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23:真実
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「皇帝陛下……?」
戸惑うアイヴァンに、リーリエは全てが吹っ切れたような余裕の笑みを浮かべる。
「皇帝陛下の勅命なら、あなたも聞くほかないでしょう?」
「皇帝陛下が貴族の婚約について、いちいち口出しすると思っているのか?」
「普通の貴族の婚約ならしないでしょうね。だけど、高位貴族や特別な立場にある貴族ならどうかしら?たとえば……、精霊の愛し子とか」
精霊の愛し子。
揺れ動く瞳。強張った表情。この言葉にアイヴァンの身体は、動揺を露わにする。
アイヴァンが動揺するのも無理はない。
アイヴァンと私の間で、精霊の愛し子という単語が出てくるのは、片手で数えることができるぐらいしかない。
私はアイヴァンを騙しているという負い目から、精霊という単語でさえも、口にしないようにしていた。
それに、アイヴァンも精霊の愛し子と呼ばれるのを嫌っていたから、アイヴァンも私から話さない限り、精霊のことについて話すことはなかった。
「フィオリトゥーラ」
「フィオ……?なんだそれは?」
フィオリトゥーラ。
開花を意味するこの言葉は、可憐で美しい私の小さな友人である精霊の名前。
「精霊の名前よ。アイヴァンは知らないだろうけど」
「どうして俺が知らない精霊の名前を、お前が知っているんだ?」
アイヴァンの問いに、リーリエは緊張しているのを悟られないように、生唾を飲み込む。
アイヴァンに今から言おうとしていることは、私が何年も隠していたこと。
大丈夫。
私には私を信じて支えてくれる人たちがいる。
『自分の気持ちに正直になった方がいい』
ジェレミーにそう言われて、婚約破棄を決意した時から、アイヴァンに真実を伝える日が来ることは分かっていたんだから。
リーリエは手をギュッと握ると、胸元に手を持ってくると優雅に笑ってみせる。
「だって……。私が精霊の愛し子なんですもの」
「はっ…………??」
リーリエの突然の告白に、驚きで目を見開いたアイヴァンは固まっている。
もっと、口にするのを躊躇すると思っていたのに……。
何年も誰にも言えなかった真実。
リーリエ自身も淀みなく言葉が出てきたことに、リーリエは驚いていた。
アイヴァンの驚く姿が新鮮で、リーリエは緊張が解けたようにクスクスと思わず笑みをこぼす。
「な……、にを言っているんだ」
笑うリーリエをアイヴァンは、化け物を見るような恐怖と絶望で支配されたような真っ青な顔で見ている。
リーリエはアイヴァンに私が本当の精霊の愛し子だと伝えたら、どんな反応をするのか考えたことがある。
けれど、予想していたよりアイヴァンの反応が深刻で、病人のように青ざめるアイヴァンを不思議に思う。
自分が精霊の愛し子なんておかしい。と薄々気付いていると思っていたのに、アイヴァンは何も思っていなかったの?
「アイヴァンもおかしいと思っていたでしょう?アイヴァンは精霊の姿を見たことはある?」
「……」
アイヴァンは精霊を見たことがない。
青ざめた顔のまま沈黙するアイヴァンを、リーリエは肯定だと受け取った。
「精霊の愛し子なのに、精霊の姿を見たことがないなんて、あり得ないわ」
戸惑うアイヴァンに、リーリエは全てが吹っ切れたような余裕の笑みを浮かべる。
「皇帝陛下の勅命なら、あなたも聞くほかないでしょう?」
「皇帝陛下が貴族の婚約について、いちいち口出しすると思っているのか?」
「普通の貴族の婚約ならしないでしょうね。だけど、高位貴族や特別な立場にある貴族ならどうかしら?たとえば……、精霊の愛し子とか」
精霊の愛し子。
揺れ動く瞳。強張った表情。この言葉にアイヴァンの身体は、動揺を露わにする。
アイヴァンが動揺するのも無理はない。
アイヴァンと私の間で、精霊の愛し子という単語が出てくるのは、片手で数えることができるぐらいしかない。
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それに、アイヴァンも精霊の愛し子と呼ばれるのを嫌っていたから、アイヴァンも私から話さない限り、精霊のことについて話すことはなかった。
「フィオリトゥーラ」
「フィオ……?なんだそれは?」
フィオリトゥーラ。
開花を意味するこの言葉は、可憐で美しい私の小さな友人である精霊の名前。
「精霊の名前よ。アイヴァンは知らないだろうけど」
「どうして俺が知らない精霊の名前を、お前が知っているんだ?」
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アイヴァンに今から言おうとしていることは、私が何年も隠していたこと。
大丈夫。
私には私を信じて支えてくれる人たちがいる。
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リーリエは手をギュッと握ると、胸元に手を持ってくると優雅に笑ってみせる。
「だって……。私が精霊の愛し子なんですもの」
「はっ…………??」
リーリエの突然の告白に、驚きで目を見開いたアイヴァンは固まっている。
もっと、口にするのを躊躇すると思っていたのに……。
何年も誰にも言えなかった真実。
リーリエ自身も淀みなく言葉が出てきたことに、リーリエは驚いていた。
アイヴァンの驚く姿が新鮮で、リーリエは緊張が解けたようにクスクスと思わず笑みをこぼす。
「な……、にを言っているんだ」
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リーリエはアイヴァンに私が本当の精霊の愛し子だと伝えたら、どんな反応をするのか考えたことがある。
けれど、予想していたよりアイヴァンの反応が深刻で、病人のように青ざめるアイヴァンを不思議に思う。
自分が精霊の愛し子なんておかしい。と薄々気付いていると思っていたのに、アイヴァンは何も思っていなかったの?
「アイヴァンもおかしいと思っていたでしょう?アイヴァンは精霊の姿を見たことはある?」
「……」
アイヴァンは精霊を見たことがない。
青ざめた顔のまま沈黙するアイヴァンを、リーリエは肯定だと受け取った。
「精霊の愛し子なのに、精霊の姿を見たことがないなんて、あり得ないわ」
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