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「私とエミリー様が裁判中なのは知ってるわよね?」

「……もちろん。知っているよ」


 裁判という言葉に、ステファンは思い詰めた顔をした。  

 元婚約者と幼馴染が裁判をしているなんて、複雑な心境だろう。その発端が自分にあるなら尚更だ。

 未来は変えられるなんて言ったけれど、ステファンがエミリー様との裁判で証言をしてくれる確証はない。
 

 ステファンは優しい人だ。言い換えれば、優柔不断な八方美人だがーー。そんな彼は何でもすると言ったけれど、幼馴染を犯罪者にする裁判で、証言をしてくれるだろうか?


 同情を誘うように言ってみる?それとも、ストレートに言ってみる?

 どう言うか悩んだ末、私は後者を選んだ。


「私はその裁判で、私に対するエミリー様の行動を証言してくれる人を探しているの。そこで……、あなたに証言を頼みたいと思っているわーー」

「僕に証言をしてくれと……?」

「そうよ。あなたが一番側で私とエミリー様を見て来たでしょう?」

「そう、だけど……」


 そう小さく呟いてから、ステファンは机をジッと見つめて黙り込んだ。

 ステファンは何を考えているんだろうか?何でもすると言ったのを後悔している?それとも、断る理由を探してる?


 ステファンに約束を破られるのは、はじめてでない。むしろ慣れてさえいるのに、最近は人の優しさに触れることが多かったからか、言い淀むステファンに少し…悲しい気持ちになる。


 エラは言い淀むステファンをイライラしたような目で見ている。


 ストレートに言うのは間違っていたみたいね……。

 悲しい気持ちから目を逸らして、ステファンの気持ちに寄り添うような優しい笑顔で微笑みかける。


「思い悩むのも分かるわ。エミリー様はあなたの大切な幼馴染だものね」

「………」

「だけど、元婚約者である私を助けると思って、私の頼みを聞いてくれないかしら?」


 私は幼馴染より大切なはずの婚約者だったけれど。その言葉は口から出ることはなく、心の中に消えていく。


 ステファンが何も話さず沈黙が続く中、沈黙を破ったのはそれまで静かに聞いていたエラだった。


「あぁ!もうっ!!じれったいわね!!」


 そう言ってエラは立ち上がると、手を机について向かいに座るステファンの方に身を乗り出した。


「要するに、元婚約者と幼馴染、あなたはどちらを取るのかって話よ!!」


 そう言って詰め寄るエラに圧倒されて、ステファンは距離を取るように背中を反らした。


「えぇと……」


 エラの勢いに驚くステファンに、エラは言葉を続ける。


「元とはいえ、婚約者だったマリベルにここまで言われて、恥ずかしくないの?いい加減、白黒はっきりしなさい!!」


 エラの言葉に目を見開くと、先程までの狼狽える姿が嘘かのように、ステファンはぐっと顎を引いて口を開いた。


「僕は……」
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