる間、手伝わせてもらって分かったんだけど、こちらには貸借対照表すら存在しない。
「簿記が早く発明されるといいなぁ」
「おや、自分でやるとは言わないのかな?」
どこか面白がっているようにラインが聞いてくる。
「あたしだってそのくらい弁えてます」
あたしが持っている前世の知識は、『こちら』の世界で披露していいいものじゃない。
どうしても、というのなら先々を見据えて、それなりの舞台を準備しなくてはならない。
一瞬の栄光と、長いかもしれない人生を秤にかけるほど、無謀ではないつもり。
そう言うとラインは感心したようだった。
「ちゃんと考えてるんだね。てっきりこれはこちらの人達のためになるから、どんどん進めましょう!! とか、言うんじゃないかと思っていたよ」
「あたし、そこまでじゃないですよ」
ごめん、とラインから謝罪が入り、続けて、
「話を戻そうか。どうもライラ嬢の話によるとね、それは小麦の価格操作――自作自演みたいなんだ」
(――はあっ!?)
需要と供給。
商売をする上では忘れてはならない単語である。
この二つのバランスが取れないと、商品が過剰に溢れたり、品薄になって値上がりしたり、と下手をすれば不況を引き起こしかねないのだ。
過去、授業で習った内容を思い返していると、
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その先はあたしでも想像がついた。
小麦の値段が上がり、その山のてっぺんまできたところで売れば、差額分、大儲けができる。
(……ん? でも)
「それだとその後、小麦が暴落するんじゃ?」
「まあ、そうだよね」
そう返すラインの顔色はどこかすぐれない。
「――ライン?」
「その計画書によると、買い占めを行った貴族達を青磁宮の監査官が捕縛することになっていてね」
「は?」
「だから言ったろ。自作自演だって。わざと小麦の相場をいじってその犯人を宰相自ら――青磁宮は宰相の管轄なんだよ――捕縛する。これにより、貴族達の企みをいち早く見破った宰相に人気が集まる、という寸法だろうね」
(何ですかそれはーっ!!)
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