8 / 26
7:幼き日の夢と精霊
しおりを挟む
『ワタシをキライにならないで』
光をまとったリーリエの小さな友人は真珠のようにキラキラと輝く涙を流している。
リンゴ一つ分もない小さな身体をさらに縮こませて泣く姿に、幼いリーリエは言った。
『ワイン畑のブドウをどこよりも実りが豊かにして欲しい』
泣いていた小さな友人は涙をぬぐい『約束』と差し出されたリーリエの小指をギュッと握った。
これはリーリエと小さな精霊以外、誰も知らない秘密の約束。
「起きて、リーリエ!!遅刻するわよ!!」
同室のジャスミンに起こされて、何とか朝食の時間に待に合ったリーリエは懐かしい夢を見たせいか、ぼんやりとする頭を抱えながら何とか食べ物を口に運んでいる。
髪の毛も一緒に食べようとするリーリエに、ジャスミンはリーリエの髪の毛を耳に掛ける。
「髪の毛を一緒に食べないの。もぉ、メガネに牛乳が付いてるわよ」
ジャスミンはリーリエのメガネを拭くと、満足げな表情をして食事を続けた。
ジャスミンのこの行動は慣れたもので、朝が弱いリーリエもそれを自然に受け入れる。
「今日はベルナルドと会う日でしょ?」
「そうね……。今日から基礎を終えて、応用を教えてくれると言っていたわ」
「授業の勉強だけでも大変なのに、授業外で魔法の勉強をするなんて信じられない。私なら頭がパンクしちゃうわ」
「そうかしら?新しいことを知るのは楽しいのに」
「楽しいのは分かるけど、限度っていうものがあるの」
ジェレミーと図書館で出会ってからリーリエはジェレミーと週に一度は必ず会っている。
リーリエが独学で魔法を勉強していることを知ったジェレミーは、自分が魔法を教えることを提案してくれたのだ。
最初は断ろうとしていたリーリエだが、独学では限界を感じていたため、ジェレミーのその提案を受け入れることにした。
ジェレミーに魔法を教えてもらうようになって、リーリエは自分自身が変わったと実感している。
簡単な魔法を使えるようになった。
それに、今まで頭を悩ませていたアイヴァンとの関係を終わらせることが出来た。
今までは限られた所にしか行かなかったけれど、アイヴァンと会うことを気にせず、色んな所に足を運べるのはとても気分が良い。
ご機嫌なリーリエにジャスミンは首を傾げると、何かを思い出したかのように口を開いた。
「今週の「ねぇ。聞きたいことがあるんだけど少しいいかしら?」
「……何よ。あなたたち」
言葉を遮られたジャスミンは、割って入ってきた二人の女子学生を不満げにジトっとした目で見る。
挨拶はするが、まともに話したことがない彼女たちに人見知りのリーリエは身体を固くする。
「聞きたいことって何かしら?」
リーリエの言葉に、二人の女子学生はにっこりと笑うとリーリエとジャスミンの隣に座った。
「剣術学部で大変なことが起こったんですって」
「大変なこと?何があったの?」
剣術学部という単語にビクッと身体を震わすリーリエを、ジャスミンはチラッと見ると女子学生に続きを促す。
「生徒が一人立てないほど重傷を負って、剣術学部は大騒ぎ」
「それの何が大変なことなの?重傷を負うなんて剣術学部ではよくあることじゃない。魔法学部の私でも授業で怪我をすることがあるのに。それに、怪我なんてすぐ治せるし全然大変なことじゃないわ」
「チッチッチ。それが大変なことなの」
呆れるジャスミンにジャスミンの隣に座る女子学生は人差し指を揺らす。
リーリエの隣に座る女子学生がしたり顔でリーリエを見る。
「その重傷を負わせた相手がアイヴァン・フォン・クレイフォード」
アイヴァンの名前にご飯を食べながら黙って聞いていたリーリエは動きを止める。
アイヴァンが怪我を負わせた?
「彼。あなたの婚約者でしょ?」
「何か知ってるかなと思って」
「ちょっと!リーリエはパパラッチじゃないのよ!!そんなに知りたいなら本人に直接聞きなさいよ!」
ジャスミンの言葉に二人の女子学生は顔を見合わせる。
「だって。彼は学園の有名人だし。いつも誰かと一緒にいるから」
「精霊の愛し子ってだけでも話しかけにくいじゃない」
光をまとったリーリエの小さな友人は真珠のようにキラキラと輝く涙を流している。
リンゴ一つ分もない小さな身体をさらに縮こませて泣く姿に、幼いリーリエは言った。
『ワイン畑のブドウをどこよりも実りが豊かにして欲しい』
泣いていた小さな友人は涙をぬぐい『約束』と差し出されたリーリエの小指をギュッと握った。
これはリーリエと小さな精霊以外、誰も知らない秘密の約束。
「起きて、リーリエ!!遅刻するわよ!!」
同室のジャスミンに起こされて、何とか朝食の時間に待に合ったリーリエは懐かしい夢を見たせいか、ぼんやりとする頭を抱えながら何とか食べ物を口に運んでいる。
髪の毛も一緒に食べようとするリーリエに、ジャスミンはリーリエの髪の毛を耳に掛ける。
「髪の毛を一緒に食べないの。もぉ、メガネに牛乳が付いてるわよ」
ジャスミンはリーリエのメガネを拭くと、満足げな表情をして食事を続けた。
ジャスミンのこの行動は慣れたもので、朝が弱いリーリエもそれを自然に受け入れる。
「今日はベルナルドと会う日でしょ?」
「そうね……。今日から基礎を終えて、応用を教えてくれると言っていたわ」
「授業の勉強だけでも大変なのに、授業外で魔法の勉強をするなんて信じられない。私なら頭がパンクしちゃうわ」
「そうかしら?新しいことを知るのは楽しいのに」
「楽しいのは分かるけど、限度っていうものがあるの」
ジェレミーと図書館で出会ってからリーリエはジェレミーと週に一度は必ず会っている。
リーリエが独学で魔法を勉強していることを知ったジェレミーは、自分が魔法を教えることを提案してくれたのだ。
最初は断ろうとしていたリーリエだが、独学では限界を感じていたため、ジェレミーのその提案を受け入れることにした。
ジェレミーに魔法を教えてもらうようになって、リーリエは自分自身が変わったと実感している。
簡単な魔法を使えるようになった。
それに、今まで頭を悩ませていたアイヴァンとの関係を終わらせることが出来た。
今までは限られた所にしか行かなかったけれど、アイヴァンと会うことを気にせず、色んな所に足を運べるのはとても気分が良い。
ご機嫌なリーリエにジャスミンは首を傾げると、何かを思い出したかのように口を開いた。
「今週の「ねぇ。聞きたいことがあるんだけど少しいいかしら?」
「……何よ。あなたたち」
言葉を遮られたジャスミンは、割って入ってきた二人の女子学生を不満げにジトっとした目で見る。
挨拶はするが、まともに話したことがない彼女たちに人見知りのリーリエは身体を固くする。
「聞きたいことって何かしら?」
リーリエの言葉に、二人の女子学生はにっこりと笑うとリーリエとジャスミンの隣に座った。
「剣術学部で大変なことが起こったんですって」
「大変なこと?何があったの?」
剣術学部という単語にビクッと身体を震わすリーリエを、ジャスミンはチラッと見ると女子学生に続きを促す。
「生徒が一人立てないほど重傷を負って、剣術学部は大騒ぎ」
「それの何が大変なことなの?重傷を負うなんて剣術学部ではよくあることじゃない。魔法学部の私でも授業で怪我をすることがあるのに。それに、怪我なんてすぐ治せるし全然大変なことじゃないわ」
「チッチッチ。それが大変なことなの」
呆れるジャスミンにジャスミンの隣に座る女子学生は人差し指を揺らす。
リーリエの隣に座る女子学生がしたり顔でリーリエを見る。
「その重傷を負わせた相手がアイヴァン・フォン・クレイフォード」
アイヴァンの名前にご飯を食べながら黙って聞いていたリーリエは動きを止める。
アイヴァンが怪我を負わせた?
「彼。あなたの婚約者でしょ?」
「何か知ってるかなと思って」
「ちょっと!リーリエはパパラッチじゃないのよ!!そんなに知りたいなら本人に直接聞きなさいよ!」
ジャスミンの言葉に二人の女子学生は顔を見合わせる。
「だって。彼は学園の有名人だし。いつも誰かと一緒にいるから」
「精霊の愛し子ってだけでも話しかけにくいじゃない」
48
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後
春野こもも
恋愛
王子に婚約破棄をしてもらおうと、婚約者の侯爵令嬢を罠に嵌めようとして失敗し、実家から勘当されたうえに追放された、とある男爵令嬢のその後のお話です。
『婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~』(全2話)の男爵令嬢のその後のお話……かもしれません。ですがこの短編のみでお読みいただいてもまったく問題ありません。
コメディ色が強いので、上記短編の世界観を壊したくない方はご覧にならないほうが賢明です(>_<)
なろうラジオ大賞用に1000文字以内のルールで執筆したものです。
ふわりとお読みください。
もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?
婚約破棄と言いますが、好意が無いことを横においても、婚約できるような関係ではないのですが?
迷い人
恋愛
婚約破棄を宣言した次期公爵スタンリー・グルーバーは、恥をかいて引きこもり、当主候補から抹消された。
私、悪くありませんよね?
婚約破棄ってこんな日にするのね。私は何とお答えすればよろしいのでしょうか。
まりぃべる
恋愛
私は、ユファ=ライヴァン子爵令嬢です。
チルチェイン=ヤーヌス伯爵令息が、婚約者だったのですけれど、婚約破棄したいと言われました。
こんな日に!?
私は、何とお答えすれば良いのでしょう…。
☆現実とは違う、この作品ならではの世界観で書いております。
緩い設定だと思ってお読み下さると幸いです。
婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)
しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」
卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。
集められる三人の令嬢と婚約破棄。
「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」
「ずっとこの日を待っていました。」
そして、最後に一人の令嬢は・・・
基本隔日更新予定です。
「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?
水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。
王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。
しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。
王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。
ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。
婚約破棄ですか? その前に…そこへ直れ!!
鳥類
恋愛
『アシュレイ…君との婚約を…無かったことに…』
呼び出された先で婚約者のグランディスに告げられた一言。
あれ、タイミングが違いますねぇ? これは…もしかするともしかします…?
婚約破棄する前に、ちょっくらオハナシアイをしたいので、お付き合いいただけますよね?
一度書いてみたかった婚約破棄ネタ。n番煎じすんまそん。
婚約破棄されないために頑張るご令嬢って可愛らしいと思うんですよね。
※サラッと読めるように余り深く深く掘り下げてませんので、矛盾点がございましてもぬるーく見逃してやってください。
少しでも楽しんでいただけたらありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる