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35 逃げる者
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私の言葉に立ちすくむエドワードを見て、私は視線を落とす。
何も言わないエドワードに、もうこれ以上話すことはないと踵を返す。
私の事を見ていたらしい副所長と目が合うと、副所長はよくやったと言うかのように優しく微笑んだ。
副所長の下に行こうとすると、
バチッ
と不自然な魔力を感知する。
私と副所長は同時に魔力の源の方に振り向くと、そこには群衆に紛れた帽子を被った男がいた。
怪しい男に眼を細める。
不自然な魔力の流れに、副所長が違法魔法道具の流通が多くて、取り締まりに時間がかかっているという事を思い出す。
隠れる様に私達を見ている男に、「持っている物を出しなさい」と言うと男は「やべっ」と言って走り出した。
目が合ったにも関わらず、人にぶつかりながら逃げようとする男に、「逃がさない」と呟くと私は拘束魔法を発動する。
男の周りに現れた鎖により、男の身体が拘束される。動きを封じられた男は勢いよく、地面に倒れる。
「キャー」と悲鳴が上がる中、男に近づくと男は「クゥッ」と唸る。
「なぜ逃げるのですか」
「何もしていないのに、追いかけられたら逃げたくもなりますよ」
そう言って、笑う男は身を捩らせ尚も逃げようとする。
「カバンの中身を見せろ」
私の隣にやって来た副所長が言うと、男は目を震わせる。拘束されて身動きが出来ない男に代わって、私はカバンを開ける。
カバンから取り出した物を見て、副所長は「……粗悪な物を使っているんだな」と言った。
「これは違法改造された魔法道具ですよね?どうして、貴方がこれを持っているのですか」
「捜査員として見過ごす事は出来ません」と私が言うと、男は笑みを深め笑い出した。
「そういえば、あんたが魔塔に所属しているのを忘れていたよ。エドワード・クラークの婚約者、シャーロット・アマンさん」
男が私の名前を知っている事に驚いていると、後ろから「お前は……」と言うエドワードの声が聞こえてくる。
エドワードを見ると、驚いた顔で男の顔を見ている。
知り合いの様な反応を見せるエドワードに不思議に思う。
「貴方とエドワードの関係は何ですか」
「関係か……」
男はしばらく考えると口を開く。
「こう言った方が早いな。エドワード・クラークに、あんたが男といると教えたのは俺だ」
「どうして、そんな事を」
「どうしてって、記事を書くためだ、ゴシップ誌を騒がした男とその婚約者。そして、その婚約者の隣には美しい男……三人が言い争う姿を撮って、記事を書けば良い話題になるだろ」
吐き捨てるように言う男に、副所長が男にだけ聞こえる様に話すと、男は顔を青ざめさせる。
副所長は何を言っているのかしら。涼しい顔をしている副所長と、顔を青ざめさせる男の姿は対照的で、副所長が脅しているように見える、
口をパクパクさせて何かを言おうとする男に、「命が惜しければ黙っていろ」と言った。
男が身体を震わせる姿に、「何を言ったんですか」と副所長に聞くと、副所長は誤魔化す様に笑った。
副所長は何を言ったのか、教えてくれるつもりはないらしい。
私は副所長にため息をついて、震える男を見下ろす。
「貴方の言い分は分かりました。でも、残念ですね。この魔法道具は没収されて、貴方は治安隊に連れて行かれるんですから」
私の言葉に、男は人形の様に何度も頷いた。
何も言わないエドワードに、もうこれ以上話すことはないと踵を返す。
私の事を見ていたらしい副所長と目が合うと、副所長はよくやったと言うかのように優しく微笑んだ。
副所長の下に行こうとすると、
バチッ
と不自然な魔力を感知する。
私と副所長は同時に魔力の源の方に振り向くと、そこには群衆に紛れた帽子を被った男がいた。
怪しい男に眼を細める。
不自然な魔力の流れに、副所長が違法魔法道具の流通が多くて、取り締まりに時間がかかっているという事を思い出す。
隠れる様に私達を見ている男に、「持っている物を出しなさい」と言うと男は「やべっ」と言って走り出した。
目が合ったにも関わらず、人にぶつかりながら逃げようとする男に、「逃がさない」と呟くと私は拘束魔法を発動する。
男の周りに現れた鎖により、男の身体が拘束される。動きを封じられた男は勢いよく、地面に倒れる。
「キャー」と悲鳴が上がる中、男に近づくと男は「クゥッ」と唸る。
「なぜ逃げるのですか」
「何もしていないのに、追いかけられたら逃げたくもなりますよ」
そう言って、笑う男は身を捩らせ尚も逃げようとする。
「カバンの中身を見せろ」
私の隣にやって来た副所長が言うと、男は目を震わせる。拘束されて身動きが出来ない男に代わって、私はカバンを開ける。
カバンから取り出した物を見て、副所長は「……粗悪な物を使っているんだな」と言った。
「これは違法改造された魔法道具ですよね?どうして、貴方がこれを持っているのですか」
「捜査員として見過ごす事は出来ません」と私が言うと、男は笑みを深め笑い出した。
「そういえば、あんたが魔塔に所属しているのを忘れていたよ。エドワード・クラークの婚約者、シャーロット・アマンさん」
男が私の名前を知っている事に驚いていると、後ろから「お前は……」と言うエドワードの声が聞こえてくる。
エドワードを見ると、驚いた顔で男の顔を見ている。
知り合いの様な反応を見せるエドワードに不思議に思う。
「貴方とエドワードの関係は何ですか」
「関係か……」
男はしばらく考えると口を開く。
「こう言った方が早いな。エドワード・クラークに、あんたが男といると教えたのは俺だ」
「どうして、そんな事を」
「どうしてって、記事を書くためだ、ゴシップ誌を騒がした男とその婚約者。そして、その婚約者の隣には美しい男……三人が言い争う姿を撮って、記事を書けば良い話題になるだろ」
吐き捨てるように言う男に、副所長が男にだけ聞こえる様に話すと、男は顔を青ざめさせる。
副所長は何を言っているのかしら。涼しい顔をしている副所長と、顔を青ざめさせる男の姿は対照的で、副所長が脅しているように見える、
口をパクパクさせて何かを言おうとする男に、「命が惜しければ黙っていろ」と言った。
男が身体を震わせる姿に、「何を言ったんですか」と副所長に聞くと、副所長は誤魔化す様に笑った。
副所長は何を言ったのか、教えてくれるつもりはないらしい。
私は副所長にため息をついて、震える男を見下ろす。
「貴方の言い分は分かりました。でも、残念ですね。この魔法道具は没収されて、貴方は治安隊に連れて行かれるんですから」
私の言葉に、男は人形の様に何度も頷いた。
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