3 / 26
2:美しい人
しおりを挟む
リーリエの大きなメガネ越しでもキラキラと輝く金髪に、エメラルドのように輝く理知的な瞳。
美しい人……。
男性にこの言葉が合っているのか分からないが、リーリエはこんなに美しい男性を初めて見た。
王子様が図書館に迷い込んだのかと思ったけれど、彼が魔法学部のローブを纏っていることで学園に通う男子生徒だということが分かった。
リーリエは本物の王子を見たことがある。
本物の王子以上にただならむオーラを放つ彼は、彼がいる図書館という空間を特別な場所に思わせる不思議な魅力を放っている。
リーリエは瞬きを数回繰り返して言葉を絞り出す。
「………………隣、ですか?」
「他の席には座り辛くて」
眉尻を下げて困ったように言う彼はチラッと周囲を見て言った。
彼を真似するようにリーリエも周囲を見ると、ビクッと身体を震わせる。
凄い見られてる……。
図書館にいる全ての人の視線が集中しているんじゃない?
そう思わせる視線の数と飢えた猛獣のようなギラギラと輝く視線に圧倒されたリーリエは、目の前に立つ彼に視線を戻す。
リーリエの反応に申し訳なさそうにする彼が、リーリエの瞳には猛獣の中に解き放たれて震える子兎に見えた。
勉強さえも簡単に出来ないなんて……。
こんなに美しい人なら、誰かに助けを求めることは簡単なことではなかったはず。
勉強をしに図書館に来たら彼を狙う猛獣達。
そして、彼が助けを求めたのは人畜無害そうな私。
困っている人を助けない理由はない。
「どうぞ」
「ありがとう」
リーリエの言葉にフワッと花が咲くように笑った彼はキレイで、リーリエは眩しい物を見るように目を細めた。
彼が隣に座ると時々視線が気になりはしたけれど、図書館には静かな時間が流れていた。
最初こそアイヴァンに会って気分が落ち込んでいたリーリエだが、課題の進み具合に満足そうに頷く。
隣を見るとすでに彼の姿はなく、かわりに一冊の本が取り残されていた。
忘れ物?
本を手に取ってページをめくると、キレイな字で書き込みがされている。
小難しい魔法の話が永遠と書かれている本をパラパラと最後のページをめくると。
「ジェレミー・ベルナルド……」
美しい人……。
男性にこの言葉が合っているのか分からないが、リーリエはこんなに美しい男性を初めて見た。
王子様が図書館に迷い込んだのかと思ったけれど、彼が魔法学部のローブを纏っていることで学園に通う男子生徒だということが分かった。
リーリエは本物の王子を見たことがある。
本物の王子以上にただならむオーラを放つ彼は、彼がいる図書館という空間を特別な場所に思わせる不思議な魅力を放っている。
リーリエは瞬きを数回繰り返して言葉を絞り出す。
「………………隣、ですか?」
「他の席には座り辛くて」
眉尻を下げて困ったように言う彼はチラッと周囲を見て言った。
彼を真似するようにリーリエも周囲を見ると、ビクッと身体を震わせる。
凄い見られてる……。
図書館にいる全ての人の視線が集中しているんじゃない?
そう思わせる視線の数と飢えた猛獣のようなギラギラと輝く視線に圧倒されたリーリエは、目の前に立つ彼に視線を戻す。
リーリエの反応に申し訳なさそうにする彼が、リーリエの瞳には猛獣の中に解き放たれて震える子兎に見えた。
勉強さえも簡単に出来ないなんて……。
こんなに美しい人なら、誰かに助けを求めることは簡単なことではなかったはず。
勉強をしに図書館に来たら彼を狙う猛獣達。
そして、彼が助けを求めたのは人畜無害そうな私。
困っている人を助けない理由はない。
「どうぞ」
「ありがとう」
リーリエの言葉にフワッと花が咲くように笑った彼はキレイで、リーリエは眩しい物を見るように目を細めた。
彼が隣に座ると時々視線が気になりはしたけれど、図書館には静かな時間が流れていた。
最初こそアイヴァンに会って気分が落ち込んでいたリーリエだが、課題の進み具合に満足そうに頷く。
隣を見るとすでに彼の姿はなく、かわりに一冊の本が取り残されていた。
忘れ物?
本を手に取ってページをめくると、キレイな字で書き込みがされている。
小難しい魔法の話が永遠と書かれている本をパラパラと最後のページをめくると。
「ジェレミー・ベルナルド……」
15
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる