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1:図書館
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リーリエが通う学園ではそれぞれの学部によって専用の建物がある。
学術部なら大きな講堂や専門的な蔵書がある図書館。剣術学部なら鍛錬場など、それぞれの学部の特色にあった施設が備わっている。
リーリエがいるのはすべての学部の生徒が利用する建物にある学術部の図書館より大きな図書館。
いつもなら学術部の図書館を利用しているが気分転換にいつもと違う図書館にやって来た。
空いている席に座り授業で出された課題をしていると。
「どうしてお前がここにいる」
すぐ側で聞こえた声に視線を上げると、眉間にシワを寄せたアイヴァンが男子生徒数人と一緒に立っていた。
油断していた。
図書館なら会わないと思っていたのに。
アイヴァンはリーリエが気に食わないのか、学園で顔を合わすたびになにかとリーリエに突っ掛かってくる。
毎回毎回、反応に困っているリーリエはいつしかアイヴァンを避けるようになっていた。
「学術部の図書館よりここのほうが本が多いから」
「そんなことを聞いているんじゃない。お前は……」
毎度のごとく理由もなく突っ掛かってくるアイヴァンに、リーリエは表情には出さず図書館に来たことを後悔していると。
何かを言いかけたアイヴァンは図書館にいる生徒たちの視線に気が付いて言い淀むと、ハァと深い息を吐いてリーリエに近付く。
アイヴァンは頬を寄せてリーリエだけに聞こえる声で囁いた。
「学園では俺に近付くなと言っただろ」
「言われていないわ」
「なら今言った。分かったか?」
リーリエの返事を聞こうともせず、鋭い視線でリーリエを見るとアイヴァンは図書館を去って行った。
リーリエはその背中を見送ることなく、何ごともなかったように机に視線を戻す。
すると、二人の様子の見ていた生徒たちがヒソヒソと話し出す。
「ねぇ、彼でしょ?精霊に愛されている剣術学部に通う生徒って」
「言うことも聞かない精霊に愛されるなんて災厄なだけよ。精霊の気まぐれで宮殿が焼けたって有名な話よ」
この世界には精霊が存在する。
人の前には姿を現さない彼らは想像もできない力を持っている超自然的な存在。
人間の法律で取り締まれない彼らを人間は畏怖の対象として見ている。
そして、そんな彼らに愛されているのがリーリエの婚約者アイヴァンである。
「彼が話しかけていた相手は誰なの?」
「メガネの子?彼女は……――」
お喋りしていた声が止み、図書館全体が静まり返る。
止んだ話し声に不思議に思いながら、先生が来たのかと思っていると。
リーリエの目の前に影が出来る。
もしかしてアイヴァンか戻って来たのかと重い顔を上げると。
「隣。座ってもいいかな?」
そこにはキラキラと輝く王子様が立っていた。
学術部なら大きな講堂や専門的な蔵書がある図書館。剣術学部なら鍛錬場など、それぞれの学部の特色にあった施設が備わっている。
リーリエがいるのはすべての学部の生徒が利用する建物にある学術部の図書館より大きな図書館。
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空いている席に座り授業で出された課題をしていると。
「どうしてお前がここにいる」
すぐ側で聞こえた声に視線を上げると、眉間にシワを寄せたアイヴァンが男子生徒数人と一緒に立っていた。
油断していた。
図書館なら会わないと思っていたのに。
アイヴァンはリーリエが気に食わないのか、学園で顔を合わすたびになにかとリーリエに突っ掛かってくる。
毎回毎回、反応に困っているリーリエはいつしかアイヴァンを避けるようになっていた。
「学術部の図書館よりここのほうが本が多いから」
「そんなことを聞いているんじゃない。お前は……」
毎度のごとく理由もなく突っ掛かってくるアイヴァンに、リーリエは表情には出さず図書館に来たことを後悔していると。
何かを言いかけたアイヴァンは図書館にいる生徒たちの視線に気が付いて言い淀むと、ハァと深い息を吐いてリーリエに近付く。
アイヴァンは頬を寄せてリーリエだけに聞こえる声で囁いた。
「学園では俺に近付くなと言っただろ」
「言われていないわ」
「なら今言った。分かったか?」
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リーリエはその背中を見送ることなく、何ごともなかったように机に視線を戻す。
すると、二人の様子の見ていた生徒たちがヒソヒソと話し出す。
「ねぇ、彼でしょ?精霊に愛されている剣術学部に通う生徒って」
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この世界には精霊が存在する。
人の前には姿を現さない彼らは想像もできない力を持っている超自然的な存在。
人間の法律で取り締まれない彼らを人間は畏怖の対象として見ている。
そして、そんな彼らに愛されているのがリーリエの婚約者アイヴァンである。
「彼が話しかけていた相手は誰なの?」
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止んだ話し声に不思議に思いながら、先生が来たのかと思っていると。
リーリエの目の前に影が出来る。
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「隣。座ってもいいかな?」
そこにはキラキラと輝く王子様が立っていた。
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