ループ

神崎 ルナ

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逆行

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どこで間違えたのだろうか。

せっかく、乙女ゲームの知識があっても、結果は変わらないんだろうか。


前世と違って美人(ちょっとキツめだけど)に生まれてきたのだけどなあ。


ごめんなさい。私にはここまででした。


と誰にともなく謝っていると、ふいに意識が浮上した。







「おはようございます。レイチェルお嬢様」


(……え?)



やわらかな朝の陽がレースのカーテンを通して広い寝台へ差し込んでくる。


(今の声……)


反射的に身を起こすと体に違和感を感じた。

(手、ちっちゃっ!! まさかこれって)

「どうしたんですか? 急に起き上がられて」


侍女のアンが不思議そうに尋ねてくる。

(若いっ!! ……もしかして逆行っ!!)


「そんなに慌てなくてもお誕生日は逃げませんよ」


苦笑いして言われ、つい鸚鵡返ししてしまった。


「誕生日?」


「さようでございます。まだお寝ぼけですか? 今日はレイチェルお嬢様の十二歳のお誕生日にございます」


(……十二歳?)


前回、記憶が蘇ったのは七歳のはず。


(どういうことだろう?)


心の奥底に引っかかるものを感じながら私はアンに促されるまま、身支度を整えた。





誕生日パーティーは盛大に開かれた。


広間にいる着飾った招待客のなかにはもちろん、婚約者である第二王子の姿もあった。


(うわあ)


脳裏にあのシーンが蘇る。


『婚約を破棄するっ!!』


首に肩に痛みが走る。


(考えちゃだめ。今は今なんだから)


学園へ入学するのは十五歳から。


(まだ間に合う)

などと思案していると第二王子が近づいてきた。


「やあ、レイチェル。誕生日おめでとう」


その笑顔にまだ邪気はなかった。


「ありがとうございます」


礼を述べ、完璧なカーテシーで応じると、周囲が騒めくのが分かった。


「まあ、あの年でもうあの水準のカーテシーができるなんて」


「やはり、第二王子のお相手だけのことはありますね」


「惜しいですわね。あと五年、いえ三年早くお生まれになっていればお妃候補になってもおかしくなかったのでは」


「しっ、それは」


「あら、失礼しました」


囁いているつもりみたいだけど、しっかり聞こえてるんですけど!!


その言い方だと第二王子のクライ様より、第一王子のラクゼン様の方に嫁いだ方が良かったんじゃないか、って聞こえるんですけどっ!!


すると案の定、クライ様がくるりと後ろを向いた。


「用を思い出した。帰る」


(へ? ちょっと何ですかそれっ!?)


侍従が慌てたように静止しているみたいだけど、クライ様はその後、本当に帰ってしまった。






(……前途多難)



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