上 下
34 / 47

33 邪魔する者

しおりを挟む
 人が多い通りに、私を呼ぶ声が響き渡る。

 先程までの喧騒が嘘かのように静まり返り、道行く人は足を止め、何事かと周囲を伺う。


 鬼気迫る声で私を呼ぶ声の方向に振り向くと、そこにはここにはいるはずがない人がいた。


 どうして……貴方がここにいるの?


 私が呆然と見つめると、目が合った彼は顔を綻ばせる。


「シャーロット、会いたかった……」


 そう言った彼は、帽子と黒のコートを羽織り、帽子から覗く目は暗く、顔はやつれていた。


「エド、ワード………」


 私が名前を呟くと、笑顔を浮かべたエドワードが一歩踏み出す。


 足を止めていた人達は、知り合いかと私達に興味をなくし、動き出した。


 近づこうとするエドワードに、私がビクッと身体を震わせると、エドワードは動きを止め、悲しそうな顔をした。


 どうして、ここにエドワードがいるの?
 今は謹慎中で家に居るはずじゃ……。


 私が困惑していると、「シャーロットが勘違いをしているみたいだから、誤解を解きたくて会いに来たんだ」そう言って、エドワードは再び近づいてくる。


 私が勘違いをしてる?誤解を解く?エドワードは何を言っているの?


 動揺して状況を飲み込めず、エドワードが近づいてくるのをぼんやりと見る事しか出来ないでいる。
 

 エドワードが近づいてくると、私の前に人影が出来る。


 私の視界からエドワードが消えて、副所長の背中が見える。


 私をエドワードから守るように、副所長が前に出ると、エドワードは「邪魔をするな」と不機嫌さを滲む声色で言った。


「何のようだ」

「シャーロットと話しをしたいだけだ」


 「だから、そこを退け」と言うエドワードに副所長は動こうとしない。


「僕達は話さないといけないんだ。部外者は邪魔をするな」

「話しをする?シャーロットと貴様が?」


 副所長が笑って言うと、「お前……」と言うエドワードの声色を聞いて、不穏な空気を察した私は前に出る。


「二人ともやめて下さい」


 言い争いになりそうなのを止めて、エドワードに向き合うと、エドワードは「シャーロット」と笑顔で私を見た。


「エドワード、私達に話し合う事なんてないわ。だって、私達はもう終わってしまったんだから」


 私がそう告げると、エドワードは絶望の顔をした。
 

 エドワードの顔を見ていられなくなった私は、目を伏せると、エドワードが「………………ない」と小さな声で言った。


 顔を上げると、エドワードは虚な目をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あるべきところに収まっただけです

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくしヘンリエッタは領地から王都に出てきたばかりの伯爵家の娘です。 婚約者のピエール様になかなか会えないと思ったら、別の女と浮気をしていました。 ショックのあまり、前世の記憶を思い出し、ここが乙女ゲームに似た世界でわたくしが攻略対象の妹だとわかりました。 しかも王太子が公爵令嬢に婚約破棄を行ったせいで、罰を兄と伯爵家にかぶせられたのです。 こんな理不尽許せない。 わたくしが父母と伯爵家を守って見せます! カクヨム(以下敬称略)、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多いため、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました

紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。 だがそれは過去の話。 今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。 ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。 タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

【完結】これからはあなたに何も望みません

春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。 でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。 結婚して三年が過ぎ。 このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。 リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。 ※完結まで作成済み。11/22完結。 ※完結後におまけが数話あります。 ※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

処理中です...