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42.スキル持ちの特典

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明かり目指してやって来るゴルゴンだったけれど、明かりを持った人物が逃げようとしないのを不審に思ったのか、なかなか近付いてこない。


(失敗かな?)


そう思った時、ゴルゴンが物凄い勢いで明かりを持った人物へ突撃した。


――ガツンッ!!


音を立てて仕掛けておいた人形が倒れ、同時にあたしは叫んだ。


「――フライッ!!」


とたん、魔導具マジック・バッグから出しておいた黒い布がふわりと浮かび、ゴルゴンの頭からすっぽりと包む。


「ウォーターボール」

真上から水球を浴びせることも忘れない。


身動きが取れなくなったゴルゴンへ、ロープを手に近付こうとしたあたしをラインが止めた。


「ちょっと待って。――ライト」


ゴルゴンの頭部へ光が当たると、ゴルゴンは苦しみ出した。


まるで眩しくてたまらない、というように。


(え!?)


その間にセクトルさんが小刀で止めを刺し、ゴルゴンは始末できたのだけど。



ゴルゴンが息絶えたことを確認してから、ラインが黒い布をいだ。


「見てごらん」


言われて恐る恐る見ると、後頭部にも目がっ!!


(ひえっ、)


「ゴルゴンは三姉妹の代名詞でもあるんだよ。あとこっちも」


と、ローブでぐるぐる巻きになった背中に指を差し込み、隙間を作るとそこからもっ!!


(ひいいっ!!)


「顔と頭部と背中。これで三つの魔石が取れるね。……要る?」


「要りませんっ!!」


ブンブンと首を振っているとカイン様が、


「あれで夫婦でも付き合ってもない、ってんだから分かんねーな」


「大人の事情、というものですよ」


(そこっ!! 分かったように解釈しないっ!!)


魔石を魔導具マジック・バッグにしまったところでラインが何もない通路を振り返る。


「さて」


(……?)


「そろそろ姿を現して下さいませんか? フローズン公爵令嬢?」


(はあっ!!)


「え、だってライン……あ、」


「どういうことだ?」


「――お嬢様が誠に申し訳ございません」

三者三様の答えを返していると、誰もいない通路から声がした。



「どうしてですの? 私のスキルは完璧でしたのに」


声が近付くにつれ、ひとりの女性が姿を現した。



(あ、そう言えばこの方のスキル、『石ころ』だったわ)



訝しがるカサンドラ嬢にラインは、


「賢者の称号は伊達ではありませんよ」


と笑ってそれ以上のことは教えてくれなかった。


(それも気になるけど)


ラインはローブの裾を軽く流すと、


「さて、フローズン公爵令嬢にはご機嫌麗しく。そうしてこのようなことをなさったのか、詳しく説明して下さいますよね?」


(ブリザード来たあっ!!)


「ですからその、国の大事かもしれないのに私だけが安全なところでのうのうと過ごすなんてできませんわ」


「その心意気はご立派ですがね。貴女は何ができますか?」


「スキルで隠れていられるので、いざという時には役に立てます」


「今、俺に察知されましたよね?」


「……」


「剣が使えますか?」


「……」


「魔法は?」


「……」


だんだんと追い詰められていくカサンドラ嬢に耐え切れなくなったのか、


「申し訳ありませんっ!!」

セクトルさんが割って入ってきた。


(え、これってまさか)


「やはり、貴方も知っていたんですね」


(ええー)


「おかしいと思いましたよ。どう見ても貴方はフローズン公爵令嬢専用の護衛にしか、見えませんでしたからね」



「誠にその節は」


「仕方がありませんね。ここまで来て引き返すのも、手間です。あなたがきちんと役割を全うし、何かあった際はこちらの指示に必ず従う、というのなら」



「「必ずっ!!」」


(うわ、声揃った)


なあ、とカイン様にチュニックの裾を引っ張られる。


「あのふたりも夫婦なのか?」


その声は存外、響いたようで、



「「違うっ!!」」




(あれ、何か既視感)



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