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2:新入生に絡まれました
しおりを挟む新入生歓迎ムードが落ち着いた校舎の中を一人歩いているカタリナの前に、女子生徒が立ちはだかる。
普段ならただ横を通り過ぎるだけだが、カタリナは足を止めた。
なぜなら、女子生徒が仁王立ちしてカタリナを睨みつけるように立っているから。
誰?
はじめて見る顔ね。新入生かしら。
肩の上でフワフワと揺れる茶色の髪に丸い茶色の目。
カタリナより背が低いせいか睨むというより、上目遣いをしてるようにも見える少女は、どこか小動物的な可愛らしさを感じさせる。
動こうとしないのを見るに、少女がカタリナに用があるのは明らかだった。
ここは貴族の子女が多く通う学園。
そして、カタリナが記憶する国内の貴族リストに載っていない少女に、上級生として自分から声を掛けるべきか悩んでいると。
「あなたがカタリナ・ブラッドリーね」
初対面の人に名前をいきなりフルネームで呼ばれるのがはじめてで、先に話し掛けられたことに驚きつつもカタリナは外向きの笑顔を浮かべる。
「はじめまして。私がカタリナ・ブラッドリーで間違いないわ。あなたははじめて見る顔だけれど……、新入生かしら?」
「あなたに言いたいことがあって来ました」
「私に?」
「聞きましたよ。あなたが学園の人気な男子たちを独り占めしているって。良い結婚相手を探すために、学園に入学する人だっているのに酷いじゃないですか」
少女は自己紹介する気がないのか、カタリナの言葉を無視して話しだす。
私が学園の人気な男子を独り占め?
男子を独り占めどころか、友人と呼べる人でさえ片手で数えられるぐらいしかいないのに、どうやって独り占めしたって言うの?
それに、カタリナは恋愛に興味がない上、貴族の子女には珍しい結婚に興味がない独身主義だ。
カタリナは少女が何を言っているのか分からず、不思議そうな顔をしていると。
「そんな顔をしても私は騙されませんよ!」
「騙すもなにも、独り占めなんてしたことがないもの」
「あくまでもシラを切るんですね。あなたがその気なら分かりました」
理解してくれたのかとホッと息を吐くと、少女はカタリナに右手の人差し指を突き出した。
「解放する気がないなら、覚悟してくださいね」
そう言って少女は走り去っていった。
彼女は結局誰なんだろう?
それに、いたいけな男子生徒を捕える悪い魔女だと勘違いされてる気が……。
「嵐みたいな子ね」
少女の背中が見えなくなるまで見送った後、カタリナは止めていた足を動かした。
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