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「今更、自分が精霊の愛し子だと言って、どうするつもりなんだ」
低く、淡々とした感情を押し殺した声。
顔色は悪いままだが、わずかに力強さを取り戻した瞳。
焦りを必死に隠そうとするアイヴァンに、リーリエは目を細めて悩んでみせる。
「そうね……。……私が本当の精霊の愛し子だと公表しないと。精霊の愛し子だと騙って、世間を欺くなんてあってはいけないことだもの」
「そんなことをして、俺がどうなると思っているんだ!勲章まで貰ったんだぞ!!!」
どうなるか、か……。
リーリエの言葉に感情を隠そうともせず、震えた声で語気を強めて言うアイヴァンに、リーリエは意地悪くニッコリと笑った。
「皇族を騙した罪として捕まるんじゃないかしら?」
「なっ…………」
リーリエの言葉に、アイヴァンは先程とは比べようがないぐらいに、動揺を見せた。
青白い顔に動揺で揺れる瞳。ガタガタと震える身体。
アイヴァンが動揺するのも無理はない。
皇室詐欺罪は極刑を意味する。
この国に死刑こそないが、光を見ることさえ許されず、一生檻の中で暮らすことになる。
そして、意識を保つのさえ難しい厳しい拷問の末。存在を消されることもあると言う。
「お前も捕まるんだぞっ!!分かっているのかっ!!??」
髪の毛をかき乱し、恐怖に支配された瞳で、掴みかかりそう勢いで怒鳴るアイヴァン。
やっと自分が犯した過ちたちに気が付いたみたいね。
だけど、ダメ。
これだけじゃ足りない。
「私は大丈夫。精霊の愛し子は特別だから」
フー。フー。と鼻息を荒くするアイヴァンに、リーリエは優雅に微笑む。
「アイヴァンが一番よく知っているでしょう?精霊の愛し子がどれほど特別なのか」
今までアイヴァンの横柄な態度が許されていたのは、精霊の愛し子だからという理由だけ。
でも、本当の精霊の愛し子は私。
私の目から見ても、アイヴァンは精霊の愛し子という威光を借りて、好き勝手にやってきていた。
今回の剣術学部の重傷を負わせた件でも、アイヴァンが精霊の愛し子だという理由で、先生たちは強く注意出来なかったと聞く。
精霊の愛し子という威光がまやかしだと知った時、アイヴァンの周りの人たちは、どんな反応をするのだろうか?
アイヴァンの取り巻きたちや、浮気相手。
誰が最後までアイヴァンの側にいるのかしら?
でも、今後アイヴァンがどうなろうと私には関係のないことだ。
リーリエは怒りを隠そうともしない瞳で、アイヴァンを真っ直ぐと見て口を開いた。
「アイヴァンが悪いのよ。エヴァ・ガルソンと共謀して、私の大切な人たちにも手を出そうとしたんだから」
低く、淡々とした感情を押し殺した声。
顔色は悪いままだが、わずかに力強さを取り戻した瞳。
焦りを必死に隠そうとするアイヴァンに、リーリエは目を細めて悩んでみせる。
「そうね……。……私が本当の精霊の愛し子だと公表しないと。精霊の愛し子だと騙って、世間を欺くなんてあってはいけないことだもの」
「そんなことをして、俺がどうなると思っているんだ!勲章まで貰ったんだぞ!!!」
どうなるか、か……。
リーリエの言葉に感情を隠そうともせず、震えた声で語気を強めて言うアイヴァンに、リーリエは意地悪くニッコリと笑った。
「皇族を騙した罪として捕まるんじゃないかしら?」
「なっ…………」
リーリエの言葉に、アイヴァンは先程とは比べようがないぐらいに、動揺を見せた。
青白い顔に動揺で揺れる瞳。ガタガタと震える身体。
アイヴァンが動揺するのも無理はない。
皇室詐欺罪は極刑を意味する。
この国に死刑こそないが、光を見ることさえ許されず、一生檻の中で暮らすことになる。
そして、意識を保つのさえ難しい厳しい拷問の末。存在を消されることもあると言う。
「お前も捕まるんだぞっ!!分かっているのかっ!!??」
髪の毛をかき乱し、恐怖に支配された瞳で、掴みかかりそう勢いで怒鳴るアイヴァン。
やっと自分が犯した過ちたちに気が付いたみたいね。
だけど、ダメ。
これだけじゃ足りない。
「私は大丈夫。精霊の愛し子は特別だから」
フー。フー。と鼻息を荒くするアイヴァンに、リーリエは優雅に微笑む。
「アイヴァンが一番よく知っているでしょう?精霊の愛し子がどれほど特別なのか」
今までアイヴァンの横柄な態度が許されていたのは、精霊の愛し子だからという理由だけ。
でも、本当の精霊の愛し子は私。
私の目から見ても、アイヴァンは精霊の愛し子という威光を借りて、好き勝手にやってきていた。
今回の剣術学部の重傷を負わせた件でも、アイヴァンが精霊の愛し子だという理由で、先生たちは強く注意出来なかったと聞く。
精霊の愛し子という威光がまやかしだと知った時、アイヴァンの周りの人たちは、どんな反応をするのだろうか?
アイヴァンの取り巻きたちや、浮気相手。
誰が最後までアイヴァンの側にいるのかしら?
でも、今後アイヴァンがどうなろうと私には関係のないことだ。
リーリエは怒りを隠そうともしない瞳で、アイヴァンを真っ直ぐと見て口を開いた。
「アイヴァンが悪いのよ。エヴァ・ガルソンと共謀して、私の大切な人たちにも手を出そうとしたんだから」
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